ルルの話
昼食を食べ片付け、食材の下処理や夕飯の仕込みをした後、俺はルルさんの話を聞くことにした。
ルルさんが住んでいたのは結構広いという聞いたことのない国、その領土のとある森の中にある小さな村だそうだ。
村人総数30人程度。月に1度、村の代表が買い出しに行くくらいしか外部との交流がない村だったが、一昨日の夜、突然村が襲われた。
襲ってきた目的はわからないけど、襲ってきたのは銀色の鎧を着た人間達だったとのこと。
その時、逃げる最中に切られたのがこの左肩。これ、刀傷だったんだな。
人間達に追いつめられ、剣を振り下ろされた時、死を覚悟した瞬間、ここの砂浜に立っていた。暗闇の中、遠くで明るい仄かな光を見つけ歩いてきたら、ここだった。
「助かるかもと思って来てみたら、目の前にほぼ全裸の男性が、竹槍持ってたら警戒しますよね。」
ルルさんがクスッと、思い出し笑いをしながら言った。
はい、ごもっともです。
俺も自分の話をした。
電車が脱線して突っ込んで来たこと。気がついたら砂浜で、試行錯誤の上、ここに拠点を作ったこと。子犬達との出会いや、ルルさんが現れるまで、悩んでいたこと。
「その、『雷神の神通力のような力で毎日時間に従って動く、大きな鉄の箱が10個ほど連なって出来た5000人程度の相乗り馬車』って、何ですか?」
なんでしょうね。
俺もそんな馬車、お目にかかったことないですよ。
風の聖霊が適当で曖昧な仕事をしたようだが、それ以外は概ね理解してくれた。
お互いここに来た経緯を話たものの、ここが何処なのか、何でここにいるのか、その根本的な疑問は全く解決されず、わからないままだった。
「『死の覚悟』っていうのが今のところ共通点なのかな。」
わかんないこと悩んでも仕方がない。お互い話を終え、午後の作業をする事にした。
ルルさんは午前中の作業の続きをするそうだ。もう十分働いていると思うのだが。
俺は、ワイヤーソーで拠点やや近くの細い木の伐採を始めた。
今の拠点以外に、もう1つ、ルルさんの寝床を建てようと考えたからだ。それまでは俺の竹ゴザ(ベッド)で寝ててもらおうと思っている。
一応、ルルさんに家の建て方を尋ねたんだけど、ノコギリや釘なんかの鉄製品を使わずに建てる方法はわからないということだった。
100年以上生存されていると思われるルルさんの経験になければ、同じやり方で作ろう。
子犬達はそれぞれ好きな場所に狩りに出たらしい。
今日は時間的に場所の整地で終わりそうだ。
4:58
最近、日の入りが遅くなってきた。空はまだ明るい。
整地作業を中断し、夕食作りを始めよう。
まずウツボ。昼の時点で内臓処理は終え、三枚下ろしにし、塩をふって身をしめといた。
ウツボって小骨が多いんだけど、骨切りなんて技術は俺にないから、竹串を4箇所に差し白焼きに。
青ヤドカリ昼にサッとボイルしていたので、あとは竹串さしてそのまま焼くだけ。
自然薯は表面を洗い、ナイフの背で皮を削ってから適当な大きさにカット。それを竹筒に入れ蓋をして蒸し焼きに。
ウサギの肉は照り焼き風に。昼に砂糖醤油に浸けておいたものを竹串にさして焼くだけ。
兎と猪の骨で出汁をとった具なし味噌汁。
貝類は竹網の上にのせ、じっくりと遠赤外線による火入れ。
ルルさんはルビーが獲ってきた鳥を部位別に切り分けて、干し肉処理をしている。あ、昼の時点で羽むしり済。内臓下処理済。
※兎・鳥の内臓は子犬達が昼御飯として美味しくいただきました。
完全に暗くなる前にL字石垣に浸けてあったツタを回収、新しく採った硬いツタを入れておく。
ついでにシャツの洗濯し、体についた泥や汗を流す。
いつもならジーパンも脱いでしまうんだが、当面は自重しよう。
子犬達もそれぞれ戻ってきた。
ダイヤ、戦果なし
ルビー、戦果なし
サファイア、戦果なし
エメラルド、戦果なし
こんな日もたまにはあるさ。ちょっと皆、尻尾をそんなに下げなくていいから、ちゃんとご飯あげるから。
「ルルさんも1回作業やめて一緒に皆で夕飯にしましょ。」
「そうですね。」
竹を縦半分に切った取り皿、竹で作った箸を用意。
さて、今日も美味しく夜ご飯を食べようか。
「いただきます」
※兎脳も子犬達が美味しくいただきました。




