もっともっと北への探索
4回目の北路探索日だ。
前回は雨で流れてしまったけど、その分、寒さ対策は用意出来たと思う。
俺、ルル、ハナ、シャインのダウンジャケットとズボン、ブーツ&手袋&耳当て&帽子。
鬼と魔王という職業の人にはダウンベストのみ。
アニーとサニーにはダウンの馬着。
犬達にもダウンの犬着が用意されていた。
ルルの中で、犬と馬と鬼と魔王は同列ということがはっきりわかった日でもあった。
俺達は朝食後、馬車に乗り込み、2回目の探索で進んだ場所まで進む。拠点から1時間、約8㎞ほど離れた地点だ。
そこに馬車を止め、サファイアとルビーに馬守を頼み、更に探索を進める。少し急な上り坂があったが、基本は下り坂の多い地域だった。
それにしてもルルの作ってくれた防寒具のお陰で、寒さはかなり和らぐ。帽子も手袋も耳当てもあると全然寒さが違うんだな。
馬車を止めた地点から1時間、およそ2㎞ほど緩やかな下り坂を進むと、一面が氷の場所に出た。
恐らく、海だろう。
海が凍っているのを確かめながら、更に北上する。
ここには木もないので、レビルさんはスケートするようにスイスイと前に進んでいく。
シャイとカムイはツルツルしているところが苦手らしく、陸地で待っている。
薄着で先頭を進むレビルさんに、寒くないのかと聞くが、『暑いくらいである。』って言ってるからほっといてる。
そうやって氷の上を滑り進むこと30分、レビルさんが前進を止める。
「タケル殿、来てくだされ。」
俺だけ呼ばれた。
「どうした?」
俺はレビルさんの元にたどり着く。
「ここから先に進めないのだ。」
レビルさんが空中をノックするように叩く。
すると、『コンコンッ』と、音がする。
やはり、見えない壁。
拠点から約13㎞地点、ここが北の端ってことか。
「タケル殿、拙者が斧で全力で叩いてみますぞ?」
「やめてくれ。足元の氷が崩れたら困る。」
「であれば、タケル殿達は陸地まで避難してくだされ。」
「え?やるの?」
「無論。試さねばハナ殿の考えを確かめようもないですからな。」
ハナの話は少し前にレビルさんには伝えてある。それ以外にはまだ伝えていない。
「わかった。陸地に着いたら笛を吹く。そしたら、やってみてくれ。」
「心得た。」
俺とハナとルルは、陸地へ引き返した。
20分後。
ピィィィィィィィィィ
笛の合図を送る。
何も変わらない。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
遠くから地鳴りのような音、そしてピキッ、パキッと氷が割れる微かな音。
「皆、後ろに下がって・・・・いや、馬車のあるところまで全速力で戻るわよ!!!!!」
ハナが焦りながら叫ぶ。
俺達は走り出した。
「ハナ!なにが見えた!?」
「レビルが攻撃を当てた時、氷がその力に耐えられなくて割れだしたのよ!その氷が沈んだら・・・・なにが起こるかわかるでしょ?確かタケルの時代にも頻発していたはずよ。」
「なんだよそれ!」
走りながらの会話だから、ツイツイ声も大きくなってしまう。
「津波と似たような現象が起こるのよ!池に石を投げたら波がたつでしょ。それと同じよ。」
!!まずい!!
しかも、ここは緩やかな登り坂。かなりキツい。
カムイはシャインを抱え、かなり前の方を走っている。
ルルと俺とハナは全力で坂を駆け上がる。
ザザーーーーン
海の方から大きな波音。
間違いない。波が向かって来ている音だ。
後ろを振り返る余裕もない俺達は必死に走る。
その時、体がふわっと宙に浮く。
「うわぉ!!」
俺の腰にふっとい腕。レビルさんだ。
「いやぁ、遅くなりましたタケル殿。」
ルルとハナもレビルさんに右腕で抱えられている。
この人、3人ぶんの成人体重持ちながら、坂道を電動自転車くらいのスピードで走っているよ。
「よかった、レビルさんが無事で。」
真っ先に俺達は逃げたけど。
「ここまで来れば問題ないであろう。」
緩やかな坂の上まで来ると、レビルさんは俺達を地面に降ろした。
眼下では波が荒れていた・・・正確には次々と割れた氷が海に落ち、お互いが更なる波を引き起こし、更に氷を落とし、更に高波へと変貌していた。
「いやー、自然の力は見事ですなー。」
いやいや、きっかけは人為・・・いや魔為でしたが。
「で、レビル。どうでした?」
「いやはや全く傷一つつけられん。そうであるな、ものすごい硬い金属といった手応えである。」
やはり、ハナの予想通り、横の見えない壁を破ることは現時点でできなそうだ。
「ねぇ、なんの話をしているの?」
ルルが怪訝な顔して、尋ねてくる。
そろそろ、みんなにも話しておいた方が良さそうだ。
とりあえず馬車の場所まで戻り、俺達は帰路についた。
途中、『どうしても寄って欲しい。』というシャインの懇願により沢に行き、銅鉱石を大量に集めた。そのくらいの寄り道は許容範囲だ。
その日の夕食後、ルル、カムイ一家、シャイン、ディディに俺達の考えている仮説の話をする。
最初は『はぁ?なに言ってるのよ。』みたいな顔をしていたルルも、木が木っ端微塵になったことと、今日の氷が割れたことを聞き、真面目な顔になった。
「つまり、四方とも壁があり、閉じ込められているということか。ククククククッ、まるで小説のようだ。」
「じゃあ、僕は親父にもう会えないってこと?ここで死ぬまで生きるってこと?」
『死ぬまで生きる』とはなんとも不思議なセリフだ。
「そうではないわ、今の時点でわかったことは、東西南北に限りがあり、壊せない壁があること。でも、この世は三次元よ。」
「そうか、上と下が残ってる。」
「そう。まだ調べ尽くしてはないわ。」
「んだども、空を調べるって、どうすんだ?鳥さいっぱい捕まえて飛ぶんだが?」
「まずは空よりも下、地下を調べて行くのが現実的じゃない?」
ルルもカムイも、半信半疑ながら考えを出し始めた。
「気球・・・・いや、バベルの塔か?」
「なにブツブツ言っている。我にも聞こえるように、声を張れ。」
「いや、上に行くには『空を飛ぶ』か『空に届くほど高い建物を建てる』か、かなと。」
聖霊に配慮して、余計な単語は使わない。
「重力の計算や火力の計算もしないと。ジェットエンジンとか作れないのかしら。」
ハナは俺の聖霊配慮をすぐ台無しにしてくれた。
「ほぉ、『空を飛ぶだけの力がある機械』とは、あれか。前にハナが聞かせてくれた我の世界にもなかった空飛ぶ馬車か。」
「そうよ。でもここの技術ではどうすることも出来ないわ。」
知らない間にハナとディディが凄い仲良しになってる気がする。
「なら、空に向かう方法は考えるとして、地下に向かう方法を、考えるか。」
「掘る・・・しかなかろう。」
「そうね。」
「んだ。」
みんなの顔を見る。うん。意見は一致したようだ。
「よし、じゃあ掘って地下に向かってみるということで、いいかな。」
みんなが頷く。
「問題は、掘る場所かぁ。」
「それについては拙者とシャイン殿に任せては貰えませぬか?」
「いいよ。いつも二人で鉱石とか土とか探してるもんな。」
「かたじけない。」
「よし!僕も頑張る!」
「なら、今度から探索は中止?」
「いや、食材集めてや資材集めては続けた方がいいと思うんだ。だから、続けようと思う。」
俺はディディの作った紙を一枚拝借し、簡単な地図を描く。
「ここが拠点な。で、西路、北路、南路と。」
みんなが紙を見つめている。
「出来れば大体100mごとに、こう横道を作りたいんだ。」
各路に垂直に線を引いていく。
「そうしたら、何がどこにはえているか、どこに鉱石があるのか検討がつきやすくなるだろ?いつ天候不良で育ててる作物がダメになるかもしれないし、地震なんかの天災が来るかもわからない。」
今日、魔為による津波を見て、あの時の記憶が甦ったんだ。大きな地震に津波、地盤沈下に液状化。
起こらないかもしれないが、準備して置くことに越したことはない。備えることは悪いことではない。
「ただ、地下掘りが始まったら時間配分は考えよう。毎日のスケジュールも見直して、みんなで出来ることを協力していこう。」
こうして俺達の新しい目標が決まった。
ブランチマイニング、とあるゲームで掘りまくります




