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第3話 契約

星牙の住むマンションは、都心外れの高層住宅の最上階にあった。厳重なセキュリティと防音性の高い静かな部屋。


内装は白とグレーで統一され生活感はほとんどない。

リビングは広いが家具は最低限で、カーテンは閉め切られている。キッチンは新しいが冷蔵庫がポツンとあり誰かと食事をする気配はなく、ソファも簡素で寝転べるという印象だった。

廊下の奥へ続く部屋に入ると、何か異臭がする。

 

「それとここが乙くんのお部屋だよ」

 

白を基調とした部屋に中央にダブルベッドが一台置かれているだけだ。

 

「まて一緒に寝るのかよ」

「そうだよ、だって僕の部屋だもん」

「だったら俺は床でいい、リコルだから慣れてる」

「ダメだよ、いくらリコルだからって、もうあんな生活しなくていい」

「それに、乙くんはリコル最上級のセレスティアルだから」

「は?セレスティアル」

 

その時ベッドの下からゴロ、と鈍い音がした。

何かが転がった嫌な音で視線が床へいくとベッドの下から、つま先が出ていた。しゃがんで覗いた瞬間に心臓が止まる。足、腕、頭、胴体。大人、子供、解体された大量のリコルが無造作に放置されていた。

 

うそだろ、全身から一気に冷や汗が噴き出し、考えるより先に身体が動いた。逃げないとドアノブに手をかけた瞬間。

 

「乙くん、どうしたの?」

 

背後から星牙の、穏やかな声で止められる。

 

「ああ主食の残骸だよ。乙くんは食べないから大丈夫、逃げないで」

「お前もしかして、リコルを捕食する、フェンドなのか」

「うんそうだよ。だけど、乙くんのことは絶対に食べないから」

 

星牙の青い目がまっすぐこちらを見る。

 

「この生に誓う。乙くんの心臓だからね」

 

俺は深く息を吸って吐いて、冷静になろうとする。

 

「フェンドの存在隠してるのか」

「うん。僕はアイドルでリコルを喰う存在だからね。みんなにバレたら終わりだよ。それと、乙くんに協力してほしいんだ」

「協力ってなんだよ」

「乙くんの希望通り、人間を完全に終わらせてリコルにする、それをフェンドの僕が回収する」

 

危険はこんなに近くにいたんだ。やっぱり、星牙は怖かった。

 

「どう?傑作でしょ」

「…人間がどうやってリコルになるんだよ」

 

「乙くん、R4って知ってる?人間に打つと異生物に変異する。簡単にリコルになる薬だよ。機密扱いだけど手に入れれるんだ。R4を使えば人間は抹消できる。でも代償があって、人間になったリコルは暴走した異生物になる。だから、殺さないといけない」

 

「……俺も喰われるってことか」

「うん、乙くんも死ぬ可能性は高いよ」

 

星牙は俺の目を、じっと見て逸らさない。

 

「それでもやりたい?僕が守るからね、大歓迎だよ」

「……最初から利用するつもりだったのか」

 

「乙くんはどうなの?お互いに利用しようよ!存分に、最大に、壮大に!!」

 

星牙は完全に高揚していた。その笑顔は嬉しさというより解放に近く、まるでこの瞬間をずっと待っていたみたいに。

 

俺は無意識に唇を舐めたが味はしない。なのに星牙の表情を見ているだけで、舌の奥がピリッと錯覚がした。

 

――ああ、そうか。

これが利用されて同時に利用する感覚か、うずうずしてきた。

 

「星牙、お互い様だ、共有しよう」


右手を差し出すと星牙は迷いなく跪き手を重ねる。

 

「乙くん永遠によろしくね」

 

これは祝福じゃない、リコルとフェンドの契約だ。

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