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第2話 リコル

リコル乙くん。早く会いたい、あの子にまた会いたい。

その為に、半額の時間までに必ず仕事を終わらせる。

 

僕は宮田星牙。18歳で身長178センチ。ツイストグループ所属、TWIST、アイドルだ。

 

世間では「希少価値の美男子だけを集めたスーパーアイドル」と持ち上げられている。ライブに撮影、俳優も活動している。

 

16歳からデビューしアイドルも絶頂期だ。8頭身スタイル抜群で美形、三白眼の鋭い目。吸い込まれそうって言われるけど君達を吸い込みたくない。どこに行っても褒められ媚びられ、もう反吐しかでない。

 

帰り道で必ず寄るいつものスーパーに行って、酎ハイと半額になったお惣菜を買いに精肉コーナーにいく。

リコル。その青年は色白で軽薄無種、時に狂気で空虚な眼差しで睨んでくる。毎日売れ残っているリコル。

 

リコルは気に入られるとそのまま家畜にされるが、どうやらこの男の子は一度も買われてないんだろう。他のリコルは買う主人に対して媚びて、主人にとって最愛の人物になるように努力するがこの目つき、人間を殺したくて仕方ない狂気だ。買われないのも仕方がない。

 

僕はその目に吸い込まそうだった。僕だけのリコルにしたい。僕は対抗するようにじっと乙くんの身体を監視する。だんだん乙くんは目をギュッと瞑ってふるふる震えてる。乙くんは怖いのかな。乙くんの匂いを嗅ぐと、抵抗する。乙くんは息をしようと必死に肩が上下している。乙くん可愛いな、この領域癖になる。

 

僕は乙くんに出会ってから、スーパーで乙くんを観察するのが、ストレス発散だった。

 

スーパーを出ると雨が降っていた。この街にめずらしい鱗のような雨。乙くんが毎日誰かに品定めされてると思うときりきりと胸が痛む。野生の猫が雨に当たりながら、僕に近づいてきた。猫を抱きしめる。乙くん、君を必ず手に入れる。何があっても僕のものだよ。


TWIST! ねじれてく運命ごと

壊れたいほど輝いていたい

嘘でもいいから抱きしめて

この世界の好きを独り占めしたい

TWIST!声が擦り切れても

本物なんていらない

君が見てくれるなら


目を開けると美声で透き通る音域。美男子3人が歌って踊っていた。パイプ椅子から転げ落ちた。痛い。

 

「なんだよこれ、眩しい」

 

すぐ隣にいた男は名刺を出し、TWISTマネージャー佐藤と書いてある。

 

「乙くん起きた?ごめんね、星牙の現場まで来てもらって」

「俺の事知ってるのかよ」

「ああ、星牙から聞いてるよ」

「ここは、どこだ」

 

「収録現場。星牙は美男子だけを集めたスーパーアイドル、TWISTというアイドルだよ。宮田星牙はビジュと歌声が透き通る、王子様。相沢健真は、変幻自在のダンサー明るいムードメーカー。神崎律は、天使の美貌女性声域ボーカル、まさに天使だよ」

「だからあんな面か」

「だけど、星牙は君に会うために22時までに終わるように必死になってるよどうしても難しい時もあったけどね」

「あーそうですか」

 

「それで乙くん。君は星牙に買われたリコル。生命を維持するには主人の規約がいるよね。乙くん、宮田星牙のマネージャーになってほしい」

「はあなんで俺が」

「君はもう、星牙専用のリコルだからだよ」

「やりたくねえ、人間につくなんて」

 

時計を見て、佐藤がネクタイを緩める。

 

「乙くんは甘いよね、星牙に買われたリコルだよ?どの分際で言ってんの?」

「……」

 

このマネージャーやたら煽ってくる。

「お前はリコルが嫌いなんだな」

「分かった?僕はリコル嫌いのただのマネージャーだよ。君はリコル、本当に分かってる?」

 

(いずれお前も消してやる)

 

「はいはい、星牙のマネージャーやればいいんだろ」

「ふふ、星牙は喜ぶだろうね」

 

カット、本日撮影終了でーす。

その瞬間に星牙が俺の所に駆けてくる。

 

「乙くん見てた?僕かっこいい?」

「星牙ってスーパーアイドルなんだな。どうりでビジュがいいと思った」

「え、ありがとう、乙くんに言ってもらえると嬉しいよ」

 

相沢 健真が物珍しそうに、俺を下から上まで観察する。

 

「へぇーこれが、星牙が買ったリコルか。佐藤水取って」

 

佐藤マネージャーが、健真に水を渡すと、飲むかと思いきや、乙くんにぶっかけてきた。全身ずぶ濡れ、俺は何が起こったのか理解不能だ。

 

「反応なしかよ、おもんねえ」

星牙が健真の胸ぐらを掴み、殴ろうとする。

 

「健真、俺のリコルだよ」

「星牙ただのリコルだろ?こんなチビ相手にもなんねぇよ」

「健真はわかってくれるよね?」

 

佐藤マネージャーが止めに入り、神崎 律が来た。

「おつ、おつぱーい」

 

神崎律が、星牙の頭をぽんぽんする。

「星牙、乙くんに喧嘩する所見られたら、嫌われるよ」

 

星牙が俺の濡れたシャツを触る。

「あ、そうだ。ごめんね乙くん、濡れたよね。もうこんな喧嘩しないよ」

「いや…別に」

 

星牙の焦点は俺しか映っていない。

こいつ、俺のことになると冷静じゃない、こっちが殺される。

 

「星牙、現場では控えめにね。それと報告です。乙くんは僕と二人で、TWISTのマネージャーを手伝ってもらうことになったよ」

「はあ?こいつが」

「乙くん、よろしくね」

 

舌打ちをして健真と律はスタジオから出ていくと、佐藤マネージャーも追っていく。

星牙の頬が目に見えて赤い。

 

「……え、信じられない。乙くん本当?」

「嘘じゃない。主人の条件は守る、リコル規定だ」

 

星牙は落ち着きなく跳ねた。

 

「嬉しいよ!マネージャーなんだ、僕とずっと一緒にいてくれるんだね」

「おい、俺がお前を使うんだ。人間を消すこと、忘れてないだろうな」

 

星牙はきょとんとして、すぐに楽しそうに、口角を吊り上げた。

 

「そうだったね。乙くんの好きにすればいいよ。その条件で、乙くんを買ったんだから」

「星牙、俺はお前を利用するからな」

 

「うん。僕は乙くんのために利用されるね」

にっこりと、アイドルの笑顔で。

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