穴堀経過
ハナ暦 7/13
穴堀は難航している。
レビルさんとシャインが目星をつけた土地、そこを地道に掘り進めているのだが、キヌコさんの出産や台風で思うように進んでいない。
俺達は土を堀り、土を別の場所に運んでいく。それを繰り返し、現在は傾斜15度、長さ10m、幅2mくらいの穴が掘れた。洞窟中央部分は、木板を張って階段を作っていく。両端は坂道のままにして木板をはめていく。
Mine●raftで、俺がよくやる方法だ。あのゲームだと、坂道にトロッコを作るのだが、まぁ現実世界ではトロッコは無理。けど、荷物を持って運ぶよりも坂道の方が運びやすいだろうと、いうことで、こうなった。
より深くなるなら、土運びは風車の力を利用してみようとレビルさんは考えてるらしいけど。
とまぁ、言っても穴堀は順調ではない。
まず、出てくる土や石。それを捨てる作業が地味に大変。手押し車を使うけど、それでも量は多い。それに鉱石も混じっているので、仕分けもしているのだ。どうしても時間ロスが多くなる。
次に水。台風や雨で、水がたまってしまう。それに地下水も染み出てくる恐れもある。その水もくみ出しながら掘っていかなくてはいけない。
そして灯り。先に行けば行くほど暗くなるので、灯りが必要になるのだが、今のところは灯籠でなんとかなっている。けど、奥にいくほど、酸素も減っていくから、灯りの確保は難しくなっていくだろう。
そして、まだ問題にはなっていないが、空気と天井の地盤。地下に行くということは、天井になる地盤が崩れる可能性がある。なので、レビルさんが木材で横壁と天井を作りながら進んでいる。これも時間ロスの原因。
空気に関しては、今後、地下に行くにつれて徐々に薄くなっていくだろう。空気穴をどうつけるか、それとも空気を送るための扇風機のようなものを作るか、未だ検討中だ。
「あー、大変だとは思っていたけど、やっぱり大変だな。」
俺とルルとハナはもっぱら土運び。
シャインは運ばれた石や岩の仕分けをしている。
「そうね。でも、あの2人が頑張ってくれるんだから、普通に掘るよりも効率はいいと思うわよ。」
あの2人とは勿論、魔王と鬼だ。
土や岩をプリンかのように掘り出していくあの2人は、本当に化物クラスだ。
クジタはまだ骨癒着が不十分の為、拠点の片手で出来る仕事のみ、お願いしている。
キヌコさんは勿論、双子とホープの世話。
ダイヤ達は交代で拠点の守りと狩りに行っている。
「それにしても、この30日くらいで私も随分と、筋力がついてしまったわ。こんな筋肉のエルフ、嫁の貰い手がなくなるわよ。責任とってくれるのよね?」
無視。貴女は過去に二度ほど嫁にいったことを俺は知ってしまった。だから、責任をとる必要性はみじんもない。何故、一度も結婚していない俺が、結婚経験ありの女性に男を紹介せねばならないのだ。
「私は、筋肉がないのでルルが羨ましい。」
「でも、ハナはあまり無理しないでくれ。破損したら、俺達じゃ、絶対に直せないから。」
「うん、わかってる。」
「ちょっと!私の嫁の話を無視しないでくれる?」
「筋肉はなにもしなけりゃすぐ戻る。心配するな。」
「差別だわ!エルフ差別よ!」
「差別ではない。自然現象を論じたまでだ。」
まだブーブー文句を言ってるルルを無視して、新しい土を入れに穴へ戻る。
さっき、全て運んだのに、もう山のような土と石が木桶にいっぱい詰まっている。
穴堀前線のレビルさんが掘った土石を木桶に入れ、カムイが穴入り口に次々置いていく。それを俺達は手押し車に移し、土を別の置き場に運ぶ。
空になった木桶は坂道に置くと重力で勝手に下に落ちていき、最前線のレビルさんのもとへ行く。
その繰り返し。
ショベルカーや掘削機があれば早いんだろうが、そんな無い物ねだりしても始まらない。ひたすら土を運ぶ。
体力的にきついので、穴堀作業は昼食後3時間程度と決めている。
「タケル、そろそろ時間よ。」
「そうか。おーい、レビルさーん!今日はこのくらいにしときましょー!!」
「・・・・わーかりましたーぞー・・・・」
随分遠くから声が聞こえる。一体、今日はどのくらい奥まで進んだのだろうか。
最後の木桶の中身を移しかえ、今日はおしまい。
「いやぁ、今日もイイ掘りが出来ましたな。」
風呂に入ってスッキリしたレビルさんが今にやってきた。
「レビルさん、お疲れ様。」
「で、シャイン殿は、良い鉱石が見つかりましたかな?」
「うーん、鉄鉱石と銅鉱石・・・くらいって言ってたかなぁ。」
「おぉ、それは良かった。」
俺は夕飯の支度しながら、レビルさんの話を片手間に聞いていた。
「んでも、掘っていぐと、やっぱ地下は冷えるな。」
「そうであるな。まぁ、北への探索ほどではないが、ヒンヤリして動いている体には心地よい寒さであるな。」
「レビルどん、あんの穴さ、横に広げて地下の倉庫なんて作れねえか?」
「作れますぞ。」
「暑くなってくると、食べ物がやわくなる。そう言う場所があるといいなど、おもっでいたんだ。」
「良いですな。早速、作ってみましょうぞ。」
冷やせるのか。そりゃそうだ。じゃあ、あれは?
「なら、『氷室』は?」
「ほう、面白うそうであるな、その『氷置き場』というのは。」
「んだな。それがあると、いつでも冷やせで、食べもんがうんと持ちやすくなるな。」
ガラガラガラガラ、と、勢いよく居間のドアが開く。
「それ、賛成!」
風呂上がりのルルだ。
「お風呂上がったら、冷たい水を飲みたいじゃない。氷があればすぐに飲めるもの!」
「そうだなー、風呂上がりの冷たい『ビール』は最強に旨い。あの冷たい『炭酸』をぐいっと喉に流し込むとさ、こう、至福の時って言うか、今日も頑張ったー!!!ってご褒美だよなぁ。」
つい、思い出してベラベラと喋ってしまった。久々に思い出してしまった。ビールの味を。
「タケル殿、その『麦酒』なるものは美味しそうですな。拙者も飲んでみたい物だ。」
「んだんだ、おでも『麦酒』、飲みてえだ。どんな味なんだ『喉がプチプチする』って、どんな感じなんだべなぁ。」
ビールも炭酸もここでは作ったことないもんな。どうせ冷蔵庫がないしと作る気も無かったけど、氷室が出来るなら話は別だ。麦もある。ここはハナに作り方を聞いて、チャレンジしてみても良いかもしれない。
「ってなわけで、ハナ。ビールって作れそう?」
「・・・絶対、私に話を降ってくると思ってたわ。」
今まで我関せずを通し、囲炉裏の前で蝋燭を作っていたハナが面倒くさそうに言う。
「えーっと・・・・・・。」
少し黙るハナ。今、脳内検索でもかけているのだろう。
「材料は大麦だけど、『ホップ』もいるわよ。手順も面倒だし、濾過も必要。でも『瓶』や『缶』がないわ・・・。あ、えーっと、木樽でも大丈夫ね。でも、『サーバー』がつくれないんじゃないかしら。」
「えーっと、『CO2』が必要になるのか・・・。あと、『ゴムホース』・・・。厳しいかぁ。でも飲みたいなぁ。」
「その、『麦酒を出す箱』と『ガラス瓶』と『金属の箱』が無ければ麦酒は飲めないのでありますか?」
「いえ、サーバーがなくても飲めるんだけど、冷やすのを考えると・・・。木樽ごと冷やしちゃえばいけるかしら。」
「氷室に樽を入れとけば良いんじゃないか?」
「そうすれば、その麦酒を飲めるのであれば、拙者が、明日からすぐにでも作りましょうぞ。」
「んだ!おでもやる!」
「私もやる!」
「俺も・・・ビール飲みたい!!」
ここでダチョウ●楽部のネタを知っている者が混じっていたら、間違いなく『どうぞ』と言われるタイミングだった。危ない危ない。
という事で、地下室作りとビール作りが始まった。
サーバーの仕組み、初めて知る




