避難所
看病所へ着くと、看護師や医者が走って薬品を運ぶ姿が見られた。
幸音は目を開けなかった。幸い、呼吸はしていて時間が経てば目を覚ますとのことだった。だが
『右手、骨折…』
幸音が寝ているベッドの近くの壁に貼られた紙に『右手 負傷』と書かれていた。
(じゃあ、ギターもピアノも片手しか弾けないじゃん…)
幸音は暇さえあれば、得意のギターを弾いて聴かせてくれた。幸音がピアノを弾いて、花音が歌う。これも珍しいことじゃない。
それから数日後、幸音は目を覚ました。幸音の両親も泣きながら喜んで花音ももちろんのこと喜んだ。
『右手、使えないの超不便だな…』
『利き手だもんね…』
あの大地震から数日経って避難所の周りは工事が着々と進んでいった。
あずは、両親と連絡が取れて違う避難所に避難しているとのこと。
花音の家は屋根が崩れ落ちていて、工事が進められている。
幸音の家はなにも崩壊していないらしい。
花音と幸音は体育館の裏口でボーッとしていた。
『俺のギター無事かな』
幸音がぽつりと呟いた。
『幸音の家、大丈夫なんでしょ?』
『家が大丈夫でも、棚とか倒れてギターが潰れてたりしてないかなってこと』
『あー。どうだろ』
『まぁ、ギターが無事でもこんな手じゃ弾けねーし。』
『そんなことない!!』
花音は大きな声で幸音に言った。言い放った花音もビックリして両手で口を塞ぎ『えっと…』と慌てていた。
『ふっ(笑)』
『……』
幸音は鼻で笑った。
『小学生まで、すごい引っ込み思案だったのに。今はすごいなんていうかなー。ポジティブ…って言うのか?明るくなったよな』
『そ、そうかな…』
花音は少し嬉しくて頬をかいた。
『なぁ』
『ん?』
『いつになったら一緒に暮らせるかな』
『え…?』
『ううん(笑)独り言』
『え、なになに!?教えてよ!』
『ないしょー』
『ええ!教えてー!』
『うーん…って、あ!もうお昼の時間だー!飯配られるぞー』
『わざとらしい…』
幸音は立ち上がって花音の手を引っ張った。




