有精卵希望
俺、ニワトリ。キジ科キジ目の鳥類だ。あそこを泳いでいる鴨みたいには飛べないけど、俺にだって羽がある。飛べないけど。
見てくれよ、頭の鶏冠。立派だろ?赤くて黒いだろ?
ここらでは俺の鶏冠が一番でかい。だから女子にはモテる。地面を啄みながら今日も女子に声をかけられるのを待っているのさ。
ガサッ
来たな。俺の獲物が。
俺は嘴に咥えた豆をヒュルっと飲み込む。しかしなかなか、出てこない獲物。よし、俺のターンだ。もう日は昇っているけど、もう一度、俺は鳴こう。とくと美声を聞くがいい!
違った。俺が獲物だった。
鳴こうとした時、茂みからオオカミの大きな口。ご臨終のお知らせ。・・・ではなかった。何故か横向きに咥えられている。
時々、歯が俺の体に刺さるんだ。その度に『コケ!(痛い!)』と訴えるけど、緩むどころか静かにしろといわんばかりにより刺さる。俺が何をしたっていうんだよ!いっそのこと一思いに殺ってくれよ。
ガタブルしていた俺がようやく解放されたのは、どでかい小屋の中だった。
目の前には、オオカミ、ドデカいサル。そうか、俺は貢ぎ物にされたのか。儚かったなぁ、俺の鳥人生。
ドデカいサルに体を掴まれ、移動。くそっ!暴れてやる!バサバサ羽を広げて首を右に左に動かすと、簡単に脱出することができた。舐めるなよ、サルが!
俺は森に向かって一目散に走り出す、すぐオオカミに掴まる。早かったなぁ、5秒かぁ・・・。
また、ドデカいサルに体をホールドされる。さっきよりかなり強めの圧だ。くっ、羽が開かない。
サルは突然俺の体を放り投げた。何すんだコルァ!!危ねーだろ!!放すときはそっと地面に足をつけて放しやがれ!!
ふぅ、ふぅ、と息が荒くなる。俺の鶏冠はビンビンだ。
文句のひとつでも言ってやろうとサルに向かって走り出す。俺の渾身の蹴りをくらいやがれ!
ゴンッ
頭をぶつける。くそ、行き止まりか。こっちも・・・こっちもか。俺は閉じ込められてしまったらしい。なんということだ。俺のハーレム人生が・・・。これから俺は枯れた鳥人生をこのサルに見守られながら鶏肉になっていくんだな。
それでも俺は土を啄む。ニワトリとしての本能はどんな状況下でも安定安定。
およよよよよ、これは・・・女子の香りだ。俺の本能が燃えている。どこだ!?どこだ!?あ、いた!あそこに1・・・2・・・2女子!俺は走り出す、もう周りの景色がスローモーションのように見える。そして地面を蹴り飛び上がると、女子の上へダイブ。
美味しく頂きました。
総排泄口に感謝です。
よし、落ち着いた。次は食欲っと、地面を突く。
その時、目の前にまた女子。え?まさかの2回戦ですか。いいですとも。俺も男だ。求められたら応じよう、それが頭に立派な鶏冠のある男の宿命だ。
僕にはわかったことがあります。いえ、悟りを開いたといってもいいでしょう。
たまに森の中で出会うからこそ、至福の喜びを味わうことが出来たんだと。
こうも毎日毎日、朝昼晩・・・僕はもう、限界なんです。今、僕のコトを煮込んでも、美味しい出汁なんて出ないと思います。僕の肉も骨も全てのエキスが吸い出されて枯れてしまったと思うんです。
森へ帰りたいです。あの自由な森へ帰りたいんです。
僕は小屋の側で、そっと隠れていました。それでも僕は見つけられてしまいます。お願いです神様。受精卵を早くお授け下さい。早く彼女たちを抱卵へと誘って下さい。そしていち早く個体数を増やして下さい。
数日後、彼女達が抱卵を始めました。ある程度玉子が貯まったんですね。よかった、これで少しの間は僕のお役目は免除ですね。その間に体力を回復しなければ。え?食事を持ってこい?あ、はい。もちろんです。20日間は僕がしっかり食事を運ばせていただきます。
神様、願わくば有精卵でありますように。
鶏の繁殖を調べる午後




