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孤島奮起  作者: つふら
風の魔王があらわれた
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37/126

改名の決意


7/16


午後9:12


今日は食べてばかりの一日だった気がする。




隣ではふんどし姿の男性が横たわっている。ダイヤ・サファイヤ・エメラルドの3匹はそれぞれ俺達の四肢の一部を枕代わりにして寝ている。


ルルとルビーは違う棟の拠点で就寝中だ。



今日の夕食中、ルルとの会話でひと悶着があった。午前中の魔王様の身体能力について熱く語っていた俺を、かわいそうな子を見る目で哀れみ、全く信じてくれなかった。


夕食後、魔王様にお願いをして武器を出す実演をやって見せてもらった。



百聞は一見にしかずだな。やっと信じてくれたルルは、


「魔王さんって、頭の打ち所が悪かったおじさんじゃなくて、本当に魔王だったのね。凄いじゃないの。」


と、かなり失礼なことを口にしていたが、魔王様は全く気にする様子もなく、寧ろ褒められたことに嬉しそうにはにかんでいた。なんて心の広い魔王様なんだろうか。


魔王様に、いろんな武器を出してもらった。


槍以外に、剣・斧・レイピア・ハンマー・ナイフと、次々に変えて出してくれた。その大きさも小型のものから超大型のものまで様々に替えることが出来た。寿命、使わせてますけどね。


今の俺にとっては喉から手が5本は軽く出るくらい、うらやましい能力だ。



それ以外に能力をあるのかと俺が聞くと、


「拙者はまだまだ若い魔王なので、風の知識が少々、体が丈夫なのと武器を出せる以外は、ただの人と寸分変わりはない。」


とのこと。


そんな魔王スペックと、寿命の長さから普通の人ではないですからね、魔王様。精霊に是非とも『寸分』の意味を勉強していただき、現実に即した通訳をされることを望む。


「ところで、タケル殿とルル殿。その、『魔王様』という呼び方、変えられませぬか?」


「でも、魔王様って名前がないっておっしゃっていたじゃありませんか。」


「それはそうなのであるが、『魔王様』と呼ばれていると、どうも職務中のような、落ち着かない心持ちになってしまい・・・いや、拙者もうまく説明は出来ないのであるが・・・。」


あー、わかるわー。俺にもその感情、理解できるわ。


「看護婦さん、水を持ってきてくれる?」

「看護婦のニーチャンは独身だろ?俺ぎ紹介してやろうか?」


俺の名前は伊東だ。看護婦と呼ぶな。今の世は看護師だ。


そう、看護師に成り立ての頃はよく立腹していたのを思い出した。職名や役職で呼ばれるの、なんか嫌だったんだよな。今はもう諦めたけど、魔王様の言わんとしてることはわかる。



「なら、魔王さん、新しく自分の名前を作ってみれば?」


「名前をですか。・・・ルル殿、それは誠に面白い提案ですな。どうか、両名殿、拙者に名を授けてはくれませぬか。」


「え?そんな簡単に名前なんかつけちゃっていいんですか?」


「かまわぬ。よろしくお頼み申す。」


そう、頭を下げられると、断れないよなぁ。


「タケルと私が1つずつ名前の案を出して、最終的に魔王さんに決めてもらうのはどうかしら?」


「・・・責任重くて気は進まないけど、わかったよ。」


俺のネーミングセンスなんて、子犬達の名前の付け方ですらあの程度なのに。無理難題吹っ掛けてきたな、ルルの奴。


・・・うーん。ゲームするときの主人公名もすべてデフォルトか俺の名前(タケル)だったし、実家の犬や猫の名前も妹たちが決めたから俺に命名権なんてなかったんだが。


「はい、私決まったわ!」


えぇ!俺全然考えてないんだけど。


「せーので、言うわよ。準備はいい?」


え?え?マジか。話し聞かない奴だな。


「せーの・・・」


ごめん、魔王様。


「デビル」「レッド」


「え、ルルなにその魔王様だからデビルって安直過ぎない?」


「タケルこそなに、レッドって。犬猫に名前をつけるんじゃないのよ?仮にも魔王よ。」


「二人とも、落ち着きなされ。」


「魔王さんはどっちがいいの?」


魔王様には酷な選択をさせてしまうことになる。どちらも微妙なのは変わりない。


「拙者は・・・・。」


いいんですよ?断る勇気も必要なんですよ?



「・・・決めました。拙者、御二人が考えて下さりました、名前からそれぞれとって、『レビル』と名乗ることに致します。」


流石、風の魔王様。上司ですね。どちらにも角が立たないようなご配慮、苦労されてきたんですね。


「レビル、いい名前じゃないの。ね、タケル。」



「え、うん。魔王様・・・じゃなくレビルさん、語呂もいいと思いますよ。」


片仮名(レビル)の語呂なんて、俺は知らないけどな。


「拙者は今日からレビルと名乗ることに致します。何卒、宜しくお願い申し上げます。」






そんなふんどし姿で寝ているレビルさんを見ながら、心の声を少し吐き出させてほしい。


ホントは俺、「ふんどし丸」って名前が浮かんだんだ。浮かんだけど、最後まで言えなかった。ギリギリにになって、ふんどしの色が赤だったのを思いだし『レッド』って言ってしまっただけなんです。


今は言わなくて良かったと、心から思ってますよレビルさん。



ぐっすり寝て下さいね。



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