聖霊の御力
『ΦΩζιπЖЁё?』
女エルフが両手を挙げながら近寄り、焚き火の手前で歩みを止めた。
子犬達が飛び掛かれないギリギリの距離なんだろう、コイツ等も動かず止まってまま、唸り声をあげている。
「言葉がわからないんだ。伝わらなだろうけど、そこから動かないでくれ。」
俺は護身用竹槍を足元に置く。彼女の警戒心をとかないと、子犬達は間違いなく襲いかかる。それだけは避けたい。
万が一、彼女が俺に攻撃してきたら、子犬達の動きに期待しよう。他力本願作戦だ。
女エルフは、目を瞑った。すると彼女の周りに風が吹く。
おいおい、まさか魔法を使うとか?いや、それはフィクション世界の話だろ。本当に使われたら俺なんか一般人は一瞬で御陀仏。夜更かししてまで自問自答していた案件が、一瞬で解決とかあっけなさ過ぎるだろ。
「ζΩ、ёΦι、ん、あー、これで通じているかしら?」
急に日本語が、その口から紡ぎでる。
「日本語?君、日本語喋れるの?」
ハトが豆鉄砲をくらう顔とは、まさに今の俺の表情だろう。見るからにバリバリの異国人の口から流暢な日本語が飛び出て来た感じだ。
「あなたが話しているのは『ニホンゴ』っていうの?ごめんなさい。私はその言葉を知らないわ。」
「でも、今、俺達『会話』出来てるよ。」
「それはですね、風の聖霊にお手伝いしてもらい、音の意味を通訳してると言った方がわかりやすいのかしら。私達の言葉では『同調』って言うのですけど。」
つまり未来型青色猫型機械の世界でいうところの『ホンヤク●ンニャク』みたいな効果ってことね。それをコンニャク食べなくても、風の聖霊の力でどうにかなってると言うことかな。
「どうしてここに?」
「どうしてなんでしょうね。気がついたら砂浜に立っていました。」
彼女をみると、彼女の四肢は擦り傷や切り傷が無数についていた。
「よくわからないけど、まずは傷の手当てをしましょう。こちらへいらしてください。」
彼女の警戒心を出来るだけ解こうと、両手を横に広げて、敵意のないというジェスチャーをとる。
子犬達も警戒体制を解く。・・・目はギラギラしてるけどな。
鍋に水(煮沸消毒済)を入れ、焚き火にかける。そこに、竹筒の中から、竹の葉を細かくちぎって火で煎ったものを掌分くらい鍋に入れる。
これ、どうしてもお茶が飲みたくて作ってみた、なんちゃってお茶っ葉だ。俺は『竹茶』と呼んでいる。そりゃ既存のお茶っ葉と比べると『月とスッポン』いやいや『高級マンションと長屋』くらいの違いはあるが、飲めなくはない。
人間、暖かいものを飲むと休まるもんだ。
作った竹茶を竹筒に入れ、少し砂糖を入れて混ぜる。こうして飲むと苦味が少し減って美味しくなるのだ。
ほい、と彼女に竹筒を渡す。
警戒していないのか、竹筒を受け取りすぐに口をつけて飲んでいる。
「これ、ほんのり甘くて美味しいですね。」
「そっか、よかった。こんなもんしか出せなくて。」
「いえいえ、飲まず食わずで逃げていたので、とてもありがたいです。」
何から?と、思ったが、これは後で聞くことにし、まずは傷の処置からだ。




