新たな命
結婚式を挙げてから、数日が経ったある日。
『花音、おはよう』
『お…はよう…』
幸音が朝起きると、キッチンでだるそうな顔をした花音が返事をした。
『……どうした?具合でも悪い?』
『ちょっとね…。でも本当にちょっと…』
花音は包丁をまな板の上に置いて、ソファへと向かうと横になってお腹を抑えた。
『具合、悪いんじゃん…』
『気持ち悪い…』
『最近、頑張りすぎなんじゃね?朝早く起きたり…』
幸音は花音の額に手を当てた。
『んー…。熱は無いみたいだけど…』
『じゃあ、大丈夫…。』
『大丈夫じゃない。』
『幸音のお弁当作らなきゃ…。お仕事遅れちゃうよ…』
幸音はオーケストラをしながら楽器の修理の仕事をしていた。
『大丈夫。近くのコンビニで何か買うから。ゆっくり休んでて。もしなにかあったら連絡しろよ』
幸音が花音の頭を撫でた。
『ごめんね…』
『じゃあ、行ってくる』
幸音は鞄を持って家を出た。
それから何時間寝ただろう。
『う、うぅ…』
目を覚まし、立つとめまいに襲われた。
足がよろけて、壁にもたれかかってしまった。
時計を見ると夕方の6時。
『幸音が…帰ってくる…』
幸音は毎日、花音のご飯を楽しみにしててくれる。仕事から帰ってくるとただいまの次が今日のご飯は?になる。この前は『花音のご飯が好きなんだよ』って言ってくれた。
『ただいまー!つかれたー…!今日のご飯なに??』
幸音が鞄を部屋に置いて花音の元に来た。
『ごめん…まだ用意してなくて…。ごめんね…』
花音は頭を下げた。
『花音、具合悪いんだよね。よし!じゃあ、今日は俺がご飯作ろうかなー!』
幸音は腕まくりをして、ニッと笑った。
幸音のいいところは、こういうところ。彼は本当に温厚で酷いことをしなければ滅多に怒らない。自分のことよりも相手のことを最優先に考えてサポートしてくれる。
『え、でも仕事で疲れてる…』
『たまには俺がご飯作って花音に食べさせたい。花音みたいにめっちゃ美味しい飯は作れないけど、頑張って作るから!』
『ありがとう…』
花音はニコッと笑って椅子に座った。
『で、できたよ…』
幸音は恐る恐る料理をテーブルの上に乗せた。
彼が作ってくれたのはオムライスだった。
形は少し崩れてるけどとても、美味しそうだった。
『これ、なにかわかる?』
幸音が花音の顔を覗いた。
『うん!オムライス!』
『わ、わかる!?よかった〜…』
『うん!わかるよ!…いただきまーす』
花音は幸音が作ったオムライスを1口食べた。
『ど、どう…??美味しい??』
『んんん!!美味しい!私が作ったのよりも美味しい!』
花音は目を輝かせた。
『やったー!ほんとに!?』
幸音もホッとした様子だった。
次の日の朝
『んん…あ、花音…』
幸音が起きて、後ろを振り向くと花音が寝ていた。
(まだ寝てるんだ…)
いつもならこの時間には起きていてご飯を作っている。
『花音…?』
幸音は起き上がって花音の顔を覗いた。
『え…』
花音は汗をたくさんかいて、とても顔色が悪かった。
『花音!?大丈夫か!?』
花音は幸音の腕を掴んだ。
『苦…しい…。お腹痛い…よ…』
『熱…体温は低いんだよな…』
額に手を当てても常温だった。
『立てるか…?』
幸音は花音の背中を起こした。
『ゆっくりでいいから』
花音はゆっくり、立ち上がった。
少しふらつきながらも、ソファまで運んだ。
『俺、着替えてくるから待ってて』
幸音はすぐに着替えて花音の元に行った。
『よし、準備は出来たから病院行くか…』
幸音は車の免許をとっていて、すぐに移動ができた。
『あの…花音は…』
『奥様は妊娠されていますね…』
『妊娠…ですか…』
花音のお腹には新たな命が芽生えていた。
『はい。妊娠中は無理に動いたりしないでください。あと、薬を飲んだりタバコやアルコール類の服用もしないでください。お会計の時にサポートパンフレットを無料で配布していますので、詳しい事はそちらをご覧下さい』
『はい…ありがとうございました…』
『なぁ、花音。』
『なに?』
『俺ら親になるんだな。』
『だね〜!子供、女の子と男の子どっちだろう…』
花音も幸音もワクワクしていた。
『俺は、どっちでも嬉しいなぁ。』
『私も!…そうだ!赤ちゃんが産まれたとき用にベッド買おうよ!あとオモチャとか!あとベビーカー!あとは…あ、哺乳瓶とか…。あと口に加えるヤツ!』
『まだいいだろ(笑)もう少し気長に待とうぜ』
『まぁ、そうだね(笑)元気な赤ちゃんが産まれるといいなぁ』
花音はまだペッタンコなお腹をさすった。




