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第8話 零属導外界

この街はフェンドやヴァルエイターだけが歩行している。地面は人間とリコルの残骸で埋まっている。

血肉が混ざり原形を留めていない。生き残っているのはもはやフェンドしかいなかった。

 

***

零属導外界れいぞくどうがいかい

ヴァルエイターが集結する導外会だ。色が定義されていない空間。その中心に凛明が在った。

凛明は顔を隠しており長い前髪の白髪が垂れ、目の位置すら分からない。性別は分類する意味がない、胴体は人間より大きく、筋肉というより造形物、構造物のような重さを感じさせる。

 

星牙は、完全に死んだ眼で凛明を見やる。

 

「星牙、原神天格。セレスティアルとヴァルエイターの統合は順調か」

 

「そんな簡単じゃないですよ、凛明様。どうせ俺はここから永久に出られないじゃないですか」

 

「お前の制約は生後から解除できない。ヴァルエイターの肉体にのみ付与される。完全体への到達後、ヴァルエイターとセレスティアルは統合される」

 

俺は呆れるように皮肉に笑った。

 

「原神天格は僕の使命、だからでしょう」

 

原神天格オーバーセルス

セレスティアル覚醒後、ルミナセレスティアルとヴァルエイターとの統合を経て、肉体化させる。その最終到達は原神天格完全体である。

 

オーバーセルスとは神位、天位、国家法則を超越する最高位神格である。

ヴァルエイターとルミナセレスティアルの統合は、神を従属させ世界を上書きする、オーバーセルスである。

 

凛明は冷淡に告げる。

「星牙、お前は神になるのではない。神を従属させ、原神天格オーバーセレスを執行せよ」

 

***

星牙は最近血管を浮かべる程、イライラしていた。表舞台ではさわやかな笑顔で、ぎりぎりの精神でアイドルをこなしていた。

 

リコルの残骸が増えていることは、知っている。最近は肉体ではなく、骨の髄までぼりぼりと貪る音が聞こえてくるのだ。

 

R4はすでに、限界がきていて効き目がない。

星牙に聞くと、フェンドの増加により使用する場面も無くなって来ていた。

 

「乙くん、もうR4は使えなくなったよ」

 

そんな中でも、星牙の食料の為に俺は人間を採取していた。人間の腕にR4を打ち込もうとした瞬間。

 

「待て、その手を離せ」

 

反射的に振り向くより早くと、視界に黒が差し込む。黒瀬斗真、特務課F《フェンドオペレーションコマンド(F.O.C)》異能生物対応、リコル討伐専門の特殊部隊員。

 

AK909の小型銃が俺の腕を突き破り、R4が地面に叩きつける。その隙に黒瀬は俺の腹部を打撃した。

 

「っぐえっ……!」

 

肺の空気が全部抜ける。膝から崩れ、視界が見えない。黒瀬は落ちたR4を拾い上げながら、冷たい目で俺を見下ろす。

 

「フェンドだな。R4は、どこから手に入れた」

 

答える暇なんてなかった。痛みが摩擦する。

黒瀬は俺の顎を掴み、無理やり顔を上げさせる。

 

「さて、どうなるかな」

 

俺の頬に針の激痛が走り、R4が俺の体内へと流し込まれた。

 

「っがああ!?」

 

世界が裏返る。血管が焼けるほど脳内にサイレンの音が鳴り響く。

――危険。侵入。異常。

 

俺はばたりと地面に倒れ、視界の端で黒瀬の影が歪む。ああ、俺は死んだのか

 

――ここは、どこだ。

喉の奥が焼けるみたいに気持ち悪い、反射的にえずくが身体は傷跡一つなく、動く。

 

「……死んでない」

 

警察署の留置所。鉄格子を開ける音がする。

R4の薬を打たれたが異物しない、即死するはずなのに。

 

そこにいたのは、幼女みたいな外見のツインテールがジロリと俺を監視する。

 

「いんいん、簡単に手に入れちゃったみたいだね」

 

声は子どもなのに冷たい。声が出ない、発することができない。

 

「セレスティアルく〜ん、はあここにいたんだいん!ルミナセレスティアルに合わせろいん!」

 

幼女が俺に聖剣で何百回も腹部、肩、頭部、顔面を刺しては俺の身体を快感になるまで容赦なく刻み込んでくる。

腹部に、冷たい感触。口から地にまみれる。

 

「うぐっ……!」

「あはあ!!可愛くないん」

 

視界が暗くなり、意識が沈んでいく。

留置所へ、星牙は全力で駆け込んできた。

 

「乙くん、乙くん!」

「おうおう、ヴァルエイター宮田星牙か、来たんだいん!」

「サラブレッド」

 

星牙がサラブレッドに打撃を加えようとするが、サラブレッドは星牙の顔面に近ずき、にこやかにビンタする。

 

「乙のルミナセレスティアルを解放するいん!凛明さまのためだいん!原神天格しろや」

 

「原神天格は俺の使命だって知ってるよな?サラブレット、乙くんは僕のだって理解してる?勝手にやらないでくれるかな、消えろ」

 

星牙はヒヤリと冷酷の笑みを浮かべ、ここにはいてはいけない様にサラブレットを嘲笑する。

 

星牙の身体からΣが光っている、興奮状態を作ることに集中する。サラブレットはこの事象を完全にごくりと丸呑みして、笑いの制御が止まらなくなっている。星牙の腕と脚に精霊の紋様が浮かび興奮を煽る。

 

精霊憑依拳(ヴァル・グリム)

 

サラブレッドは快楽を機転に拘束縄を振りかざす。星牙は背後の半実体の剣を抜き、Σの精霊を大量に吐き出し背後の剣で、サラブレッドの胴体を的確に斬った。

 

「がああああ」

「サラブレットわかるよな!乙くんを傷つけたってことは快楽をもっと燦々と与えてやるよ」

「あっはああ、跪くがいん!プレジャー・コード」

 

サラブレットは鞭で攻撃するが、Σの精霊に打ちひしがれる。

 

「ありふれているいん!まだ身体がある!君には何一つ必要ないん!!」

 

「お前は一生吐き出してろよ」

 

星牙は背後の半実体の剣を抜き、Σの精霊がサラブレッドを襲うと爆せた。


乙くんは僕のだ、誰にも渡さない。

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