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孤島奮起  作者: つふら
鬼があらわれた
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頭に三角錘のある体が赤い人



「ガウガウガウ!」




早朝、俺とレビルさんの寝室を犬がガリガリしながら鳴いている。なんだ、ダイヤか?


俺がドアを開けるとダイヤがいた。『ちょっと来て来て来て来て!』雰囲気。なに、これ。どうした?また熊でも出たのか?


ダイヤがグイグイと俺のズボンを咥えて引っ張る。何かあったか、何か見つけたか、だな。


「レビルさん、朝早くにごめん。起きて。」


「ん?あ?んん・・・。」


お団子詰まらせたサ●エか。


「・・・いかがされた?」


「ダイヤが何か見つけたみたい。一緒に来てくれ。」


「ふぁああああ。承知したぁ。」


大きな欠伸をしながらも、レビルさんは急々モソモソ、ふんどしスタイルから半裸へと着替える。ズボン、履いただけですけど。



一応、竹槍を持つ。『ないより、あった方が~』程度。熊だった場合を想定して。俺の最終兵器は魔王(レビル)だ。


外に出る。まだ日の出直後で、やや明るいといった程度。


「また新しい『死に損ねた仲間』が来たのですかな。」


「そうかもしれない。でもまだ確証ほないから一応用心しておきましょう。」


「そうであるな。・・・・と、タケル殿、あそこだ。」


レビルさんが指差した先には、かなり大柄の・・・・顔・・・いや四肢も体幹も赤色の・・・・鬼?鬼なのか?癖の強そうな髪の毛、額から突き出る円錐形の突起。ボロボロの布の半ズボンに上半身は裸だ。


まだいる。ボロワンピースを纏った赤色の女。遠くで見てもわかるくらいに胸の威力が凄い。


「赤鬼・・・・・。」


ある童話の絵本によく描かれている、赤鬼だ。


「近くまでいってみよう。」


親子のような3人・・・・いや、4人か。赤ちゃんもいる。家族かなぁ。


「タケル殿、やはり『仲間』のようですな。」


「そうですね。ただ・・・子供がいるので警戒していると思います。」


「そうであるな。武器はしまっておくか。」


レビルさんは武器を消し、俺も竹槍を置く。


「よし、行ってみよう。」


俺達が近寄っていくと、赤鬼は凄まじい形相で俺達を睨み付けてくる。


「はじめまして。俺達はここに住んでいるものだ。危害は加えないから安心してほしい。」


俺達は両手をあげ、武器がないことを視覚的に確認してもらう。


「あなた方のことを教えて欲しいんですが。」


「・・・・・・。」


警戒を緩めてすらもらえない。もしくは言葉が通じてないか。いや、レビルさんの言葉がわかるから、風の聖霊翻訳は問題だろう。


「皆様、腹は減っておられぬか。拙者は腹が減っておる。一緒に食べようではないか。」


いきなり何を言い出す魔王よ。


「危害は加えぬ故、拙者らの家に是非とも来られよ。朝食を馳走させてくれまいか。」


「・・・・づいてこいっで、ごとが?」


話した。


「拙者達が道案内する。ここに立ってても何もない。小さなお子もおられる。疲れておろう。拙者達の家で休まれるがよい。」


そうしてレビルさんは家に向かって歩きだした。


俺もそのあとを追う。


「ちょっとレビルさん。」


「アレでよいのだタケル殿。拙者達にあんなに警戒されては、いくら話しても無駄である。あとは彼らの行動に任せられよ。」


「わかった。」


すると、レビルさんの言うとおり、赤鬼一家は俺達の後をついてきた。


「タケル殿、出来るだけ沢山食べさせてやってはくれぬか。拙者、今から漁へ行く。ルル殿も事情を説明して鹿でも狩りに行ってもらおう。」


「わかった。」


まぁ、この時間ならルルは起きてると思うが。


家に着くとまず鬼達には井戸から汲んだ水で足を洗ってもらう。鬼達は皆、裸足。うちの家の中は土足厳禁なのだ。その間に、囲炉裏番のハナに事情を説明して、シャインとディディにも事情を説明してくれと伝える。


足がキレイになった赤鬼達を居間に案内する。


よし、旨いものを作らなければ。


食糧倉庫からいつもの2倍の肉・魚・野菜を持ってきた。保存期間が古いものから沢山使ってしまおう。


大きな土鍋に水と鰹節を削ったもの、干し肉、豆、根野菜を入れて、囲炉裏にかける。


魚の干物は、全部焼いてしまえ。大きな鉄板を置き、魚を並べて香草を上から被せ、そのまま石窯の中へ。


乾燥貝・・・いや、水で戻しているが、まだ時間がかかる。すぐに出来る蒸かし芋にしよう。あと、葉もの野菜を炒めるか。


トントンっと、土間の扉がノックする音。扉の隙間からルルが顔を覗かせる。手が血だらけ。間違いなく赤鬼には見せてはいけない。


「レビルに聞いて、即効で解体したわ。だから血抜きが少し甘くて。ちょっと血だらけなんだけど。はい、急いでたから小さ目の鹿だけど、置いてくわね。」


よし。この肉を竹串刺しで焼こう。あ、竹筒。これがあるってことは・・・・鹿脳か。いいでしょう。後で蒸しましょう。


取り竹皿とスプーンを赤鬼の前に置く。


赤鬼とその子供達がボソボソ話し合ってる。どうせ毒とか警戒してるのかもしれないけど、結局決めるのは彼等だ。俺は余計なコト言わないで、ひたすらご飯を作ろう。


「いただきます。」


お、食べ始めた。すごいいい食いっぷりだ。作り手としてはこんなに食べてくれるのは嬉しいもんだ。


「慌てなくていいですよ。まだまだおかわりはありますから。」


鹿のホルモン焼きに、鹿肝の野菜炒め、干し牡蠣のキノコあんかけ。


「タケル殿、魚を捕って来ましたぞ。肝処理はシャインがやってくれましたぞ。」


ありがたい。


大きい魚は塩をふって石窯へ。小さめの魚は竹串刺して囲炉裏の周りへ。中途半端な魚は、切り身にして軽く炙って出そう。


あー、俺も腹が減ってきたな。俺達の朝飯分もついでに仕込んどくか。


思ってたよりも赤鬼達は大食漢ではなく、常識的な範囲の食事量だった。もしかしたら遠慮しているのかもしれないけど。


赤鬼達が食べ終わった所で、いつもの『一緒に生活しませんか?』勧誘をかける。なんだか悪徳商法みたいだな。


赤鬼達の名前もわかったし、一緒に暮らすってことで了承得たし、俺達も朝御飯を食べる。


いやー、お腹空いてたんだよ。



ご飯を食べながら代わる代わる皆が話をする。カムイ、25歳だってさ。俺とタメなのな。


嫁のキヌコは姉さん女房で30歳。クジタは5歳だそうだ。で、この赤ちゃんはまだ名前がないそうだ。なんでも、鬼の国では生まれて一年たったら名をつけるそうだ。生存率が低いのかも知れないな。


で、田植えの月が誕生日だそうだ。ってことは4月なんだろ。それまでなんて呼べばいいのか。


俺は赤ちゃんの顔をみる。女の子らしい。赤ちゃんは見た目じゃ性別はわからない。しかも、顔がアニーに似ている。『馬に似てますねー』は、絶対に褒め言葉っはないはずだ。黙っていよう。



「タケル、この赤子に名さ、つけでくれねぇか?」


からのこの展開か。


「こん子はまだ名がねぇ。頼む。」


いやー、もう頭には馬のイメージが強すぎますって。


「えー、それはまずいのでは?」


どうにか避けたい。名をつけるのは赤ふんどしだけで十分だ。


「いいではないか。拙者にもつけてくれたように、その子にもよい名前をプレゼントしてやろうぞ。」


おい、ホントは赤ふんどしだったんたぞ?


「クククククッ、なら我がつけようか?我が母の姉の旦那の名を授けるか。」


だめだ、とんでもなく長い名前をつけられそうな予感がする。


「タケルがつけないなら僕がつける!」


シャインをしゃべらせてはまずい。こいつは悪い意味で素直過ぎる。



「私ならすぐつけるわよ?私がつけようか?」



「わかった、わかったから!俺がつけるから、ちょっと君たち静かに!」


馬・・・・馬・・・・ホース・・・・・ホース・・・・・


「えーと、じゃあ・・・・ホープ。ホープってどうだろ。」


「いいですね、ホープ。『希望』って意味よ。」


ハナ!ナイスアシスト!惚れそうだ!


「へぇ、タケルもいい名前を考えるじゃない。」


よっし、俺の株価は急上昇だ。


「タケル、ありがとう。こん子はきっど美人になる。」


なるかなー?


『アニー⇒馬⇒ホース⇒ホープ』の流れから美人要素がないけどなー。


「さて、家は何処に建てようか。」


これまたいいタイミングでレビルさん。今日の俺、持ってますね。


「倉庫の隣は?」


「犬小屋の前辺りか。」


「そうか。なら拙者が午後から作り始めるとしよう。」


「さて、朝御飯食べたし、午前の仕事を各自しますか。」


「おで達は、何をしたら・・・・」


「そうだな。畑仕事をお願いしたい。さっきも言ったけど、俺達皆、素人だけどなんとか畑作ってるって感じなんだ。プロの目からみてダメなところとか、改良点とかどんどん見つけてもっと良いものにしてほしいんだ。」


「そんなすげぇことを、おで達に任してくれんのか?」


「うん。お願いします。」


「わがっだ。せば、みないくでか!」


こうして魔王と人間は海へ魚捕りに。


ドワーフと犬は岩場へ貝取に。


エルフとアンドロイドは森へ採集に。


ヴァンパイヤは川へ木皮剥きに。


鬼は畑のガサ入れに。



うーん。増えたなぁ。


食糧倉庫を増築した方がいいかもしれないな。





各々、仕事を終え、昼食兼ランチミーティングが始まった。


「カムイ、畑はどう?」


俺達が話している間、黙っていたカムイに話題を振る。



「畑のプロさ呼ばれたら、しっかりいわせでもらう。なんねぇ、あの貧相な土は。堆肥がなっでない。まずは上等な堆肥をこさえねばなんね。馬糞も牛糞もあるのに、あれでは糞の意味がなかと。糞に謝れ。ますばそれをイチからづくりなおす。んで、植える間隔もワチャクチャだ。もっど間をな、こう!こう開けて育てねば。それに、あの野菜と香草を隣で育てるとはどういうごった!育つもんも育たね。きちんとアイショをみろ!土がケンカするでねか!あと、ツルさこさえる植物は棒をたてねば。収穫の時もそだが、あれは身もちぃーさくなってまう。イチかろ場所さ考えてうえ直さねばなるめぇ。もっど、もっど、土さ耕して大きな畑でないとだめだ。木も植えてっけど、もう少し整理してだな、種類を考えて植えねばダメだ。成長の方向さ考えねば。耕す道具も貧相だな。牛が仕事さないってなくぞ。」


かなり、ダメ出しされた。そして、かなり畑ラブが強い鬼だった。どこの世界もこだわるモノには饒舌なんですね。



あ・・・・え?皆、俺を見てる。え?俺が何かリアクションしなきゃダメ?あー、そうか。わかったよ。わかりましたよ。


「ありがとうカムイ。全面的に任せる。頼んだぞ!」


「まかせどけ!」


きっと、すごい畑になるだろう。


農業も大変なんですよねぇ。

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