第1話 乙、半額セールです
スーパー、精肉コーナー、半額セール。
店員が男女複数のリコルを陳列する。
リコルは人間に売られてる時点で、扱いは下僕だ。買われたリコルは奴隷のように扱われる。
リコル=人間の欲望でできた人種
俺は乙。誰にも買われない残り物のリコルだ。
22時30分を過ぎる頃、店員が無言でシールを貼っていく。
半額。それが、俺たちの値段だ。
俺は、見られるのが嫌いだ。
観察してくるやつは、頭の中で消す——。
顔、身体、形、全部。
綺麗に壊れると、少しだけ落ち着くから。
そのせいか俺はいつも売れ残る。
……でも、あいつは違った。
その男は、綺麗な顔をしていた。
目が合った瞬間、理解する。逃げられない。視線が、呼吸が崩れていく。
体が震えていた。こいつはまずい。
——支配される。
「俺のどこがいいんだよ」
「うわあ、初めて話してくれた。すっごく可愛い」
キャラクターかよっていうぐらい過剰反応。俺はドン引きするが、男はさらに近づいてきてすうっと匂いを嗅いできた。
「ちょっ、嗅ぐなって」
「甘い匂いがするね」
「近づくなっ、おい、聞け」
星牙は俺の左胸にある値札プレート、乙半額という文字を凝視する。
「乙くん…僕買います」
「やめろ!お前相当やばい使い方するだろう。断固拒否する」
「大丈夫、ひどい事はしませんよ。僕は宮田星牙って言います。僕があなたのお世話をしたいんです」
星牙が手を伸ばして、俺の手を取ろうとするが拒絶する。
「やめろ、触るなっ」
「乙くん、僕は乙くんしかいないんだ、僕を乙くんのそばにいさせて」
うるうるしたチワワみたいに星牙が見つめてくる。
「はあ?俺をどうする気だよ!お前にだけは絶対に買われたくない」
——消す。いつも通り、頭の中で。
顔、身体を潰して、壊して、消す。
俺は星牙を脳内で消していく。
「乙くんもしかして人間嫌い?人間を殺したい?」
俺の頭の血管がブチっと音を鳴らした。
「ああ、殺したい、いつか殺してやる」
はっと口を手で塞ぐがもう遅い。俺のやってる行為が。
「そっか、乙くん、僕も協力するから一緒に殺そう」
「っはは、意味わかんねえ、何言ってるんだ」
星牙の青い瞳は本気のようだ。
「乙くんの願い叶えるよ、だから僕の側にいて。僕だけのリコルになって」
「なんで、俺なんだ」
星牙が俺の左手を取り、心臓に重ねる。
「僕は乙くんに救われたんだ、だから僕は、乙くんを守る心臓になるよ」
「星牙、お前を利用してやる。人間のお前の事も信用していない。それでもいいんだな」
「うん、どこまでも使ってよ。僕は乙くんの生を守るよ。乙くんを買います」
リコルで生きてきて、初めて買われた。なんか心臓がドクドクして、不安と興奮で満たされた。




