大人の女の階段登る
僕、本当に赤ちゃんが欲しかった。小さくてかわいいし、なんか幸せな気分になるから。
だから赤ちゃんの作り方を聞いたのに、なんだかオッチャンたちがウロウロしだした。ルルやハナもソワソワしだした。何でだろ。
レビルのオッチャンは『愛』で作れるっていったけど、そもそも『愛』ってのもよくわかんない。『好き』と違うの?
次の日、いきなりハナに呼び止められた。そんでディディの縄張りの紙工房に連れていかれた。
紙工房に入ると、ルルとシャインとキヌコがいた。スゲー真面目な顔つきで。
なんだろ、なんか説教でもされるのかな。
「シャインは、その、月に一回、体調が悪くなるとか、異変があるとか・・・その何でもいいから体に変化はないかしら?」
「へ?ないよ。」
「ほら、血っていうの?出たりする?」
「あー!出る出る!ドバドバ!」
「ちょっ、その表現はないわ!下品よ!」
正直に答えたのに怒られた。なんなんだよ。
「ルル、感情的にならないで。」
ハナがルルを怒る。なんで怒ったのかもわかんない。
「シャインどんはなで血ぃさ出るかわかっか?」
「なんで?10歳の時から出てるからみんな出てるもんだと思ってた。みんな出てんでしよ?」
「クククククッ、そうだな。我々は出る。神がそうなるよう我らがメスの体を創生したからな。」
「女しかでないの?」
「そうよ。」
「なんで?」
「そこ!そこの話をこれからしようと思ってシャインを呼んだのよ。」
そっか。そんなにすごいことなんだ。血を流すのは。
「と、いうことで我等がこれを作成した。」
どん、と置かれたそれは・・・なんだろ。
「昔々、一人の赤ちゃんがいました。」
絵がかかれた紙が出てきた。
「この赤ちゃんはお父さんとお母さんの子です。」
そこから20分、絵のかかれた紙が60枚ほど出てきたところでこの話は終わった。
「っというのが、赤ちゃんが生まれるまでよ。」
う、うん。
「どう?少し、わかった?」
「なんとなく。」
「今はなんとなくでいいわ。」
ホントはよくわかんない。
あ、大人の女は大変なんだってことはわかった。
ドワーフの村では誰もそんな事教えてくれなかった。それは僕が山の竜様の『生け贄』になることが決まったからかもしれない。
ルルやハナは『いつかその時が来る』って。『来たら分かる』って言うから、それまでは深く考えなくてもいいのかもしれない。
よし!諦めた!
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「へぇ、紙芝居で伝えたの。すごい良くリアルに描けてる。」
右下に、『作/ルディハコ』『絵/ハナ』
「なんだ、ルディハコってのは。」
「私達のペンネーム。」
さいですか。必要だったか?ペンネーム。
「で、シャインは少しでもいいから理解した?」
俺はペラペラと紙をめくる。
途中、凄いリアルな生殖器の断面図が描かれていた。久々に『海綿体』というワードを思い出してしまったよ。
「本人はわかったとか言ってたけど、あれは理解してないわね。」
だろうね。一体どんな説明をしたのか俺も聞いてみたいくらいだ。交感神経と副交感神経まで描かれた図に、俺は学生時代の解剖生理学の講義を思い出す。
「まぁ、とりあえず女性軍、お疲れ様。」
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キヌコ、もうすぐ赤ちゃんが生まれるって。僕たちは居間に集まった。
なんでかタケルは男なのに、出産を手伝うんだって。
タケルがみんなに色々と指示を出している。僕も毛布を取ってきた。
苦しそうなキヌコ。
頑張れ!僕は心のなかで応援する事しか出来ないけど。
「今だ!いきんで!」
タケルがそう言って、すぐ。タケコの股から何かが出てきた。
「フ・・・フギャァ・・・・フギャァ!!」
赤ちゃんだった。
想像してた赤ちゃんと違う、血まみれでドロドロ。お湯で洗ったら、お湯がすぐに赤く染まった。
赤ちゃんってこんな風に産まれてくるんだ。
こんなに必死に産んで、血だらけのままでてくるんだ。
あ、そうか。
だから女の人の体には血がいっぱいあるんだ。
僕はこの間の話、少しだけわかった。
赤ちゃんを産むための準備をしてるんだね。
「ねぇハナ、女の人って凄いんだね。」
ハナはニッコリ笑って僕の頭に手を置く。
「そうよ。シャインも素敵な大人の女性になってね。」
うん。僕は、頑張る。
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「で、その素敵な女性になる一歩が育児の手伝いだという結論になったんだな?」
「う、うん。」
「そうか。その考えは素晴らしいと、俺は思う。・・・って、コルァ!ディディ!逃げんな!お前もだ!」
俺はそっと後退りしていく吸血鬼の首根っこをガッっと掴む。
「ウヒィ」
なんだその声は。
俺は2人を正座させる。
居間のドアからコッソリと、ルルやハナ、カムイとレビルさんが覗きこんでいる。俺が怒るのが相当珍しいのだろう。それもそのはず。本気で起こったのは、ここに来て初めてではないだろうか。
「2人に聞く。今日は赤ん坊に何をした?」
「ぼ・・・僕は、お風呂に入れてあげた。」
「わ・・・我は乳をあげた。」
「シャインは風呂に入るときは頭から爪先まで一気に湯船に沈むのか?」
「違う。足からそっと入る。」
「ディディは茶を飲むときに口のなかに布突っ込んでから流し込むのかな?」
「込まぬ。ちょっとずつ飲むし、布を口に含まん。」
「なら、なぜ大人の俺達でもしない方法を赤ん坊にやった。俺達のやり方を見ていたし、方法も教えた。何故、その通りにしなかった?」
「我は、その方がいっぱい飲めるだろうと思ったのだ。時短にもなる。」
「一気に洗ったら、汚れも落ちるかなって。早く終わるし。」
「死んでいたかも知れないんだぞ。」
「ご・・・・ごめんなさい。」
「その、すまなかった。」
これだけきつく言えば平気だろうか。
「なら、今度から気を付けてくれ。赤ん坊は繊細なんだ。野生の動物と違って、ちょっとしたことですぐに死んでしまう。だから、母親が何年もかけて育てていくんだ。」
しょぼんとしている2人。
反省しているならよし。
「なら、今後は気をつけてください。」
こんなところにしておこう。危険だという通告が真剣に伝わりさえすればいいのだから。
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タケルが初めて本気で怒ってるのをみた。そのくらい赤ん坊は弱いんだ。
僕は改めて、母親がすごいんだって知る。
僕の母親は、僕を生んだあと死んだ。だから、よくわかんない。おんなじような兄弟達が集められている家で育ったから、覚えているのは殴られ、怒られ、蹴られたこと。ご飯の取り分も必死になって奪い合った。
僕にも覚えてないけど、もしかしたら誰かにお世話されたこんな頃があったのかもしれない。
だから、もう大丈夫。
タケル、心配しないで。今度から優しく、そっと引っ張るから。
「ノォォォォォォウゥゥゥゥゥ!!」
タケルが叫びながらものすごい勢いで走り寄ってくる。
ゆっくり足をつかんで引っ張ったのに、また怒られた。優しいだけじゃダメなのか!?
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「なぁ、女性軍よ。悪いんだけど早急にもう一作、紙芝居を作ってくれないか?」
赤ん坊の足を引っ張って移動したシャインを目撃したあと、俺はお願いした。
「え?どんな内容で?」
無論、『赤ちゃんの育て方』をお願いした。
ディディ、お前も作りながら一緒に勉強してこい。
大人の階段登るシャイン




