墜落物
前作が少し短い気がしたので
人間、予想外なことが起こると体も心もパニックになるものだと実感した。
久しぶりに聞いたエンジン音に俺の思考が止まる。
『まさか、飛行機?いや、そんなものは・・・』
そして、響く墜落したような音。
地震のように大地が揺れ、空気が揺れ、体が硬直する。
鼓膜はまだ震えている気がする。
そして手が震えている。
今、意識したが、俺は無意識に『この拠点に飛行機が墜落する』と思ったらしい。そのくらい近くに聞こえた轟音だったのだ。
電車に轢かれそうになるあの瞬間と、同じ感覚。
ゆっくり指を屈曲する。まだ、震えている。そして発汗している。
深呼吸をする。
1度、2度、3度。
よし、大丈夫。
握った手を開き、両手を擦る。
震えは止まった。
様子を見に行かなきゃ。
俺は上着を羽織り、自室から外にでた。
「タケル殿!」
外に出ると、すでにレビルさんが立っていた。その右手には巨大な斧を握っていた。
「タケル殿、あの音は飛行機ですぞ!!」
「うん。久しぶりに聞くエンジン音だった。・・・・で!レビルさん、その斧は?」
「この拠点に落ちてくるようなら切り刻もうと思っておりました。」
無理だろー。
「タケル!あの音、飛行機よ!エンジン音がしたわ!」
ハナが土間から出てくる。
「うん、やっぱりハナがそう聞こえたなら間違いない。」
少ししてから、他の皆も自室から出てきた。
「なんだ?あん大きい音。」
不安そうな顔のカムイとキヌコとクジタ。それぞれ、幼児と赤子を抱いている。裸足で出てきているところを見ると、相当慌てて出てきたようだ。無理もない。エンジン音だと知っている俺達ですら、焦りを感じているのだから。
「ちょっと、タケル!風の精霊がご立腹みたいよ?何かした?」
風の精霊がご立腹するとエンジン音がするのか?翻訳だけではなく多彩な技をお持ちのようだ。
そして、ルルの隣にディディが青ざめた顔で佇んでいる。が、その手には紙と筆と墨。書くんだな、この状況を。お前は記者か。
「うーん。何かが墜落したみたいなんだ。おそらく・・・・『飛行機』。」
「『空を飛ぶ金属の塊』どぉ?そんなんあるんが?」
「あるんだよ。俺とレビルさんとハナは実際に知ってる。」
「・・・・山の主じゃない?」
最後に現れたシャイン。行灯に照らされた顔は青白く、体を僅かに震えている。
ハナがシャインを抱き締める。
「シャイン、大丈夫。あれは山の主じゃないわ。安心して。」
あぁ、そうか。シャインは元の国で『山の主』に生け贄にされる予定だったと、ハナから聞いたことがある。
「平気?僕は生け贄に出されない?」
「大丈夫よ。あれは『飛行機』よ。山の主ではないわ。」
「『空飛ぶ巨大な鉱石』?じゃあ、大丈夫なんだね。」
いいなその表現。ラ●ュタみたいで。
「兎に角、落下した場所に行ってみましょうぞ。よいか?タケル殿とハナ殿。」
「うん。」
「えぇ。」
「タケル、おでも行ぐ!」
「僕も行く!」
「シャインねーちゃんが行くなら僕も!」
「私は・・・・待っていたいわ。」
「我は行きたい。」
皆が一斉に俺を見る。ズルくね?そういうときだけ一番スペックヘタレの俺に決定権が回ってくんの。
・・・・・うわぉ。誰も何も言わない。・・・・仕方ない。
「行くメンバーは俺とレビルさんとハナで行く。他はいつも通り、朝の仕事をしていて。」
「え!鉱石見たいよ!」
・・・金属鉱石ヲタクのシャイン、発声内容は強気だけど、手は震えてる。
「シャインは後でな。先に俺達が偵察してからだ。」
「我はついていく。」
「ディディ、見たいだけだろ。」
「それの何が悪い。タケル、そなたの首筋をかんで吸血してでも我はついていく。」
「行きましょうディディ。」
吸血されるのは御免だ。俺は瞬時に意見を変える男だ。我が身は可愛い。
「よし、じゃあ4人で・・・・。」
ナニかが俺のズボンを引っ張る。
『ガウガウッ』
サファイアだった。お前も行きたいのか。
『ガウガウ!』
サファイアも・・・・ルビーもか。
『ガウガウゥッ』
あ、ダイヤはダメだ。ダメ。お父さんだろ。だめ。そんな顔してもダメ。
『ガウガウゥッッ!』
わかった。が、ダメ。1人でお留守番がイヤならサファイアとエメラルドだけつれてく。ダイヤとルビーはお留守番だ。
『グゥゥゥ』
そんな顔しない。ルビーもダイヤに八つ当たりしない。
「はい、俺達4人とサファイアとエメラルドで行くから、あとはよろしく。」
押しきる。
薄明るくなる空。
そして、俺達は墜落したと思われる場所、西の森に向けて出発した。
タケルは狼語を理解し始めたようだ




