同じ境遇?
崖から荷馬車ごと落ちたと思ったら、うまく着地出来たみたい。2頭の馬も荷台も無事。雨もやんでる。なんて幸運。
目の前には大きな池、地面柔らかそうな土。よかった。
でも、また山賊が追って来るかも知れないから急いで逃げなきゃ。池沿いに行けば知ってる街道に出るかも。
辺りは真っ暗。灯りは荷馬車についてるランプだけ。
池に落ちないよう、慎重に進まなきゃ。手綱を握り、少しだけ上下に揺らす。『ゆっくり進め』の合図。けど前に進もうとしない。なんでだろ。ランプの光を前方に当てる。
「うわぁ!!」
馬の前方に人が立っていた。
何故か馬の顔と、その人の顔が接触している。
「ご、ごめん!気が付かなくてぶつかっちゃったよ!怪我はないか?」
その人は一歩下がる。馬の唾液でまみれた顔を拭いながら何か話してる。
言葉がわかんない。けど、綺麗なお姉さんだ。銀色の髪に、整った顔立ち・・・細身だけど出るとこはちゃんと主張している。こんな美人のお姉さんがこんなところにいたら山賊に何をされるかわからない。
「お姉さん、ここは山賊が彷徨いてて危険だから逃げよう。乗って!」
御者台に乗るよう、身振り手振りで伝える。お姉さんは、わかったのか、御者台に乗り込み、ゆっくりと僕の隣に腰かけた。優雅な動き、ドキドキする。
お姉さんが何かを話しているけど、やっぱりわからない。
とりあえずこの場を少しでも離れなきゃと、僕は手綱を動かした。
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現れたのは馬だけではなく、馬車だった。
荷馬車・・・そしてその説明が頭に浮かぶ。
顔に付着した馬の体液を拭き取る。常に清潔な身なりでなければならないと、プログラムされているから。
その運転席と思われる場所に座っていた何者かが、声をかけてきた。
しかし、わからない言語形態。私の中には使用人口の多い順から320言語プログラムがインストールされているのに、そのどれにも当てはまらない。
「すみません。貴方の言葉がわかりません。」
表情が困惑している。私の言葉が通じていない。
体つき顔つきから見て15歳くらいの少女。赤髪に浅黒い皮膚、健康状態は良好のように見える。危険物の所持は現時点で確認されず、友好的な態度。
少女は私を横に座るようジェスチャーする。
この状況は理解不能だが、私は少女に従うことにした。今の私には御主人様がいない。全ては自己判断に委ねられたプログラムに移行している。
少女の隣に座る。少女の体は濡れていた。
「体が濡れています。風邪をひいてしまいますよ。」
少女は少し微笑むが何も言わず、馬車の運転を始めた。
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馬車を少し走らせる。
山賊の追手は来なそうだ。よかった。
安心したからかな、少し眠くなってくる。
「お姉さん、少し休んでもいいかな?ずっと走りっぱなしで、僕もこいつ達も疲れてるんだ。」
やはりお姉さんは反応しない。けど、僕の顔をじっとみている。キレイなお姉さんにじっと顔を見つめられるとドキドキするよぉ。
木の近くで荷馬車を止め、御者台から降りる。木と馬をロープっ結び、木のバケツを持って池の水を汲みに行く。
「ペッ、なんだこの水!塩っ辛くて飲めたもんじゃない!」
荷馬車に戻り、予備の水分を出す。馬達と僕、そしてお姉さんの分。
喉、そりゃ渇いてたよな。馬達は凄い勢いで水を飲んでいる。
「お姉さんの分。はい、飲んで。」
木のコップに水を入れて渡したけど、お姉さんは手をつけない。毒とか入ってるのかもと警戒しているのかも知れないな。安心して飲んでもらえるように僕が先に水を飲む。う~ん、喉と体が潤う。
それでもお姉さんは、コップに手を出さない。僕に警戒してるのかも。もしかしたら山賊から逃げ出してきたのかもしれない。いっぱい酷いことされて人間不信になってるのかも知れない。
濡れた服も靴を脱ぎ、乾かす。僕は下着姿。でも女同士だから問題ないよね。
「ふぁ~。」
大きなあくび。水飲んだら眠くなってきた。
僕のあくびを見て、お姉さんはクスッと笑う。笑うともっとキレイだ。
お姉さんが『寝ていいよ』って言ってる。喋ってないよ?眠る仕草をしてくれてるんだ。
お姉さんに甘えて、少し寝ちゃおう。その方がお姉さんも安心して水を飲んでくれるかも。
そう決めたらスッゴク眠くなった。眠く・・・・・。
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少女は下着姿になったと思ったら、あっという間に寝てしまった。よほど疲れていたのだろう。
額に手を当て、体温をスキャンする。発熱はない。
風邪を引かないよう私はジャケットを脱ぎ、少女の体にかける。
内部充電残量は32%
シャットダウンやメンテナンスに思った以上の電力を消費してしまった。GPSが作動しないため、緯度経度がわからず太陽光が出現する時間がわからない。電力温存の為、省エネモードに切り替える。
辺りの景色はモノクロになり、音のクオリティは最低限まで低下する。ただ聞こえ、見えるだけ。
今の私は夜明けまでこの少女の寝顔を見ていることしか出来なかった。
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目が覚めると、夜が明けていた。なんてキレイな池だろう。
僕の体にあのお姉さんの上着がかかっていた。話は通じないけど、なんか嬉しい。
お姉さんは、僕の隣に座っていた。
何か話してるけどやっぱりわからない。お姉さんにお礼を言って、上着を返す。この上着、軽くてすべすべしてる。とっても高級な上着なんだな。
僕は乾いた服を着て、出発の準備をする。池沿いに走ってたら、大きな街道に出るかも知れないからね。
「お姉さんも近くの街道まで、送るよ。一緒にいこう。」
2人で御者台に座ると、馬達がゆっくり走り出す。
でもどんなに進んでも池と砂しかない。かなりおっきな池だ。僕達は無言、馬の足音と車輪の音だけ。
突然、お姉さんは立ち上がり後ろを振り返った。ビックリして僕も馬を止めて後ろを見る。特に変わった様子はない。
山賊が来た訳ではなさそうなのでよかった。僕は正面を向き手綱を握る。すると、お姉さんが僕の手を触れ、首を振る。
そして後ろを指差し、何か話しかけてくる。
今来た道を戻ろうって事なのかな?
道中、ずっと何も動かなかったお姉さんが初めてなにか訴えてきた。気になるな。
僕は来た道を戻ることにした。
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遠くの方で、水中から何かが飛び出る音がした。
魚?いえ、魚の音ではない・・・と思う。
馬車から身を乗り出し、望遠レンズモードで音のした方向を見る。
倍率をMAXの100倍まであげ、ようやく何か見える。おそらく人、人が・・・2人。
前に進もうとする少女の手を静止し、伝える。
「あそこに人がいます。行って見ましょう。」
ジェスチャーで伝える。
伝わったようだ。少女は方向転換をし、今まで来た道を戻り始めた。
一時間近くかけて、音のした場所まで来た。ここは私が最初にいた場所に近い。
砂浜を見ると、犬のような足跡がそこら中にある。そして、人のくっきりとした足跡もある。
その足跡を追っていくと、海と川の合流地にたどり着いた。そこから川の上流に向かって、足跡は続いている。
「この川の上流に人が向かったようね。」
「え、何でお姉さん、そんな事わかるの?」
「ほら、これを見て。」
少女にわかりやすいよう、人の足跡を指し示す。
「ほら、この同じ足跡がここからこうして・・・・ね、川の方に向かっているでしょう。」
「あ、ホントだ!お姉さんよく気がついたね!凄い凄い!」
「え?」「え?」
私と少女は同時に声を出す。
先程までお互いの言葉がわからなかったはずなのに、何故いきなり通じるように、理解出来るようになったのでしょうか。
「貴方、私の言葉がわかるの?さっきまでは伝わらなかったのに。」
「お姉さん凄いよ!こんな短い時間でドワーフ語を覚えるなんて。」
ドワーフ語なんて私の言語プログラムにはない。しかし、少女は私の話を理解している。しかし、私の今の言語設定はフランス語だ。
「ねえねえお姉さん、行ってみようよ。」
今、考えるのはよしましょう。どんなに演算しても解答にたどり着けないと思うから。
「そうね、行ってみましょう。」
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お姉さんと話せるようになって、お姉さんの名前がわかった。ハナって言うんだって。僕の名前を伝えたら、
「シャイン、素敵な名前ね。私の国の意味で『光』って言う意味なのよ。凄く素敵だわ。」
と、誉められた。なんだか嬉しい。
もっとお話したいな、そう思っていたら、急にお姉さんが真面目な顔になった。
「シャイン、あそこに人がいるわ。」
「え?どこ?」
「ほら、川の側で座り込んでる。」
「ホントだ。ハナは目がいいね。」
「ありがと。一応警戒はしておいて。襲ってくるかもしれないから。」
そういわれて、手綱にぎゅっと力が入る。また山賊かもしれない。そう思うと手からじんわり汗が出てくる。
僕にもはっきり人が見えるくらい近づくと、座っていた人が立ち上がりこちらを見た。
その人は手を振っている。なんだろ。
「シャイン、手綱は離さないで。私が彼と話をしてみるから。もし、危ないと思ったらすぐに逃げれるようにしておいて。」
ハナの顔つきが変わった。わかった。僕に任せて。
僕はその人の少し離れた所で手前で馬を止める。
シャインが馬車から降りようとしたけど、僕はシャインの服を掴む。
「ハナ、降りないで話をして。」
「・・・わかったわ。」
その人は笑顔で馬車に近寄って来た。その人の足元には狼がいる。唸って、僕達を警戒しているんだ。
シャインが話しかける前に、その人は笑顔のまま僕達に話かけてきた。
「こんにちわ。」
「あ、こんにちわ。」
シャインも挨拶を返す。僕は何も言えなかった。
「いきなり質問するけど、君たちも突然この場所に来たんでしょ?」
「・・・・どういう意味ですか?」
「言葉通りの意味ですよ。だって、俺達もそうだから。」
「そうです。気がついたら浜辺にいました。」
僕にはさっぱりわからない。けど、ハナはなんかわかってるみたいだ。
「俺達ということは、貴方の以外にも人がいるということですか?」
「そうです。俺を含めて3人、今います。」
「昔からの仲間なの?」
「いや、違いますね。ここに来た日にちはバラバラ。種族もバラバラ。おそらく世界もバラバラでしょう。お姉さん達もそうでしょ?服装をみたら世界観が違いますもん。お姉さんは文明の発達した世界から。そこの少年はファンタジーな世界から来たんではないかと、僕は推測しています。」
ハナさんの手に力が入るのがわかった。なんだか緊張してる。
「貴方は一体、なんなの?」
「俺ですか?俺は地球という星の2018年からここに来た、ただの日本人ですよ。」
僕にはさっぱりわからなかった。
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地球って、私が住んでいた星の名前。でも西暦が違う。私が住んでいたのは2560年のフランス。もちろん日本は知ってる。知ってるけど、2125年の海抜上昇で地上から消えた島国。今はなかったはず。
私は彼の言語形態をチェックする。すると、『日本語』と。でも私、日本語なんてプログラムにないわ。
「何故、私達は会話が出来ているのですか?」
「あー、それは風の精霊の力だってさ。仲間にエルフがいて、なんか話が通じるようなまじないをしたそうだよ。俺も最初はその子がなに言ってるのかさっぱりわからなかったけど、まじないの後には会話が出来たから。」
つまり、最初にシャインとあった時は会話が出来なかった。けど、この辺に来たら会話が出来るようになったのはその『まじない』の効果?そもそも『まじない』ってなに。
「とりあえず、2人の話をゆっくり聞かせてくれませんか?」
シャインと相談し、私達は馬車を降りた。
この人と、話をしてみよう、そう2人で決めた。




