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孤島奮起  作者: つふら
鶏と山羊と牛があらわれた
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ルルの腹の内




ここに来て数週間。どうやったら帰れるの?


ルビーっていうオオカミは私の後をついて離れない。このオオカミ、陰所(いんじょ)までついてくるのよ?ホントやめてほしい。こんなとこ、来たくなかったわ。


なんでこんな所に来たのかホントわかんない。タケルはヘラヘラ笑いながら『頑張る~』とか言ってるけど、あの男の脳ミソ、カチ割ってみたいわ。まぁ、タケルの作る料理は美味しいから、いいんだけど。


それよりもあの男。昨日来た風の魔王とか名乗ってる変な男。なんなのあれ。自分のこと『拙者』とか言ってるし。古代人?古代人なの?それをウンウン頷きながら聞いて信じてるタケルにも呆れる。


全く、男ってダメね。まだこのオオカミの方がマシよ。


この国に来て狩りはしやすいわ。まず獲物の絶対数が多いのね。今まで外敵がいなかったせいかしら、よく捕れるの。それにルビーって名前のオオカミがうまく獲物を追い詰めてくれるのもあるわ。時間の短縮になる。


今日も猪を狩れたわ。しかも、2頭も。これで今日の食糧も安泰ね。


川原に戻るとタケルが興奮しているわ。なんなのよ、この人、大丈夫?


私は猪を次々解体する。肉が痛んでしまうから。可能ならば美味しい肉を食べたいもの。エルフの村では新鮮なお肉なんて食べることがなかったから、必死よ。たまに新鮮な脳が来ることもあるけど、それはほとんど長老のところに持っていかれたから、私が食べたのは子供の頃だけ。あの時のフワフワでトロトロの味、忘れられないわ。



取れたて肉の味を知ったら、もう後戻りは出来ません。心臓も肝臓も生臭くなく美味しいのは経験済み。ほらタケル、美味しそうな心臓でしょ?今日は2匹もあるから新鮮なまま食べたいわ。


「いいね、そうしよう!」


よし、タケルが私の提案に乗ってきた。すぐにもっと捌くわ。あ、味付けは塩と香草ね!あの茶色いのとかやめて。シンプルに味わいたいの。


オオカミ達が『俺達も食べたい』目線を送ってくる。良いわよ、腸をあげるわ。ここ、臭いのよ。


バナナの葉の上に腸をのせる。よし、他の部位は私のものね。


タケルが肝臓もオオカミに渡そうとしている。ちょっと!そこは私が食べるの。スッゴい『えー?食べるの?』って顔しないで。美味しいのよ?渋々、タケルは諦めてくれたわ。


いーのよ、タケルが苦手でも私は好きだから。腐りやすいからいつもは手を出さないけど、新鮮なものは食べたいじゃない。



魔王も一緒に食べ始める。魔王は私の肝臓を頬張る。初回で新鮮な肝臓いくとか、なんなのよ、コイツ。もしや肉通ね。


私も負けずに食べるわよ。自分のコト、魔王とか言ってる頭の弱い残念な人に、食べられてたまるもんですか!



あ、自称魔王が取ってきた魚達、少しだけ見直したわ、魔王。あんた、こういう才能はあるのね。




夜になり、タケルに煽られた魔王が武器を出す。ホントに魔王だったの。ちょっと筋肉ダルマの頭の弱い中年男性じゃなかったのね。武器を自在に取り出す魔王を見て、心の中で謝ったわ。


そんな魔王が『名をつけろ』と、言い出したわ。名前ねぇ。タケルと決めることになったけど、名前ねぇ・・・。


魔王だから悪魔、デビルでいいんじゃない?覚えやすいし。


そんな軽いノリだったのに、魔王は本気で考えて、2人で付けた『レビル』って名前をすごい気に入ったみたい。少し涙目で、嬉しそうに笑うの。


なんか、私の心の方が悪魔(デビル)だわ。






一緒に生活していて、タケルもレビルもホントにイイ人ってわかる。村にいたボンクラ口だけ男(エルフ)の数万倍もイイ人達。よく働くし、私の話しも聞いてくれる。女だからってバカにしないでちゃんと考えてくれる。なのに、女だからとすごく心配もしてくれる。


私は今まで生きてきた中で、一番すごく素直に話せている気がするわ。


彼らの笑顔がみたい、喜んでほしいし、楽しんで欲しい。助けになりたいわ、彼ら・・・いえ、タケルの助けになりたいわ。タケルの喜ぶ顔が見たいわ、笑顔がみたいわ、頼って欲しいわ。


そう自覚してしまうと、少し胸がドキドキする。


んー、照れ臭い。話しかけられても無駄に冷たくしてしまうわ。この気持ちがばれないように、気付かれないようにって。



特にシャインとハナが来てからその思いは強くなる一方。だからより冷たい態度をとってしまう。


夜、眠るときに、心の中で反省会。


何であんな態度しちゃったの?あんな言い方しか出来なかったの?聖霊はどんな風に私の言葉を伝えたのかしら。


今日の私の言動を振り返っては悶える、そんな毎日。それでも話したいし笑顔をみたい。相反する想いが心で暴れているのよ。でも、態度には出したくないし、知られたくもない。でも、知って欲しいし、側にいたい。なんなのよ、この気持ち。すごく嫌になるし、イライラするわ。でも、また心がざわつく。嬉しくなる。不安になる。その繰り返し。



毎日、寝不足だわ。でも、早く会いたいから目は覚めてしまうのよね。






レビルの拠点に引っ越す日、私はここで過ごしたタケルとの2人の生活を思い出しながら片付けをしていた。


「タケル、これ、どうする?あとこれも。」


「あー、どっちももういらないか、捨てよう。」



この竹筒は初めてタケルと出会ったとき、竹茶を出してくれたときのコップ。これはタケルが初めての私の為に作ってくれた竹筒しの皿。


「まだ使えるから、私の持ち物ってことで持っていくわよ。」


「あー、ルルがいいならいいぞ。」


よかった。持っていける。私の大切な思い出。気持ちがバレないように、粗雑に自分の籠に放り投げ入れる。


「おい、ルル。そんな入れ方すんなよ、それ、俺がルルに作った初めての皿だぞ?」


覚えててくれていたんだ。それだけで心がぎゅっと締め付けられる感覚になる。


気持ちがいっぱいで私は何も言えなくなり、無言で片付けの続きをする。ハナやシャインと話しながら、テキパキとタケルが指示を出していく。



シャインは論外として、ハナとタケルが話しているのは、なんだか心がモヤモヤする。『これは皆で協力しなきゃ』って自分と『私がタケルと話したい』って自分とが交互に襲ってくる。なんなのこれ。


「ハナ、これ一緒に運んでくれる?」


そう言ってタケルからハナを奪い取る。すると、心は落ち着くけど、変な罪悪感。


なに考えてるの、引っ越し作業中なのに。





モヤモヤしながら、引っ越しはほとんど終わった。新居でシャインとレビルははしゃぎ、ハナはそんなシャインをみて嬉しそうに微笑んでる。


タケルは?タケルはどこ?


部屋にも土間にも陰所(いんじよ)にもいない。もしかしたら・・・・、私は高台へと急ぐ。タケルが作った最初の拠点だ。



タケルは高台から、海の方を見ていた。


私はあがった。息を整えて、タケルに声をかける。


「どうしたの?」


声をかけてもタケルは振り向かない。私はタケルの側に向かい、横に立つ。


すると、ボソッと話し始めた。


「あーいや、なんかあっという間の4ヶ月間だったなって。」


タケルの目は海の方を見ている。その横顔につい言葉がでなくなる。でも、何か話さなきゃ。


「そうね。辛かった?」


海から目をそらさず、独り言のようにタケルは話し始めた。


「そりゃもう。でも、今思うと、夢中だったな。生きることに。」


そうね。それを私は側で見てきた。悩む貴方を。笑う貴方を。優しくて、真面目で、優柔不断だけど決断力はあって。そんなタケルの側に私は今まで一緒にずっといたんだ。


「それは今もでしょ?これからもっと探しに行くんでしょ、この場所のことを。」


そして、この顔や声をずっと側にいて見ていたい、聞いていたいと思ってしまった。


「そうだね。そうだったね。」


まだ、海から目線をそらさない。私を見て。私はここにいるわ。


「ほら、竹柵も片付いたし、拠点もなくなったわ。」


そういうと、タケルは後ろを振り向き、また黙り混む。その目には涙が溢れていて、そして、今、頬を伝って口元まで滴が流れていった。


その時、『あぁ、この人に惚れている』と、自覚した。



「行きましょ。」


タケルに触れたくて、我慢出来なくて、その髪をそっと触れ撫でる。感情が抑制できなくて無意識に動いてしまったわ。


タケルの涙は止まらない。むしろどんどん溢れてくる。


『抱き締めたい、もっと触れたい』


こんなときでも欲情するのね。私の中の感情に自分で驚いたわ。


『タケルを好き』


初めて他人の側にいたいと思った。初めて人に触れたいと思った。


タケルと会えてよかった。



そんなルル、あると思います。

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