平和だわ
ダイヤ兄様の妻、ヨーメ姉様。
雄狼に対してのあの毅然とした態度、真のある物言い、瞬時に翻すあの身のこなし。私はヨーメ姉様を、雌狼として死んだ母上のように尊敬しております。
しかし、ルビー兄様はあまりお好きではないようです。先日もマーキングの場所について熱く言い争いをしておりました。木の根にマークするのも、木にマークするのも、私としては特別変わりはないと思うのですが。
今も、腸は真ん中から食べるか端から食べるかと、言い争ってますけど。
結局はヨーメ姉様とルビー兄様は根本的にはよく似てらっしゃるのです。ダイヤ兄様は生肉が好きですし、私は貝類が好き。サファイア兄様は・・・・何でも好きですわ。あ、何でもではないわ。サファイア兄様は唯一、私の好きな貝類は食べないもの。
以前、毒のある貝を口にして以来、食べなくなりましたわ。そういうところは学習能力がおありなんですよ。
マーキングも、ダイヤ兄様は地面に、サファイア兄様はこだわりなくマークしていきますけど、私は石にするのです。ほら、違いますでしょ? なのに、ルビー兄様とヨーメ姉様は同じものにマークしますし、食の好みも同じなのです。
それに子育て方針もそう。ダイヤ兄様は『素直ないい子に』って言ってますけど、ルビー兄様とヨーメ姉様は『子供のうちから狩りの英才教育を!』と、燃えていらっしゃいます。
もし、ルビー兄様の方が先にヨーメ姉様に出会っていたら、今頃はよい夫婦となっていたかもしれませんね。
私の可愛い甥や姪狼達は、毎日翻弄されていますわ。
でも、なんだかんだダイヤ兄様は間を取り持ちながらもまとめていますけど、ダイヤ兄様にももう少し強さというのかしら、威厳というのがあってもよいのでは?と、つい思ってしまいますわ。
『なにボケッとしてるんだよぅ。』
そう声をかけてきたのはサファイア兄様。
『何でもありませんわ。』
『そっかぁ。なぁ、エメラルド、これみてくれよ!また面白いの拾ったんだけど、どうだ?』
そういって咥えたピカピカの石を私に見せる。
最近のサファイア兄様の趣味というのかしら、『ピカピカするもの』が好きらしく、狩りのついでに持ってきては私に危険がないか確認してくるの。
『大丈夫よ。何も感じないわ。』
『本当?じゃあ埋めてくるね!!』
そういって、サファイア兄様は何処かに走り去っていきました。
いつからだったかしら、サファイア兄様がピカピカに興味を持ったのは・・・・そう、確か1匹で狩りに出掛けたときに『ピカピカするモノ』がなんたらかんたらと、言っていたけど適当に聞いていたので忘れてしまったわ。
それ以外は相変わらず食べ物にしか興味がない兄様、他のモノにも新しく興味が向いただけ良いことなのかもしれませんわ。
『エメラルドねーたん!助けてー!』
甥が私のところに逃げてきたわ。
あー、ルビー兄様とヨーメ姉様が取っ組み合いの喧嘩を始めたのね。ダイヤ兄様がまたオロオロしているわ。どうせそのうち2匹とも本気になったダイヤ兄様にマウントとられて終わるんですけど。
『はいはい、みんな、あちらで遊びましょうか。』
私は甥や姪を連れて、家の近くに移動しました。甥や姪は可愛いわ。出来ることなら、ダイヤ兄様のように優しく強くてて、ヨーメ姉様のように意思のある立派な狼になって欲しいわ。
『ねぇねぇ、エメラルドねーたんは、なんで喧嘩しないのー?』
『そうね、喧嘩をするよりも仲良くした方が、幸せな気持ちになるからかしら。』
私は昔から争い事は好きではないわ。だから、狩りもあまり得意ではないの。それでも今までボスがいたからこうして大人の狼になれたのだと思うわ。
『あと、ボスがいるからかしら。』
『ボスぅ?』
『そうよ。この大きな家をくれたのも、この辺りを木で囲んでマーキングしてくれたのも、ボスなのよ。争わないように場を整えてくれるのよ。』
『そうなんだ!ボスってすごいのね!』
『おかーたまは、ボスの悪口言ってるけど、おとーたまは誉めてるもの。』
キャッキャと笑いながら遊んでいる子狼達。
『ギャヴヴン!!』
『ガヴヴヴヴヴ!!』
あー、ついにダイヤ兄様が本気で2匹を取り押さえにいったわ。
『キャウゥゥン!』
『ヴヴヴヴヴヴ!!』
3匹の争いをみて、甥や姪が怯えてるわ。
大丈夫よ、気にしないで遊びなさいね。あの狼達は体は大きいけど中身は子供ですから。
3匹が見えないところまで、子狼達を連れて移動しましょう。
この木で囲まれた場所には色んな建物が建っている。昔は小さく狭かったのに、段々とデカゴリラが色んなモノを作っていったの。
今もデカゴリラは川の向こうの高台で、何か大きいものを作っているわ。
この辺りでいいかしら。ボスが風車と呼んでいる建物の下に腰を下ろす。子狼達も私の側で走り回り遊びだした。
平和ね。
この平和がずっと続いてくれる事を私は願っているわ。
リアルな仕事が平和でない




