嵐の予感
ハナ暦7/8
風が少し強い。
もう日の出の時間だというのに空は暗く、湿った空気。
「空母が来ておるな。」
「え?」
「いや、台風!台風が来るやもしれぬぞタケル殿。」
今、絶対に空母って言った。
まぁそこを詰問したところでレビルさんは答えないだろうから、スルーする。
今年に入り初めての台風だ。去年は高台で風避けを作り、壁を補強したが、今年も対策を考えはならない。
とは言うものの、風避けはすでに作られてるし、竹よりも強度のある木材だ。飛ばされないとは思う。
あるとすれば水害か。
「床上浸水とかになるかなぁ。」
「可能性・・・わからぬ。どのくらいの規模になるかも見当が付かぬ。」
「とりあえず、飛んでいきそうな物は中にしまって、薪なんかも土間に入れておこうか。」
ドアや窓もしっかり閉めて閂をしておく必要があるなぁ。
そんな話をしていたのは今朝。
今は昼過ぎ。外は暴風雨。
その名の通り、雨風が暴れまくっている。
今のところ雨量はそれほどではないので、川の氾濫や床上浸水はない。けど風は凄い。遠くの椰子の木が90度にひん曲がっているのを見て、こりゃ凄い風だわと実感した。
幸い、屋根や風よけ柵が飛ぶことはなかったが、いかんせん体が浮きそうになるくらいの風力だ。風車の羽根は高速回転で動いている。大丈夫か?風車。
俺達は昼食後も居間に集まっていた。
外で作業をすることが出来ないから、なんとなく集まってきてしまった。
つまり、暇なのだ。
「こうもやることがないと、暇であるな。」
と、言いつつも木片でホープのおもちゃを作ってるレビルさん。その口調とは裏腹に高速でその手のナイフは動いている。
「ホントよ。外にも出られないし、なんかやることないの?」
と、愚痴を言っているルルも、その手では麻糸を結っている。
「我は書き物が出来る至福の時間だ。」
ディディは何かを書いている。きっと、個人情報の類いだろう。
「自然現象には敵いませんから、今日は皆さん体を休める日と言うことで。」
と言いつつも、唐辛子をすり鉢で粉々にしているハナ。
「んだな。」
カムイも農具の手入れをしている。
え?まさかの俺だけ暇?
「タケルにーちゃん、数字教えてよ。」
よかったー。救世主があらわれた。
クジタは覚えがいい。カムイとキヌコさんも覚えるのに苦労した『ゼロ』の概念をすぐに理解した。今じゃ、かけ算わり算は問題なく解けるようになっていた。
そんな風にほのぼのしていた矢先、外から『ベリベリガンッッッ』という音が聞こえた。
「お、何か飛んだかもしれぬな。拙者が様子を見てこよう。」
そう言ってレビルさんが土間から外に出る。
土間の扉を開けた途端、ものすごい風が土間から居間を走り抜ける。居間の囲炉裏も一瞬大きく炎を揺らす。
「タケル殿!犬小屋が!」
と、外からレビルさんの声。
俺は急いで外に出る。
外は体を持っていかれるような強風。それに雨が入り交じっているので、視界も不十分。
そして、犬小屋近くまで行くと、犬小屋の屋根の一部が剥がれていた。
レビルさんはすでに他の屋根が飛ばないように、固定作業に入っていた。
「タケル殿!!拙者は犬小屋の補強をしておく故、ダイヤ達を避難させてくだされ!!」
「わかったー!!」
大声じゃないと、お互いの声が風の音にかき消されてしまう、そのくらいの風力だった。
ルビー、サファイア、エメラルドはすでに小屋から出ていたので、そのまま土間へつれていく。
問題はダイヤとヨーメと5匹の子犬達だな。
小屋を除くと、屋根のある隅っこで、7匹は固まって座っていた。
「ダイヤ!ここは危ないから避難するぞ。」
ダイヤは尻尾を振り立ち上がる。すると、ヨーメの唸り声。
このヨーメは警戒心が強すぎる。まぁ、野生の狼なんだから仕方ないけどさ。さて、どうするか。噛まれるの覚悟で引きずる?イヤイヤ、無理でしょ。狂犬病にでもなったら、それこそ探索どころか人生終了のお知らせだ。
「タケル殿ー!如何された!?」
「あー、ダイヤと嫁が出てこないんだよ!」
「左様かー!なら、少し強引であるが・・・・」
と言うと、レビルさんは右手に斧を出す。
「てぃぃ!」
「なぁ!!!!!」
魔王が犬小屋の屋根に斧を振り下ろした。
犬小屋、真っ二つ。
「ちょっ!『てぃぃ!』じゃないですよ!!」
「はっはっはっ。これで見通しがよくなったでありますな。」
そしてレビルさんはおもむろにヨーメの首根っこをグワッシっと掴んで持ち上げる。
子犬じゃなくて子狼達がバラバラと床に落ちる。焦る俺とダイヤ。
「ちょっ、レビルさん!」
『ガゥガゥ』
「まま落ち着きなされよ。よいしょっと。」
そういうと、ヨーメを地面に降ろし、レビルさんはマウントをとった。
「野生の獣には、優劣を教え込まねばならないのだ。」
キラッと笑ってますが、前腕、噛みつかれてますけど・・・・。
レビルさんはヨーメの口を掴み、さらにマウントを続ける。
「さ、今のうちに子狼とダイヤを土間に運んでくだされ。」
お、おう。
俺は子狼達を抱える。
『キャンキャンキャンキャン』
うん。可愛い。初めて触れた。
ダイヤは嫁と子を見てどっちに行くべきか悩んでいる。優柔不断なんだな。
俺は、子狼達を濡らしたくなかったので、土間に戻る。
あとは獣達で話し合ってくれ。
30分後、ダイヤとヨーメ、レビルさんが土間に現れた。
ヨーメは狼が見違えたように、従順な狼に成り果てていた。
レビルさんがどんな手を使ったのかはあえて聞かない。聞いたところで、俺には絶対に真似できないであろうから。
俺は子犬を可愛がれるだけで、満足なんだ。
タイムリー過ぎて、投稿に悩むも、仕事が一気に忙しくなり、投稿




