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孤島奮起  作者: つふら
鬼があらわれた
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俺の求めたアレ


今日は週に一度の探索日。久しぶりの遠出だ。


朝食後、それぞれ出かける準備。アニーとサニーは荷馬車に繋いである。


ルビー、サファイア、エメラルドも荷車に繋いである。


説明しよう。


荷馬車の試運転をしていた後、ダイヤ達がこっそり荷馬車を動かそうと四人で縄を加えて動かしていたのだ。あまりの可愛さにダイヤ達専用の荷車を作って貰った。とある絵画を見ながら死んでいった少年の相棒、パト●ッシュも荷車を引いていたもんな。


皆で馬車に乗り込む。キヌコとクジタとホープ、ディディとダイヤはお留守番。


ダイヤ、諦めてくれ。そんな目で俺を見つめないでくれ。ア●フルのチワワを思い出してしまう。


今日は最西の海まで出て、そこから南下する予定。徒歩3時間で10㎞なので、馬だと1時間くらいで進める距離だ。


道中、『あそこにオレンジが!』だの、『あと草、初めて見るわ!止めて!』だの、『蜂の巣だ!拙者の蜂の巣だ!』など、聞こえたが、無視。全て帰り道に各自採取するように。



1時間弱で海につくと、次は海岸沿いに南へ向かって進む。砂場なので、アニー達もルビー達も足をとられる。少し、スピードを落として進む。


南の探索では徒歩2時間・・・だから6㎞地点くらいから熱帯気候になっていた。となると、馬車で30分くらいか。


砂浜の上を走り続けること10分ほど過ぎた頃、ハナが俺に小声で呟く。


「ここ。この森の奥、湿原が見えたわ。」


と、ハナが森の中を指差す。


「ストーーープ!!!!」


俺が腹からこんな大きな声を出したのは、レビルさんが崖からダイブした時以来だろう。


「なによ?どうしたの?」


驚くルル。


「皆、ここで降りて探索に行くぞ。」


「随分と突然ですな。タケル殿いかがした?厠か?」


キッっとルルがレビルさんを睨むが今はそれどころではない。


「湿地には俺が探していたものがあると思うんだ。ハナ、確かアレは湿原にある確率が高いんだよな?」


「一応、そういわれてるけど。知識上、とだけ伝えておく。」


「レビルさん、こっち方向に向かって木の伐採初めてくれないか?」


ハナが指差した方向を俺も指し示す。


レビルさんはコクンと頷くと、右手に巨大な斧をだし、木に向かって走り出す。


「カムイはレビルさんが伐採した木が湿地の方に倒れないようにしてくれ。」


「わがっだ。」


レビルさんが一刀した木を、カムイが受け止め積んでいく。


「シャインは馬を繋いで、ルビー達を荷車からはずして。ルルとハナは籠を背負って。あ、籠の中に麻袋入れておいて。」


「わかったわ。」


「ハナ、準備は?」


「ふぅ・・・・、出来てるわ。」


「うん。この作戦はハナに全てがかかってる。決してトラップに引っ掛かるなよ。」


「努力はするわ。」


「努力よりも結果が欲しい。」


「はぁ、もう、わかったわ。」


「レビルさんとカムイの少し後ろから、ハナ、俺、シャイン、ルルのフォーメーションで行く。いいな?」


「『攻撃と防御の形』って・・・ここに敵がいるの!?」


「ルル、いいから並んで進むんだ。」


緊迫感がこの場を包む。


聞こえるのはレビルさんの伐採音だけ。


5分ほど進む。


「タケル殿、湿原にでましたぞ!!」


「ありがとうレビルさん!レビルさんとカムイはシャインの隣へ!」


カサッっと、何かが動く音。


サファイアが、間髪入れず音の主に食らいつく。


ワニだ。


喉元を食いつかれ、直ぐに絶命した。サファイアは俺が前にお願いしたコマンド『確実に仕留めるように』を忠実に守っている。


「ハナ、サファイアとルビーとエメラルドを連れて、アレを探してくれ。他はここで待機だ。」


探索から5分。


「タケルー、あったわよー。」


「ハナ!ホントか!!よし、進むよ。あ、麻袋を1人1つ持ってね。」


ハナのいる方へ向かう。湿地は木がはえていないので、すぐに裸足でを目視確認可能なのだ。けど、湿地なので、足元はぬかるみ、歩行速度は落ちる。


ハナは草が群集している前にいた。


「これ、全部、アレよ。でも、乱暴に触ったらすぐに落ちちゃうから丁寧にね。」


そうか、これが俺が探し求めていたものなのか!!涙が出そうだ。


「ちょっとタケル、なんなのよ。」


ルルが俺のシャツを掴んでぐいっと引っ張る。


「聞いて驚くなよ。ルル。これは野生の稲だ。」


次の瞬間、俺は初めてルルに拳骨を食らった。正確には幼少期に隣のオバァから食らった以来、久しぶりの拳骨だった。違う涙が出そうだった。


「何が『攻撃と防御の形』よ!敵が出るかと思ったじゃないバカ!!」


そんな事言ったっけ?


「タケル殿、フォーメーションですぞ。」


小声で囁くレビルさん。あ、あれかー。ルルの世界にはない概念だったか。


「ごめん。ルル。どうしても米を食べたくて、ハナに前々から相談してたんだよ。それで、湿地の起きやすい緯度とか環境を調べて、北より南って言うことになってさ。」


「なら、なんであんな隊列組まなきゃいけないのよ!」


「野生の稲は、触るとすぐに米が飛び散るんだって。だから『性急』なメンバーは後ろにと思って・・・・」


「私たちが『冷静な判断力が出来ない』って、なんなのよ?」


「あと、米以外にも雑草米っていう偽物(フェイク)がいるから、ここはハナが先に行って判断してもらおうかなーって。」


『あ』の文字に濁点着けてリアルに発声した女子(エルフ)、漫画以外で初めてお目にかかった。


「もうよいではないか、ルル殿。」


そっと、俺達の間にレビルさんが入る。


「タケル殿は説明不足。ルル殿はタケル殿を心配していただけ。違いますかな?」


「説明不足でした。興奮して。」


「私も、つい。」


「なら、謝罪で終わりましょうぞ。」


・・・・流石、魔王(じょうし)。


「ごめん。ルル。」


「いえ、私もカッとなりすぎたわ。」


俺達を見て、ニコーと笑うレビルさん。今日は素直に感謝。


「さて、ハナ殿。この草を刈ればいいのですな?」


「そうよ。穂の方から麻袋を被せて、袋ごと横にして、根本から切っていって。」


「さて、刈っていきますぞ。」


ここは淡水湿地。まぁ、浅い湖みたいなところ。水が綺麗で透き通っているところと、泥まみれのところがあり、それぞれ作られる植物が違うそうだ。さらに低地湿地と高地湿地とがあり、その土地の高さでも違うものが出来る。さらに海と繋がってると塩性湿地というらしい。


まあ、ハナから聞いた話なんだけど。そこで、淡水かつ低地湿地に野生の米があるっぽいことを聞き、今に至る。


皆のおかげで稲を麻袋10個分、手に入れた。


それ以外にも、菖蒲や芹、クワイ、枝豆、ミョウガ、ナスやレンコンみたいなもの、生姜、里芋みたいなものなども見つかった。それ以外にも香草や調味料になる草花などを、ルルとハナは麻袋に詰め込む。


カムイは葦(あし)という草を大量に刈っていた。これは色々な利用価値があるらしい。後で調べてみよう。


あらかた採取出来たので、俺達は馬車に戻り昼食をとることにした。


「本気で探索するんじゃなかったの?」


ルル、まだ根に持ってる。


「探索する気だよ。ただ米は、米は譲れなかった。」


「おでも、米すき。育てていいか?」


「是非とも、お願いいたします。」


カムイに向かい正座し、綺麗な土下座をする。


「と、なると北側の土地を広げないといけないな。明日から拙者が北側の伐採も始めよう。」


「誠に、よろしくお願いいたします。」


レビルさんに向かい正座し直し、鮮やかな土下座を披露する。


「そんなに米ってうまいのか?」


「シャインよ、米はうまい。そして、米が手に入ったことで味噌や醤油や酒が作れるようになる。」


「え!味噌ってあの味噌?醤油も!」


「醤油であるか。これで美味しい生魚を食せるな。」


そう、もう無くなってしまったが、まだ味噌や醤油があった最初の頃、ルルとレビルさんはその味を知っているんだ。


「楽しみぃ!!」


だろ?俺も楽しみなんだ。



昼食を終え、馬車で拠点に戻る。帰りはゆっくり進み、行きに採取出来なかった植物や果物を採取しながら帰路につく。


途中、子牛と山羊と雄鶏が現れたが、サファイアが見事捕獲。タヌキや鹿、猪もいだが、血抜きを考えると時間的に難しく、見逃す。穴熊やウサギもいた。堂々と整地した道を走っていたよ。春なので、いろんな動物が現れるな。


拠点につく頃には俺達は徒歩。馬車と荷車には食材がたんまり積まれていた。


「ただいまー。」


拠点に戻る。


「タケルにいちゃーん!!」


クジタが泣きながら俺のところへ走ってくる。どうした?寂しかったのか?


「大変だぁ!ディディねぇちゃんが、しゃべれなくなっただぁ!」


あぁ、ルルが拠点から離れたから翻訳効果がなくなったんだな。


「どげんしたと、泣ぐなクジタ。泣いてっどわからん。」


「とっちゃん!ディディねぇーちゃんが!」


「我は特に変わってないのだが。」


ヌゥッとディディが現れる。


あー、翻訳聖霊について伝えておこう。あと、ルルに翻訳範囲を広げることが出来る方法ないか、聞いておこう。


食糧保存倉庫に、とってきた食材を整理しながらいれていく。下処理が必要なのは後でやるから別にしておく。捕獲した動物達はそれぞれ小屋に入れておく。仲良くしろよ。


せっかくとってきた稲も脱穀しなければならない。もう日が暮れ始めてるのでそんな時間の余裕はない。


仕方がないので今日の米は諦めて、いつもの材料で夕飯を作ろう。


順番に風呂場で体についた泥と汗を洗い流す。シャワーってほどのものではないが、レビルさんが雨樋(あまどい)から水を貯め、濾過(ろか)した水が風呂に流れるようにしてくれたのだ。まあ、冷たいけど。冬場は湯槽にその水を入れ、熱々の石を入れて熱くした水を使っていた。次の冬までにはどうにかしたいと考えている。


干し肉や干し魚、野菜をいつものように塩でシンプルに味付ける。もちろんキヌコさんも一緒に手伝ってくれる。


匂いにつられて皆が囲炉裏の周りに集まってくる。


「あれ?米はないの?」


うるさい。俺だって食べたいけど、我慢してるんだよ!


明日、脱穀して念願の米、米を食べてやる。


米は必要。パンより米派。

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