惚れた腫れた前編
仕事が急に忙しくなり、遅くなっています。
『なぁ、ルビー。取り逃した獲物にまた会いたいって思ったことあるか?』
『はぁ?兄貴なにかいったか?よく聞こえなかった。』
『いや、いいんだ。』
俺、気がついたらその狼のことを考えてる。
その臭い、その歯、その唾液。なんて魅力的な狼なんだろう。
ボスに頼み込んで連れてってもらった探索中、そんな出会いをするとは思わなかった。
『はぁ。』
もう一度、会いたい。
『ダイヤにーちゃん、ため息なんてどうしたの?お腹空いたの?』
まだサファイアにはわからない感情だな。
勿論、日課の狩りはきちんとしている。海水だって汲みに行く。でも、ふとあの狼の事を考えてしまう。
『・・・ま。・・・・・様。』
どうやったら会えるだろうか。また探索しに行ったら会えるだろうか。
『ダイヤ兄様!!!』
『ウグァゥ!なんだよエメラルド!ビックリするだろ!!』
『何度も呼びましたわよ!呆けてるようですけど、体調が悪いのですか?』
んー。エメラルドなら俺の話を聞いてくれるかもしれない。俺は今の気持ちを伝えた。
『・・・・そうですの。ダイヤ兄様、それは発情期ですわ。』
発情期?俺が?
『今度の探索なんて待たずに、明日の朝、探しにいかれてはいかが?』
『エメラルドは一緒に行ってくれないのか?』
『私は実の兄の行為を見たくない・・・じゃなくて、これは、ダイヤ兄様が一人で行くことに意味があるのよ。』
俺が一人で行くことに?
次の日、まだ夜が明ける前に俺は北の森へ行く。
途中、兎や鹿がいたけど、無視。目指すはあの狼だけ。
でも、見つからなかった。
それでも会いたくて、探しに行ってはマーキングをして帰ってくる毎日。
『兄貴、毎朝どこに行ってるんだ?』
『うん、ちょっとね。』
ルビーやサファイアには何も話してない。エメラルドも内緒にしてくれてる。
俺はめげずに、毎日、毎日、探した。あちらこちらにマーキングをしながら。
でも見つからない。夜も明けそうだ。
今日もマーキングして帰るか。
『ちょっと待ちなさいよ。そこのマーキング荒らし。』
もう、半ば諦めていたその時、あの狼が俺の目の前にあらわれた。
『あ!』
『私の縄張りにマーキングばっかして。なんなの?そういう趣味なの?性癖なの?少し他狼のことを考えたら?』
『あ・・・あの・・・・』
『それともこの間のように戦う?いいわよ、今日は油断しないから、かかってきなさいよ。』
なんでだろ。言葉が出てこない。
『ほら、戦闘体勢とらないならこっちから行くわよ!!』
『ま・・・待って!』
やっと、言葉が出る。
『なによ、言いたいことあるなら、さっさと言いなさい。』
『えっと・・・・あの・・・・・』
『噛み殺すわよ!このマーキング馬鹿。』
俺は生まれて初めて、言葉を絞り出すという作業をする。
『君の・・・臭いに・・・・』
『はぁ?』
『君の臭いに夢中なんだ!俺の子を産んでくれ。』
『は!?』
『やっぱりもう一度会って、思った。君の臭いは素敵だ。その目元の毛並み、尻尾の長さ、その唾液なんて、最高だ!!』
はっ!と、俺は我にかえる。
なんか、俺、すごいこと、言わなかったか?
ゆっくりと、目の前の狼を見る。絶対に、絶対に怒っているはず。
狼は怒ってはいない・・・みたい。
『そうか。』
もしかして、ここはグイグイいくところでは?俺の中の何かが弾ける。
『だから・・・俺の子を!!』
本能っていうのかな?気がついたら俺は狼に向かって走り出していた。そして、大きく飛び上がる。
俺を受け止めてくれ!!!
『・・・・女を口説くときは、もう少し間合いを掴めぇ!!!!!!』
まさかの頭突きをくらい、あの狼はいなくなった。
『で、そのタンコブをもらったのですわね。』
『・・・・そう。』
帰ったあと、エメラルドに狼とのやり取りを説明したら、呆れた顔でそう、言われた。
『ダイヤ兄様は狼心がわかってないわね。』
『そうなの?』
『そうよ!いきなり襲いかかるなんて・・・・信じられないわ。』
妹に駄目出しされまくり、更に落ち込む俺。
『まずは、会話。これが大切。次に贈り物ね。兎なんかいいんじゃないかしら。そうやって、まずは心の距離感を縮めていくのよ。』
ふむふむ。
『そのあとに、近づいていくの。わかります?』
『う、うん。わかった。』
『なら、明日からも会いに行って下さいね。』
『今日、逃げられたのに、すぐに会ってくれるかなぁ。』
『もう!そういうとこが弱気なのよ。まずは関係性を作ること!相手に意識をさせること!わかった?』
『・・・はい。』
それから、毎日会いに行った。
脚を噛みつかれ、腹にキックを喰らったりしたけど、それでもめげずに会いに行った。
「ダイヤ、怪我してるじゃないか。明日は大人しくしてろよ?」
ボスは心配してくれる。でも、俺は決めたんだ。あの狼と子を作るって。
毎日毎朝、会いに行く。
『・・・ってのが、この狼との出会いだよ。』
俺はルビーとサファイア、エメラルドに、この狼を紹介した。色々あったけど、この狼の中には俺の子がいる。
『兄貴、教えてくれれば、俺も協力したのに。』
嫌だ。ルビー、お前は絶対に一番が好きだから、奪っていたはず。させるもんか。
『ほんとだよー。』
サファイア、お前は獲物にしたはずだ。
こうして、俺にほ嫁が出来た。
問題は、ボスにどう説明するかなんだけど・・・・。
『え?ボスに会いに?嫌よ。子供が生まれてからにして。』
と、嫁に拒絶されてしまった。
『でも』なんて、言ったらまた喧嘩になるだろうから、時期をみて、お話します、ボス。
後半に続く




