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【完結】淫魔リリムと悪魔祓いマリーは、善悪の境界線でステップを踊る。  作者: 芝村あおい
第四章 ナザレ・ふたりの芽生え編

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76 大好きだよ/大好きですよ


「──大好きだよ、マリー」


 今までとは違う気持ちを込めて、いつもの言葉を繰り返す。いや、今までだって同じ気持ちだった。自覚しているか、いないか。ただそれだけだ。

 マリーは一瞬大きな目を見開いて、じわじわと白い頰を赤く染めた。


「……えと……そうですね。リリム、私のこと大好きですよね。毎日言ってますもんね……」

「うん。マリーは僕にとって世界で一番かわいい、大好きな女の子だよ」

「そ! そうですよね! わ、私もリリムのこと大好きです! 大事な相棒です!」

「……うん。そうだね」


 マリーと自分の大好きは、違う。でも、それがダメなんて思わない。だってマリーが自分にとって最高の相棒なのも、本当のことだから。

 なんだか胸のつかえが取れた気がして、自然と頬が緩んだ。けれど、逆にマリーの方がもじもじと落ち着かなさそうに体を揺らしている。


「……あの。なんかさっきから、リリム変じゃないですか? 目が真剣(マジ)なんですけど……」

「え? そ、そうかな?」


 まずい。全然いつもの調子じゃなかったみたいだ。悪魔的な余裕のある笑みがあってこその淫魔リリムなのに。

 マリーは膝の上でまあるく頬をふくらませる。


「もー! さっきからリリムが真剣に好き好き言うから、なんかどきどきしちゃうじゃないですかー! リリムのバカ!」

「えっ、どきどきしたの?」

「なんでちょっとうれしそうなんですか! こんなに心臓どきどきしたら、リリムに引っ付いてられないじゃないですかー!」

「えぇ? うーん、そうかぁ」


 マリーにどきどきされるのはうれしい。でも、マリーとくっ付けないのは嫌だ。マリーをぎゅと抱きしめるのは、リリムだって落ち着ける憩いの行為なので。


「……どうしよう。マリーにはどきどきされない方がいいのかな?」

「リリムがヘンにならなきゃいいんですよ! 早くいつものリリムに戻ってください!」

「無茶言うなぁ」


 知ってしまったからには、知らないころには戻れない。二千年も生きてきて不甲斐ないが、こんな時にどうすればいいのかまるでわからなかった。


「あ! もしかして、精気足りなくてヘンになってます? もっとあげたほうがいいですか?」

「んー……そうだなぁ」


 今、マリーとキスしたらどうなるんだろう。


 もちろん、いつも通りの頰にだけど。

 特別な女の子にキスしたら、やっぱり今以上にどきどきするんだろうか。ちょっとだけ、興味があった。

 どの道、毎日繰り返す行為なのだから今確認しておいた方がいいだろう。もしちょっとヘンになってしまっても、今はファウヌスもマリエッタもいない。からかわれるならマリーにだけだ。


「じゃあ……もうちょっともらおうかな……」


 腹をくくってマリーの頬に唇を近づける。マリーのうっすらと桃色に染まったかわいい顔を間近にして、ふと、細い指先に唇を制されてしまった。


「? マリー、どうしたの」

「えっと……あげるのはあげるんですけど……ちょっとだけ待ってもらえます?」


 マリーが視線を明後日の方へさまよわせている。頬の赤味もじわじわと増していっていた。


「……もしかして、具合悪い?」

「そ、そうじゃなくって! ……リリムがヘンだから……

 なんか……ちょっと、緊張してきました……」

「…………」


 思わず、胸を抑えてよろめいた。ソファの上でなければ倒れていたかもしれない。


「リリム? リリムももしかしてまたヘンになってます? 大丈夫ですか?」

「う、うん……大丈夫……ちょっとびっくりしちゃっただけ……」


 一日に何回も殺されかけるのは、ちょっとリリムの長い人生でも記憶にない。マリーがかわいくて心臓止まりかけた。

 マリーは真っ赤な顔で怒った顔をした。本気で怒っているわけでないことは、羞恥に潤んだ瞳ですぐにわかる。


「り、リリムがヘンなのが悪いです! リリムとちゅーするって思ったら胸がきゅーってなっちゃったんですけど、どうしてくれるんですか!」

「ぐふぅ!」

「なんでリリムが呼吸困難になってるんですか?! こっちだって息するのもしんどいんですけど!」

「うぐぅ!」

「ばかばか! リリムのばーか! もうヘンな話するの禁止ですからね!」

「う……わかってるよ……もうしないよ……なんなら、もうハグもしない。マリーだってお年ごろだしね」


 リリムの言葉に、マリーの表情がぴたりと固まる。改めてリリムの膝の上に乗った自分を見た。

 それから、リリムの首筋に腕を回して抱きついてくる。


「……マリー?」

「……ハグは……してもいいです……リリムとこうしてるの、うれしくなるから、止めたくないです」


 また、胸の奥がきゅっと縮んだ。

 けれど、ただ緊張するだけじゃなくて、うれしかった。

 マリーとこうしているのは、リリムも、ずっとずっと、うれしかった。

 思わず両腕でそっとマリーを抱きしめる。


「……うん……じゃあ、今まで通りにしようか」

「はい! それがいいです!」


 マリーの花が咲いたみたいな笑顔を間近で見て、リリムも笑った。


「……マリー。僕、マリーのこと大好き」

「はい、私もリリムのこと大好きです! 今日も一緒に寝ましょうね、リリム!」

「……………………それは流石に、もう止めようか……」




『淫魔リリムと悪魔祓いマリーは善悪の境界線でステップを踊る』Closed.



完結です。活動報告にあとがきと後日譚をアップ予定です。

リリムとマリーを最後まで応援していただき、ありがとうございました。よければ評価やご感想などいただけると今後の励みになります。

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― 新着の感想 ―
連載お疲れ様でした。 リリムとマリーの距離感がとても可愛くて読んでいて幸せでした。 シスターイザベラや他の悪魔など大人キャラもカッコよくて、二人を見守っている様子がとても暖かくてよかったす。
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