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もう一つの自分

「よくここまで来た。私が相手をしてやろう」

サックと呼ばれる一人の男は長い剣を地面に置いて取り出す。

「随分と長いものを使っているんだな」

マイルがサックに向かって言う。

「まあな。これは私が長年使っている愛刀だ。この刀で斬れないものはほとんど無いだろうな」


「私はどっちだろうな。斬れるか斬られないか」

マイルは強気になって話す。

「それは刀が自ずと教えてくれるだろう。この刀が相手の攻撃を弾いた瞬間全ての感覚が私に刀を通じて入ってくる。話はここまでだ。あまりこの刀を外気に触れさせたくない」

サックは長い刀を構える。

「さあ、両者とも最初の挨拶を終えたようです。そろそろ戦いが始まることでしょう」

さっきまでの騒がしい会場はマイルとサックの試合の雰囲気に飲み込まれて静かになる。

「マイルがあんなに真剣な表情をしているのは初めて見たかも」


俺はマイルの表情がいつもと違う感覚を受け取っていた。

風がサーっと吹く。「サっ」

その音一つが会場に響き渡るとサックはいつの間にかマイルの後ろにいた。

「もはや相手の感覚を知るまでもないか」

サックはもう終わったというような顔をする。

そして数秒後マイルは地面にそのまま倒れる。

「まじか。嘘だろ。マイルが何も出来ずに倒れるなんて……」

俺はマイルが負けるという事とその速さに言葉を失っていた。

「やはりサック選手は強かった。マイル選手はここで脱落です」

「安心しろ致命傷は避けた」

サックは刀をしまおうと最初の位置に戻ろうとする。

「いらぬ配慮だな。本当の戦士なら相手に本気でぶつかるのが礼というものだろう」

マイルはいつに間にかその場に立っていた。

「ええ、マイルいつ起きたんだ!? それに傷一つ付いていない」


俺はまたも驚く。

「おっとここでまた面白い展開になりました。脱落したと思われたマイル選手がなんと再び立ち上がっています」

アナウンスがマイルの復活を告げる。

「あなたはなかなかの逸材のようですね」

サックは少し笑って言う。

「分かりましたあなたの言うとおり本気でいきましょう。今度は死んでも知りませんよ」サックは再び構える。

「ああ、そうじゃないと困る」

マイルがそう言う。

二人の戦いは単純な勝負だけでは無かった。お互いに何故か親しみを感じていた。

「クロックタイム」

マイルが技を発動する。

「さあこれで自慢の速さは無意味になる」

マイルの周りの時間はスローモーションにしたように遅くなる。


しかしサックは相手の術中にはまっている事を全く知らない。いや、知ることができない。

「この試合は私が一番得意とする相手だ。自分の技術を高めて頂点を目指す。私はそんな戦士が好きだ。だから考えている事も分かる」

マイルはそう言いながらスローモーションになった世界の中でサックを後ろから気絶させる。

勝負は一瞬だった。

マイルの技でスローモーションになった世界の経過時間は現実の時間のほんの少しだった。

会場にはサック一人が倒れていた。

「サック殿には是非ともミムラと対決してほしい。お互い良い刺激になるだろう」

マイルはそう独り言を言うのだった。

「なんと、何が起きたのか分かりませんが、いつの間にかマイル選手が逆転勝ち。誰がこの事態を予想できたでしょうか」

アナウンスも会場もマイルの強さに圧倒される。

「さてマイル選手の試合はここまでです。マイル選手の健闘を讃えましょう」


そうして会場の観客はマイルに拍手を送る。

マイルはそのまま待合室に戻ってくる。

「マイルおめでとう。さっきは一瞬ドキッとしたよ。マイルが負けちゃうんじゃないかって」

俺はマイルに言う。

「その通りだキク殿。私はあそこでサックに本気を出されていたら負けていただろう。だが相手は私に手加減をした。そのおかげで相手の性質がわかった。あのサックという奴は間違いなく強い」

マイルは戦闘を振り返りながら言う。

「マイルがそこまで言うなんて相当強いんだな」

「さあ、次はお前の番だ」

俺は兵士達に呼ばれる。

「もう行くのか。じゃあマイル行ってくるよ」

「ああ、死ぬなよ」

「分かってる」

そして俺は闘技場の会場に入る。






「さて次も期待の新人です。人間のキク選手です」

アナウンスが流れる。

「さてこの新人の相手はなんとこの闘技場のナンバー2であるウルバイです。彼は魔法を非常に得意とする戦士です」

そうして俺に前には見るからに魔法を扱うという格好をした男が立っていた。

「こいつがナンバー2なのか? じゃあナンバー1がライジングだとするとこいつって相当強いはずだ」

「ヒートダンス!」


ウルバイは早速魔法を使う。

「なんだこの感覚。体がすごく重い。あれ? なんか空が明るくないか? それに熱い」

「キク様。ウォータープロテクトの装甲が破られそうです。どうやら太陽のエネルギーを直接浴びせてきているようです」

ウォータープロテクトが報告する。

「それって絶対にやばいよね」

「緊急脱出を発動します」

俺はその範囲から脱出した。それと同時に巨大な岩が地中から押し上げてくる。

「今度はなんだよ」

「設置型魔法と考えられます。ストロング•バトル•モード解析不可。評価不可」


「おいおい、ついに壊れたのか? 仕方ないとりあえず体制を立て直そうデス•インパクト!」

俺はなんとか岩を破壊して危険を乗り越える。

「あなたよく生きていましたね」

相手の魔法使いウルバイは言う。

「ああ、なんとかな」

「でも、次は確実に生きては帰れません。マッシブレンジ!」

ウルバイがそう唱えると俺の周りの空間は歪んでいく。

「なんだこれ。やばすぎる。それにここどこだ?宇宙か?」

俺は何もできないまま宙に浮かされる。

「ニュークレザー」

俺の前には強大な光の塊が出現する。

俺はその光に押されてどこまでも飛ばされる。

「これは、参った。ついに俺も終わりか。あいつ強すぎだろ」


俺は危機的な状況になっても変に冷静でいた。

そして俺はとてつもない力でどこかに引っ張られる。

「ザ•ラストダンス! この穴に吸い込まれた者は確実に存在が消える」

俺はどんどんと穴に吸われていく。

「ウォータープロテクト再起動。ここを切り抜ける方法が一つ見つかりました」

ウォータープロテクトが動き出す。

「まさか…… こんな状況でも大丈夫なのか?」

俺の前にはさっきよりも大きく見える穴がある。

「試験段階ですが、スイッチモードがあります」


「もうなんでもいいから。それをやってくれ」

俺は藁にもすがるような思いで言う。

「分かりました。スイッチモード起動します」

そうして俺はスイッチモードが起動すると同時に急激な眠気に襲われて寝てしまう。







「実在の肉体を媒介にしてスキルの行動を許可。主人の魂を隔離。これより操作を開始します。スターマインドを発動。ザ•ラストリゾートを推進力にして脱出します。成功しました。

危険エリアを脱出。これより空間構造を認識。空間のズレを発見。内部に目標の生命反応を感知。

これよりアルティメットスキルを使用して目標を攻撃します。

許可を申請。許可が承認されました。これより攻撃を開始します。

エンプティキット。目標まで残り百メートル。着弾しました。目標の存在を再構成。成功しました。これより空間の解析に入ります。一部に巨大な輪を視認。破壊。空間崩壊が開始。

これより任務を終了します。スイッチモード終了を申請します。申請を承認。魂を解放。終了……」


「ハっ」

俺は目が覚める。そして気がついたら闘技場の真ん中に座っていた。

「俺、今まで何してたんだ? それに相手は倒れている。俺は勝ったのか?」

俺は状況を理解できずにいた。

「でもどうやって勝ったのか全然分からない。記憶にも残っていない。でも体が痛すぎる。全身筋肉痛みたいだ」

俺は体がガチガチになっていた。

「それにウォータープロテクトも切れてる。あれ?視界が……」

俺は疲れからかその場で倒れてしまったのだ。


途中のウォータープロテクトのシーンはあえて技の名前だけにしています。

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