突然の来訪者
スマホの日時表示は7/3 夜10:24
ここに来て1ヶ月たっていた。
スマホは手動充電器のお陰で、なんとかまだ使うことが出来ている。まあ、電波が入らないから、用途は限られている。ここに来た時は、音楽聞いたり、昔の写真を眺めてたりしていたけど、最近は暗闇での時間の確認か、懐中電灯代わりにしか使ってない。
海にも探索区域を伸ばすことで、食糧はなんとか間に合っている。子犬達も食糧を集めてきてくれるお陰もあるんだけど。
今、残っている食糧は乾物と缶製品、米と調味料くらいだ。生物や日持ちしなそうな食材を優先して使った。腐らすのは勿体なくて。缶ビールもあと2本、残っている。
試行錯誤しながら発見もあった。
竹で米が炊けるのだ。水を入れたら竹が燃えないことを知ったあと、米も炊けるのでは?と思って試してみたら、成功!
あまりの嬉しさに缶ビールをついつい開けてしまった。
調味料は塩・醤油・味噌は7割くらい、砂糖はほぼ丸々残っている。出来るだけ節約しているのだ。
塩は生命活動に不可欠なので、枯渇する前に何らかの策を講じる必要があった。海水から手に入れようと、これも試行錯誤した。
が、結局は海水をひたすら沸騰させていく方法がベターだろうという結論に至った。
主に夜、竹クラフトしている時間は焚き火をつけているので、そこで塩の作成を取り入れた。
すると、鍋が足りなくなる。食事毎に海水を竹筒に移して~って作業が地味に面倒だった。そこで、海で見つけたシャコ貝を鍋の代わりにした。
そうなると、最初に作った石で君だ焚き火だとのシャコ貝が傾く。直接火に当たらないように網みたいなものを作ろうと思った。
何度もノートに想像図を描き、問題点とそれをリカバディーする方法を考えた。
そうして作り出された三種類の焚き火形態。
一つは今まで通り、石垣で囲んだ焚き火。だが、そのサイズを大きくし、石の周りにビールの空き缶を解体した平べったいアルミを3缶分、張り巡らせた。
すると、アルミに反射して今までよりも明るくなる。これ、昔、真っ暗な公園に職場のスタッフと花見に行った時にネットで調べて、やったことがあったんだ。その時は蝋燭だったけと。
2つめの焚き火。これは、どうにか鍋を囲炉裏のように吊るすようにできないかと考えて出来たものだ。
鍋、熱かったんだよ。
で、考えぬいたのがこれ。石垣で囲まれている焚き火のサイズに合わせて、竹を『A』のようにして、左右に組む。Aの頂点のところに竹を一本かける。
鍋が熱くても、竹を持てぱ、火傷をせず火から鍋を外せる。よく、『日本●話』の漁師や、野宿する勇者御一行がやってた気がする。
3つ目は、『A』に組んだ竹の平行棒のところに、竹で組んだ網状のものをのせ、その上に調理したいものを乗せて、加熱していくという方法。これは人生で数回しかないバーベキューの網焼きを想像して、類似品を作製しただけなんだけどな。
でも、これがあったから、竹筒ご飯もうまくいき、シャコ貝の貝殻による塩の作成も起動にのった。
さらに、海で取れた貝類も網焼き方式で焼くことが出来るようになった。
まぁ、直火よりも時間はかかるけど、表面だけ焼けて、中は生、焼き直す、という手間が省けるのはありがたかった。
更に更に、この『A網乗せ』と同じものを焚き火なしで作ったことにより、新しい魚の干し場所となった。
今まで、生魚のカーテンが常に存在していた拠点内部でしたが・・・
なんということでしょう。上に干した魚を気にして中腰にならなくてすむ、スッキリとした空間になった。
まぁ、既存にあるのかもしれないけど、俺にとっては画期的なアイディアだったんだよ。
俺が『アハ体験』したこの3つのアイディアも、今までの経験やゲームや漫画や小説から得た知識のお陰だ。
いやはや、海馬にある記憶の引き出しというのは今更ながら素晴らしいと思った。
あの子犬達も、最初にあった頃に比べて、着々と大きく逞しく成長している。
この間、エメラルドが小鹿を咥えてきたときには、ビックリした。
俺には捌けないのでまるごと子犬達に渡したら、美味しそうにかぶりついていた。
この子達を食糧難にしたら、俺が喰われるかもしれない、そんな恐怖すら覚えたよ。
なんだかんだ生きていくことに必死だったけど、何のためにこうしているのか、最近悩む。
看護士として働いていた頃、「俺は家族も親戚もいないから、早く死にたいんだ」と患者さんに言われたことがあった。
そんな時、俺は決まってこういう「何言ってるんですか、死んだら僕が悲しいですよ。昼御飯食べて、少しお休みしましょ。」
今思えば、よくそんなセリフが言えたよな。
その時の俺なりに本気で思っていたんだけど、今こんな状況で思い返すと、上っ面でしかない。今、誰も知っている人間はいないなかで、生きる目的が本当にあるのか。俺は生きたいと思っているのか。
最近、夜になるとこんな考えばかり浮かんで眠れなくなる。
「ふぅ」
つい、深いため息が出てしまった。
横にしていた体を起こす。俺の横に寝ていたダイヤが顔をあげるが、
「寝てていいよ」
と言うと、ダイヤはまた身を丸めて寝る体制になる。
この子犬達と紆余曲折あり一緒に暮らし初めて4週ほどたつが、俺の言葉を理解しているんじゃないのかと思うほど、空気が読める。
寝床から外にでて、火火打ち石で火を起こす。
水筒の蓋を開け、白湯を飲む。
生きたいか死にたいか
何のために生きるのか
俺は答えがでない問を頭のなかで自問自答し続ける。
エメラルドが俺の足元に来て、スッと身を丸くする。ごめん、起こしてしまったか。心配かけているのかもしれない。
頭を優しく撫でようとした。
その時、4匹とも丸まった体を、一瞬にして四つ足で立ち支える。
前足をやや屈曲し、臨戦態勢となる。
?何かいるらしい。
1週間前くらいにも、こんなことがあった。
その時は体長30㎝くらいの蛇が現れ、子犬達は言葉の意味の通り瞬殺した。
あれ、怖かったわ。
コイツ等、マジ怖いと思った。まあ、その蛇は美味しく皆で頂きました。あ、蛇は捌けるようになったけど、四つ足動物はまだ無理っす。
パキッ
地面に落ちている小枝を踏みつけ、割れる音がする。
大物かもしれない。
俺も音をたてないように、竹槍を持つ。
ゆっくり立ち上がり、耳を澄ます。
サクッ、サクッと、地面の土を抉りながら何かが歩いてくる音。
子犬達は、警戒した鳴き声を喉から出している。
熊か?熊なのか?
「ΕΟΠΥΡΞΘΗγΦΜ?」
よく分からない音がする。
脳内シナプスが最大速度で伝達しているのがわかる。『これは何語だ?』『英語やフランス語、韓国語とも違う形態』『字幕映画でも聞いたことのないイントネーション』
『でも、おそらく誰かが俺に話しかけている言語だ』
恐る恐る声をだす。ってか、震えた声だ。
「誰だ」
「ΠΟΞγΗ」
わからん。何をいってるのか、さっぱりわからん。
暗闇から徐々に謎の発音をしながら黒い影が近寄ってくる。
竹槍をギュッと握る。
『ΕΥΠΟ』
焚き火の灯りに照らされ、黒い影の全容が明らかになる。
「・・・」
拠点から1m位のところで、その姿形を知ることができた。
女性。
しかし、俺の経験上の記憶にある周りの女性とは風貌が異なっていた。
緑色の長い髪と目、身長は俺と同じ170㎝くらいで、細身。
そして、1番目についたのが、その耳。
ヒト科の耳のように丸みを帯びず、長く、そしてその先端は細くなっている。
俺の脳内で浮かんだ単語、それは
エルフ




