ボスの危機意識について、思うところがあります
お母さんが死んで、ボスと生活するようになって数日、兄様達は手放しに『このゴリラのボスはすごい!』って誉めているけど、私はまだそこまで凄いと思ってないの。
ダイヤ兄様が捕って獲物、ボスは私達に食べるようそのまま渡してくれる。
『流石、ボスだ!優しいな』
ダイヤ兄様、ボスの表情をよくみて。
あれ、私達に食べ物を授けるっていうか、どうやって食べていいかわからないから、私達に丸投げしたって顔よ?
『エメラルドは考え過ぎだよ。僕達にこんな立派な名前をくれたじゃないか。まぁ、僕の名前が1番カッコいいけどな。』
ルビー兄様、私達に名前を授けてくれたときのこと、覚えてる?あのときのボスの表情は、わかりやすい同一種類の名前を、みたいな顔つきでしたわ。
極めつけは、今日。
ボスは海で捕った貝に火を入れていたんだけど、その中貝の中に禍々しい匂いをしている貝が一つ混じっていたの。見た目は普通の貝だけど、恐らく毒を持っていると思う。それも致死量の。
ボスは気付いていないのか、わかってて食べてみようとする男気なのか・・・あの表情は前者ね。食べるの楽しみルンルンな顔つきだわ。
ほら、食べようとしている。
ボス!食べるなってば!
私はボスの手から貝を奪う。
「エメラルド、なんだ貝を食べたかったのか。いーよー、食べて。これもあげよう。」
私の前に5~6個の貝を置く。呑気か。ボス、死ぬところだったのよ?
『エメラルド、行儀が悪いぞ』
ダイヤ兄様、私の話を聞いて。
『そうか、そうゆうおねだりもありなんだ、次は僕がやって1番ご飯をもらってやる』
ルビー兄様、ねだってないから。結果、おねだり風になったけど。何でも競おうとしないで。
『いーなー、僕にも少しちょうだい!』
食欲の申し子、サファイア兄様・・・には何を話しても、無駄ね。
私は毒貝を口に咥え、家から少し離れた所に穴を掘って埋めた。その上からマーキングもしておく。こうしておけば、兄様達、主にサファイア兄様は掘り起こさないだろう。
無事に毒貝処理を終え、家に戻ると、兄様達は私が貰ったはずの貝を食べていた。
『エメラルドはいらないみたいだから、ボスに中身を出してもらって、責任もって食べたよ!』
サファイア兄様にほんのり怒りが沸くけど、ここは我慢。何か言ったところで、この兄様に伝わるわけがないもの。
「なんだ、やっぱりエメラルドも食べたかったのか?ほれ、中身を出すからこれを食べな。」
そんなガッカリした表情してたのかしら。私もまだまだね。
一口で貝を食べる。
ちょっと苦味もあるけどとっても美味しい。
「美味しいか、もう一個、食べるか?」
私はしっぽを振る。
ボスはそういうところがとても優しい。だからなんだかんだ言っても助けてしまいたくなるの。
ボスはちょっと頼りないし、兄様達は生真面目・ライバル意識の権現・食欲バカだから、私くらいがしっかりしないと。
兄様達のように狩は得意じゃないから、私が出来ることを精一杯させていただきます。ボスの口に入るものはしっかり警戒します。
後日、
「この貝、エメラルドが好きな貝だろ?」
と、たくさんの毒貝を見せられた時、
少しだけ、自信がなくなりました。




