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孤島奮起  作者: つふら
子猫達があらわれた
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ダイヤ、お前もか

ハナ暦 7/1


昨日、キヌコさんの妊娠(そして近日中に生まれる)事を知った俺は、キヌコさんの負担を少しでも減らそうと思い、いつもよりも少し早目に起きた。


いや、違うな。罪悪感で目が覚めたといった方がしっくりくる。


外はまだ日の出前。若干空が明るんで来たかな程度。


行灯を持ち、担い桶を肩にかけ川に水汲み。担い桶をもうひとセット作って昨夜のうちに自室に置いておいたのだ。洗濯も一緒に終わらせ、その足で土間に行ったその方が効率がいい。この忙しかった5日間で効率を考えた結果だ。


土間に入ると、『あー、今さら気にして』という表情のハナ。いいじゃないか、気にするさ。


『ニィーニィーニィー』


よしよし、ライト・センター・レフト、おはよう。今日もかわいいよ。猫トイレを掃除し、新しい水を入れる。


窯に火を入れ、朝食準備。


窓の外が少しずつ明るくなってきたところで、キヌコさんが土間に入ってきた。


「ありゃえんらい早起きだな。」


「おはようございます。朝食は俺がやりますんで、休んでて下さいよ。」


「何いってんだ、このくらい動かなくてどーする。さっ、わだしがいつも通り汁物つくっから、タケルどんはオカズと馬達を頼んだ。」



「でも・・・・」


「でもでねぇ!わだしを心配するよりもクジタを見たっておくれ。」


うーん、勝ち目はない。


俺は渋々、動物達の小屋へ行く。


「おぉ、タケル殿、おはよう。お早いお目覚めですな。」


すでにレビルさんが掃除をしていた。


「掃除、ありがとうございます。早起きの苦手なのに。」


「いや、なに、掃除も習慣になると体が慣れるものですな。勝手に体が目覚めてしまうのですよ。」


すでに各小屋は綺麗になっており、水も餌も新しいものが入っていた。ザルには卵が集められ、木桶には山羊の乳が入っていた。


ブラッシングも終わっている。糞も堆肥小屋へ運び終わっていた。


「凄いですね。これだけの量をレビルさんが1人で?いつもは掃除だけだったのに。」


いきなりモジモジしだすレビルさん。


「実は今だからタケル殿に告白するが、拙者もキヌコ殿が妊娠してるのを気がつかなくてな。拙者ももっと作業に協力せねばと思いましてな・・・・」


「ちょっ!ずるい!」


「シィー!タケル殿、声が大きいですぞ。」


「だって、ベビーベッド・・・・」


「そのくらい拙者は5分で作れる。」


「くぅぅぅ、ズルいですよ。」


「頼む!黙っていていただきたい。」


今さら言えないよ。


でも助かることには変わらないから、黙っていよう。


「じゃあ、ここはレビルさんに任せていいですね?」


「お任せあれ。」


なら俺は朝御飯作りに行く。





キヌコさんと朝食作りをしていると、狩りを終えたルルが今朝の獲物を持って来た。今日は鹿と水鳥。解体済かつ竹筒に脳収納済。


「ねぇ、タケル、ダイヤ見てない?」


「見てないよ?エメラルドは犬小屋の裏で寝てたけど。一緒じゃないの?」


「そうなのよ。いつも通り呼んだんだけど、ルビーとサファイアしかついてこなくて。」


「犬小屋みた?」


「まだ。」


「じゃあ、手が空いたら俺が見てくるよ。」


「よろしくね。」


珍しいこともあるもんだ。


俺はある程度、下拵えしたあと、キヌコさんに任せて犬小屋へ行く。具合でも悪いのか。


犬小屋の前。4匹が横たわっても眠れる大きさの小屋だから、それなりに大きい。でも、寝てるとこはあまり見ない。ダイヤ達は日中はあちこちで動き回ってるし、夜は暗くてわからない。


日中はこっちも動き回ってるしな。


エメラルドが寝ている。特段先程までと変わった様子はない。


小屋の入り口に回る。中を覗く。


2匹いる。薄暗いからはっきりとは見えないけどあの毛色はダイヤとサファイア。


なんだ?調子悪いのか?



「ダイヤ、サファイア、どーした?具合でも悪いのか?」



小屋の中に声をかけるが反応なし。


ま、飯の時間になったら出てくるだろ。





朝食の時間。


居間には二足歩行、土間には四足歩行が勢揃いする・・・・が、やはりダイヤはいない。


「サファイア、さっきダイヤといたろ?あいつ調子悪いのか?」


俺の話を無視してホルモンを食しているサファイア。この子は昔から食が優先順位高いもんな。


「どした?」


「ダイヤが来ないので、ちょっともう一回様子見てくる。」


俺は再度、犬小屋へ向かう。


「ダイヤ、ご飯だぞ?」


中を覗く。やっぱりダイヤとサファイアがいる。


サファイアがいる・・・・


サファイア!?


いや、いないだろ!あいつ、土間でホルモン噛みちぎってたろ!


俺は四つん這いになり、入り口から犬小屋に入り込む。


すぐにダイヤは黙視確認できる。問題はその後ろ。サファイアだと俺が思っていた方だ。


『ヴヴヴヴヴヴヴッ』


威嚇する鳴き声。


ダイヤが俺に威嚇するはずない。となるともう一匹もオオカミか。


ダイヤはペロペロともう一匹のオオカミをなめている。


「おい、ダイヤ、どうした?」


もう一匹のオオカミが徐々にクリアに見えてくる。目が馴れてきたのもあるが。


灰色・・・いや銀に近い毛色。


ん?


あ!このオオカミ、襲ってきたオオカミだ!!


何でこんなところに・・・・。


と、目に入る僅かに動く小さい物体。



子犬・・・しかも生まれて間もない血液が付着した子犬・・・が、5匹。この銀毛のオオカミの腹元でウゴウゴしている。


・・と言うことは、この状況から考えると・・・・


「ダイヤ、パパになったのか。」


知らない間に恋仲になってイチャコラしてたのか、は心の声だ。



俺はそっと四つん這いのまま外に出る。


母屋へダッシュ。


そして居間で食事をしている皆に報告。


「ダイヤが嫁さん連れてきてた。んで、子犬が生まれてた。5匹。」


どよめきと驚きと歓喜。


シャインとクジタは見に行こうと駆け出すが、俺が制止。威嚇してくる位だから、気が立ってるに違いない。


それにしてもあの小さかったダイヤがパパか。


最初に大蛇の前でキャンキャン鳴いてたダイヤを思い出す。


初めて取ってきたウサギを誇らしげに見せるダイヤ、青ヤドカリに鼻をつかまれて走り回ってたダイヤ、4匹の中で先頭きって前にたつダイヤ。ホントに大きくなったんだな。


俺は昔を思い出して、少しウルッとなる。


「ねぇねぇ、僕も子供欲しいんだけど、どうやったら作れるの?」


シャインの爆弾投下に『ウルッと』は瞬間で消し飛ぶ。


「キヌコも子供いるんでしょ?どうやって腹の中に子供出来んの?僕も作りたい。」


「あ、僕も作ってみたい!カーチャンはどうやったの?」


固まる大人。


これ、ボキャ●ラ天国を家族で一緒に見てたときの俺の親の反応だ。今なら深く共感出来る。


キヌコさんもカムイもフリーズしてる。


ルル・・・あー、スープ飲んでますね。『ごめん。私、聞いてなかったわ』的なリアクションする気だ。


ハナ・・・・目が虚ろになってる。あれ、今『どうやったら子供にうまく伝えらるか』演算しているやつだ。


「クククククッ、我が教えてしんぜよう。」


予想外の吸血鬼(ディディ)が開口してきた!


固唾を飲む俺達大人。


「手順を説明する。まず男女が裸体に・・・・・」


「愛である!!!!!」


ディディのセリフを遮り叫ぶレビルさん。


グッジョブ!


「何を言うか、愛よりも性欲という生物の・・・・」


「愛である!!!!!!」


本日2度目の『愛である』宣言出ました。


「レビル、そこはちゃんと性教育をせねば避妊・・・・」


「愛である!!!!!!」


はい、3回目いただきました。


あ、ディディは諦めた。



「レビルのオッチャン、『愛』とかでどうにかなんの?」


「なる!!!!」


押しきった!魔王、押しきった!頑張れ魔王!


「へぇ、なら僕も子供出来ちゃうね。」


なっ!


更に固まる大人達。


ハナは若干白目。演算スピードが間に合わないのか。


「えっと、シャインは愛している人がいるの?」


「うん!ハナのこと大好きだ。」


固まったはずのハナがカタカタ振戦し始めた。耳から煙が出てこないことを祈る。


「タケルもルルもレビルのオッチャンも、カムイのオッチャンもキヌコもクジタも好きだ。」


あ、そういう愛ね。ほっと胸を撫で下ろす俺。


「アニーもサニーも。ダイヤ達も大好きだ。ライト達も可愛いし。」


「クククククッ、シャインよ。獣姦は・・・・」


ディディの後頭部にルルの裏拳がクリーンヒットした。


「シャイン殿はみんなを愛してるのだな。それはよいことである。それでいいのだぞ。ほら、その辺りは女同士で話すとよかろう。」


レビルさんがうまくまとめてこの会話を流した。


ほっとする大人達。あ、ハナの目に生気が戻ってきた。


『あとは成人女性達に任せよう』、俺とカムイとレビルさんが目で意思共有できた瞬間でもあった。


そしてそのまま何事もなかったように朝食を済ませ各々の作業へと散って行った。


無邪気と無知は怖い。改めて思い知った朝食タイムだった。

無知と無邪気は最強

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