少し遠出
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ここが地球と同じ時間軸なら冬。だけど、そんなに寒くはない。20度前後ってところ。
毎日皆で保存食を作り続けたお陰で、大分ストックは貯まってきた。保存食も永遠保存って訳じゃないので、古い順から消費しつつ、新しく保存食を作っている。
塩の消費もバカにならない。保存食にするには塩分濃度が20%以上(ハナ談)ないとすぐに腐ってしまう。塩分だけでは正直難しい。
保存食を作るには色んな方法がある。まず塩漬け、燻製、乾燥。これは割りと早い段階からしていた。まだうまくいかないのが酢漬け、発酵はまだ探り探り。漬物を作りたくても、糠がない。酢漬けを作りたくても酢がない。酒や味噌や醤油を作りたくても糀がない。糀を作る為の米がない。
ナイナイ尽くしなのだ。塩漬けにしても塩の消費量が半端ないのだ。海塩を作っても作っても、間に合わない。
そこで俺達は新しい食材を皆で探しに行こうってことになったんだ。俺が求めている食材、あるかもしれないし。
いつもはルルとハナに探索は任せてるけど、皆で探せば探せる範囲も広くなって新しい発見があるかもしれない。それに、もしかしたらもっと寒くなって雪とか降ったら探索どころではなくなってしまう。この時期しかない、俺は皆に提案して、行くことになった。
朝食後、俺達は探索の準備をする。俺はリュックを背負って、片手に竹槍。
それ以外の皆は竹籠を背負う。籠以外にルルは弓、ハナとシャインはナイフ、レビルさんは手ぶら。あと各々、猪の胃袋で作った水筒と、保存食を持ち、出発。
ハナが拠点の位置を登録したので、迷うことはない。今回、遠出探索を提案したのもハナのこの機能が・・・いや、能力があったからだ。全員で迷って遭難は避けたいじゃん。
「皆、準備は宜しいか?」
レビルさんが片手に自分で大きな斧を出し、ウキウキしてる。
レビルさんが森の木を一定感覚で切り開いて行きながら進むのだ。道が整備出来れば次は皆で馬車で行けるし、木材も手に入る。誰か1人が道に万が一迷っても、戻ってこれる可能性が高いからな。
「では、始めるぞ。」
レビルさんの一閃。
次々と木が凪ぎ払われていく。森の鳥達ごめんなさい。我先にと飛んでいく。
これ、自然保護団体とかあったらクレームの嵐でサーバーが落ちるだろう。
先頭のレビルさんから離れること500mくらい後ろを俺、ルル、ハナ、シャイン、ルビー、サファイア、エメラルドがついていく。ダイヤは拠点の警護だ。ダイヤは物凄く、物凄く、寂しそうな顔をしていた。
「この辺まではいつものハナと来ているわね。」
「そうね、ここから先は私は進んだことないわ。」
「それにしても、木を切るだけで見晴らしが全然違うな。」
後ろを振り向くと、遠くにポツンと拠点が見える。歩き始めてまだ30分ってとこか。俺は森に入ることがほとんどないから新鮮だ。
「それにしてもおっさん、スゲーな。木が魚みたいに柔らかく見えてくるよ。」
「そうだよな。俺達には絶対に真似出来ないよ。」
前方から『ズズン』『ドーン』『ガサガサ』という音が、ひっきりなしに響く。
ただでさえ森の木をかなりの量を伐採して拠点を作っているのに。もう、自然保護団体にあったら全員縛り首にされるだろう。
「お、ルル、これは初物じゃないか?」
リンゴ。
俺が店で見かけるリンゴとはちょっと違うけど、リンゴっぽい形をしてる果実があった。無惨にもレビルさんにより倒されてはいたが。
「ほんと、これは初めてね。取っていきましょう。」
「ルル姉さん、これは?」
「これも初めてよ。柑橘だわ。これも持てるだけ持っていきましょ。」
「ルル、この草は・・・生姜・・・生姜ね。」
「お手柄よハナ、根ごと持っていきましょ。」
次々と新しい食材が手に入る。
すると、先を歩いていたレビルさんから声がする。
「皆様、来てはならぬ!倒した木に蜂の巣があったのだ!刺される故、近づいてはならぬぅ。」
絶対に行きませんよ。一応ポイズンリムーバーを出しておいた方がいいのか。一度も使ったことないけど、アナフィラキシーショックは確実に避けたい。
レビルさんが遠くでチョコマカ動いているのを見ながら、俺達はそのかなり後ろの森を探索。
ルルとハナはイキイキしながら草を取っている。
「これ、唐辛子じゃないかしら。あら、これ八角かしら?」
「あら、これ丁子?こっちは大蒜?もー、薬草の宝庫じゃない!」
「このグネグネ、食べれる草か?エメラルドが咥えてきたんだ。」
「シャイン、それは薇だな。これは蕨だな。」
「タケル、食べたことあるのか?」
「あるよ、ビビンバっていう料理があってね。」
「食べたい!僕、それ食べたい!」
「なら、少し取っていこうか。全部取るなよ?必ず少しは残せよ。来年も食べれるようにな。」
「ルル、これ、食べれる瓜よ。」
「そうなの?食べたことないわ。」
「あ!ヘチマ!ヘチマじゃないか!!」
俺はヘチマに駆け寄る。大好きなんだよ、ヘチマ。ちっさい頃から大好きだったんだけど、関東で売ってなくてな。実家に帰ったときに食べるのが楽しみなんだよ。
「頼む。ヘチマ、いっぱい取ってくれ。」
「わかったわ。」
拠点を出発して3時間くらいか。各々の籠はパンパンだし、お腹も減ってきた。
「そろそろ、昼飯にしようか。」
俺はレビルさんの伐採した木の根っこに座る。11月といってもこうやって動くと少し汗ばむ。
「そうね。一休みして・・・そろそろ拠点に戻る時間かしら。」
「まぁ、初回だからこんなもんにしておこうか。結構食材も手に入ったしな。お目当てのモノはなかったけど。」
俺の目的、岩塩と梅干しと赤紫蘇。
ハナに絵を書いてもらい、それらの特徴は各々に伝えてはあった。期待はしていなかったけど、やっぱりないか。
俺は長期に保存できる梅干しを作りたかったんだよ。
そもそも気候も違うし自生していたらいいなくらいだったんだけど。
岩塩に関しては、ハナに『地質や気候的に厳しそうだ』と言われていたので、ほとんど諦めてた。
まあ、リンゴやヘチマ、数種の山菜と香辛料を手に入れただけでも十分だ。
昼飯を食べ終わり、拠点へ戻る為に歩き出す。
行きには気がつかなかった胡桃や枇杷なんかも見つけたが、これは後回し。もう、籠に入んないもん。
拠点について皆で仕事を分担。
ハナは新しい植物の確認と種作り。長期保存可能なら加工方法の検索。
ルルは新しい植物の仕込みと、ハナから教わった加工の実践。
シャインはルルの助手。ルルに言われた通りにハイハイ行う。
俺は夕食作り。
ヘチマ炒め、干し魚のジンジャースープ、干し肉と野菜と煮物、蒸しパパイア、焼きリンゴ。
ヘチマとリンゴは初めての食材。皆、ワクワク。
皆揃った?食べようか・・・あれ?1人いない。
レビルさん!そういやあの人何してるの!?
ま、そのうち戻ってくるだろ。
それだけの身体能力と帰省本能が備わっている男だ。問題はあるまい。と、思っていたら、『いただきます』直前にレビルさんは拠点へと戻ってきた。大きな蜂の巣4つと、梅の木を担ぎながら。
「これであろうか、タケル殿が欲していた実は。」
あぁ、レビルさん、愛してるぜ。
梅の木を担いで帰って来たレビルさんに感極まって抱きつく。
レビルさんの安否を誰よりも心配していたシャインも抱きつく。
そんな俺達をルルとハナは半笑い。
今後、こういう探索の日をもうけた方が良いと、今回で立証されたわけだ。また数日後、探索日を設けてみようと、俺は提案した。時間ロスほあるけど、実入りもでかい。
皆、うなずく。
ミーティングの結果、今後7日に一度、探索日を設けるコトになった。それ以外の日は保存食作りや拠点整備にまわし、探索日には皆で探索しようと決定したのだ。
木を伐採して、道を整備して、来年の春には馬車で行けるよう、皆で頑張ろうと話し合いの末、方向計が決まった。
次の日、馬のアニーが妊娠していたことと、雌鶏達が玉子を温め出したことが発覚。
ってか、知ってたのにその事の重大性を知らないシャインの一言から皆がその事態を知った。
どちらにしろ、馬車を使っての探索は春以降になることは決定。
それまでは徒歩で探索出来る範囲を探索し、ひたすら長持ちする保存食の作成に勤しむことに決定したのだ。
夜、こっそり馬小屋に来た。
ごめんよ、サニー。ちょっと、ぼやかせて。
いや、大したことないんだ。
なんとなくつぶやきたくて。しかも、誰にも聞かれたくなくて。
「あー、俺も結婚したいと思える人に会って、結婚したいわ。」
って、ぼやき。
馬に嫉妬しても仕方ないもんな。ごめんよ。
そっと、馬小屋を後にする。
犬達が俺の後をついて来ていたらしく、4匹勢揃い。
ごめんよ、ちょっとサニーに嫉妬しただけなんだ。
部屋に戻り、レビルさんを起こさないようにそっと歩き、自分のベットに体を埋める。
どうやら犬達を心配させてしまった。気を付けよう。
どうしても定期的に悶々とする日があるんだよ、俺。性的な意味ではないよ?気持ちがざわつくんだよ。おそらくホルモンバランスや気圧によるものだとは思うが、なかなかコントロールができないんだよ。
そういう時は、眠れなくなってウロウロしてしまうんだ。
「・・・・タケル殿、大丈夫であるか?」
「ごめん、レビルさん。起こしちゃった?」
「いや、タケル殿が部屋を出るときから拙者は起きていた。悩みでもあるなら拙者が相談にのりますぞ?」
「悩みっていうより不安かな。」
「不安、そうであるな。拙者も毎日が不安である。だからこそ、新しいことに挑戦して、余計な事を考えないようにしているのかもしれん。」
「ごめん。レビルさん。ちょっと弱音を吐きたくなっただけなんだ。」
「よいのだ。弱気にならぬ者などこの世にはいない。悩み、考え、苦しみ、答えをだす。拙者はそう生きてきた『弱気』は『弱さ』ではない。当たり前の感情故、案ずるな。」
「・・・・ありがと。ごめん、聞いてくれて。」
「拙者でよければ。いくらでも聞こう。三日三晩、徹夜オッケーですぞ?」
俺とレビルさんの、男語りは夜遅くまで続いた・・・と、言いたいところだが、お互い睡魔に襲撃され、話しは5分で終わってしまった。
馬に嫉妬する男




