表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤島奮起  作者: つふら
風の魔王があらわれた
PR
39/126

長男の悩み


細ゴリラが来て、僕たちの関係性が少し変わった。


『ダイヤ兄貴、僕がこの細ゴリラを見張る役を引き続きやらせてくれないか。』


ルビーは自分から細ゴリラの監視を請け負ってくれた。


今朝、片手で猪を切り刻むのを見て、俺はあのゴリラに恐怖を覚えた。僕の力で弟達を守れるだろうか、ボスを守れるだろうか。凄く不安になってしまった。


『僕達、4匹で攻撃しても勝てないかもね。』


つい、心の本音が口に出ていた。


『兄貴、サファイヤ達の前でそんな弱気なことを言うなよ。』


そう言って、ルビーはあのゴリラの元へ走って行った。


そして、夜になると率先してゴリラの監視役をルビーはやってくれている。僕はなんて弱い兄なんだ。大切な弟を一番危険な場所に送るなんて。


『ダイヤ兄様は気にしすぎですのよ。私達の役目はボスを守ることでしょう?ルビー兄様が、率先して外敵をマークしているのですから、ダイヤ兄様はボスの側にいて、ボスを守ればいいのだと思いますわ。』


エメラルドが眉間を舐めてくれる。ごめんね、妹にも心配かけてしまって。





翌朝、ルビーと細ゴリラが見当たらない。


大変だ、探しに行かなければ!


『大丈夫だよ、ルビー兄ちゃんの臭いするもん。』


なんでサファイヤはこんなにも危機感がないんだ。もし、あの細ゴリラにバラバラにされていたらどうするんだ。


僕は風の中にあるルビーの匂いをたどる。


こっちだ!


少し森の奥で、ボスもほとんど近寄らない場所だ。


『どうした、ダイヤ兄貴、そんなに焦った顔してなにかボスにあったのか?』


五体満足のルビーを見てほっとする。


『いや、細ゴリラとルビーの姿が見えなかったから、心配になって追ってきたんだ。』


『ダイヤ兄貴、昨日話し合っただろ?俺はあのゴリラを、兄貴達はボスを守るって。』


『それはそうだけど・・・。』


『じゃぁ、戻ってボスの側にいてくれ。』


『ルビー、本当におまえは大丈夫なのか?』


『兄貴、戻ってボスを守ってくれ。もうじきマーキングを終えたゴリラがここに来るはずだから。』


『・・・わかった。頼んだよ、ルビー。』



あー、僕はなんて駄目な兄なんだ。弟に説教され、僕自身の心がブレブレで。ため息をつきながら、家に戻る。少ししてからゴリラとルビーが戻ってきた。でも、僕は何も言わなかった。



そして結局、寝るまでルビーと口をきかなかった。



翌朝、またルビーとゴリラはいない。


ボスと一緒に河原へ向かうけど、狩りなんか出来る気分じゃなかった。サファイヤは楽しそうに変な虫を追っかけてる。エメラルドはまた土掘りにいってるんだろう。僕はボスの側でウロウロしていた。


「どうした?ダイヤも遊んできていいんだぞ。」



違うんだよ、ボス。狼心が伝わればいいのに。


河原の奥にある森から、ゴリラとルビーが戻ってくる。


「お、ルビー!!初めて兎を狩れたじゃないかすごいぞ!!」


ボスがルビーをベタ褒めしている。


うぅぅぅ、悔しい悔しい!!兎を捕るのは・・・僕・・・僕の役目だ!!


僕の中の本能が目覚めたような瞬間だった。一気に力が沸き脚力が増し、本気で力を込めて地面を蹴ると、いつもよりも凄く早い。


狙いをつけてから5秒、逃げようとしていた兎をあっという間に捕らえることが出来た。


『ダイヤ兄ちゃんすげーな。今、ちょー速かったぞ。』


『僕もびっくりした。ルビー、今の見てくれてた?』


『ダイヤ兄貴はスピードが速くてもとっさの動きに対応できる瞬発力がないからな。』


『・・・言ってくれるじゃないか。よし、次は鳥類を捕まえる。』


『兄貴には無理だよ。あいつら、素早いんだよ?』


絶対、鳥を捕まえてやる。


3日後、僕は鳥を捕まえることが出来た。ルビーは悔しそうな顔をしたけど、


『やっぱ兄貴の狩りの能力は俺達よりも凄いよな』


と、笑って僕の背を舐めてくれた。喧嘩していたつもりはないけど、なんか仲直りした気分だった。


そうそうボスと細ゴリラの名前が判明した。『タケル』と『ルル』って言うらしい。ボスはボスのままだけど、細ゴリラはルルゴリラと僕達は呼ぶようになった。



その7日後、風が強くて雨が降っていた。


昨日の夜から風が強くなって、僕達は怖くてうるさくてなかなか寝付けなかった。耳が良すぎるのも良くない。そして鼻がこんなにきかないのも生まれて初めて。


ボスは僕達を撫でて安心させようとしてくれてる。ごめんね、ボスを守らなきゃいけないのに、耳も鼻もおかしいんだ。あのサファイヤですら、ぐったりしているもん。


『ダイヤ兄ちゃん、なんか体がかったるいよう』


僕は弟達を舐めてあげることしか出来ない。


ルルゴリラとルビーもこちらに来た。


『大丈夫か?』


『うん、兄貴達もしんどいんだな。』


『雨がやんだら少し楽になると思うから、あんまり動くなよ。』


『ごめん、ダイヤ兄貴。』


僕の体もしんどいけど、ここは僕がしっかりしなくては。


ルビーは瞬発力と判断力がある。だけど持久力と加速力はそうでもない。


サファイヤは直感力と忍耐力がある。だけど思考力と応用力がない。


エメラルドは判断力と応用力と思考力と想像力がある。だけど、狼に必要な獲物を捕らえる力は全て平均以下だ。


そして僕は持久力と加速力はある。けど判断力と決断力はない。4匹それぞれがそれぞれの特徴を持っている。


僕は1匹じゃない。これからもこうやってお互いが足りない部分を補ってボスと一緒に生きていけばいい。


朝ご飯を食べながら、僕はそう決意をした。



「あの、少し休ませてはくれませぬか?」



僕達は声がするまで誰も気がつけなかった。


新しいゴリラだ。巨大で強そうなゴリラだ。


決意が一瞬で吹っ飛んだ。4匹足しても気がつくことも対応することも出来ないなんて、僕達はまだまだ修行が足りない。4人でも足りないんだから、僕達はもっともっと頑張らなきゃいけないみたいだ。


ボス、僕達は頑張るよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ