両者の動き
「一人でノコノコやってくるとは私も舐められたものです」
タンクランドの国王ミスティアは言う。
「それは、いらぬ悩み事を増やしてしまった申し訳ない。ですが、あなたが予想しているよりも単純な事でこちらに訪問しているわけではないのです」
ラミルはかしこまって言う。
「何かの企みか? それは少し気になるな。ここで申してください」
「ここで話しても良いのですが、この空間は機密性の問題で少々心配なところがあります。あともう一つ国王にだけ話せと言われているので」
「この空間は完全に外部の人間は入れないようになっている。入るには許可が必要になっている仕組みだから心配しないでください」
「それは良かったです」
ラミルは言う。
「だが、私の左腕であるマークスはここから離れる事は出来ないです。なぜならここの空間を作っているのは彼だからです」
「なるほどそういう事情があるのですね」
ラミルはなにか考える素振りをする。
「そうだ!」
ラミルはあたかも何かを思いついたような様子で突然指を鳴らす。
その瞬間さっきまでの無機質な空間から、豪華な応接部屋に変わるのだった。
「なに!? どういう事だ。マークスよ」
ミスティアはあからさまに戸惑う。
「あれ? マークスはどこだ?」
ミスティアはマークスがいない事に気付く。
「少し強引な真似をしてしまいましたが、さっきの空間を上書きさせてもらいました」
ラミルはミスティアに言う。
「まさか、光の戦士というわけか。これは予想以上だ。ここに閉じ込められてしまった以上私はもう何も出来ない。大人しく話を聞きましょう」
ミスティアは観念したようで、少し気を抜いた様子を見せる。
「それはどうもありがとうございます。では、早速ですが」
ラミルが計画書をだす。
「これはナイロ王国のカーミン王からの伝言です。私達の国々、タンクランド、ナイロ、タイロ、オスムニア、アスアの五カ国で連携を取ろうというものです」
ラミルはざっと説明をする。
「なんと…… それは今までの歴史にも類をみない大連携ですね」
ミスティアは驚いた顔をする。
「でも、なぜ今、そんな事をする必要があるのですか?」
「それは天軸人の影響です」
「天軸人ということは…… まさかあいつらが動き出したというのか。それでどう対処するのですか?その連携で」
「天軸人達は、現在徐々にこの地の侵略を始めています。さきのナイロ王国とタイロ連邦国の戦争は実際は天軸人が裏で操っていたことが判明しています」
「それは大変ですね。私達が知らない間にすぐそこまで天軸人の脅威が来ていたということですね……」
ミスティアは不安な顔をする。
「そうなんです。ですから早急に連携をしていち早く動かないとまずいのです」
「そういうことでしたら私も是非とも協力させてもらいましょう。さっきはあんな対応をして申し訳なかったです」
ミスティアはラミルに謝る。
「いえいえ、大丈夫です。私も少し強引な真似をしてしまってすいません」
ラミルは言う。
「ちなみにこの話は誰にも話さないようにお願いします」
「分かりました」
そしてラミルは再び指パッチンを鳴らす。
「ミスティア様、ご無事で」
マークスはミスティアに近寄る。
「マークス心配するな。この魔物は敵ではない。むしろ私達に利益をもたらしてくれる存在だ」
ミスティアは落ち着きのないマークスにゆっくりと説明する。
「そうでしたか。しかし、私の術が上書きされてしまうとは、面目ない」
マークスが落ち込む。
「マークスよ落ち込むのではない。あの魔物は魔王なのだ」
ミスティアはラミルの正体を言う。
「魔王!?」
マークスは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「よく分かりましたね。僕は相手を萎縮させないように隠していたのですが」
ラミルは言う。
「最初は魔王か迷いましたが、さっきの技を見て確信しましたよ。あなたが魔王だって」
「そうですか。僕は先日魔王になったばかりですが、よろしくお願いします。名前はラミルと申します」
ラミルは改めて自己紹介をする。
「ラミルさんですか。良い名前ですね」
「ありがとうございます」
ラミルは少し嬉しそうにする。
「マークスよ帰してあげなさい。ラミルさんは忙しいみたいなんだ」
「分かりました。解除」
マークスがそう言うと最初の場所に戻る。
「ではお気をつけて。私達も全力で協力しましょう」
「はい、ありがとうございます。では短いですが僕はそろそろ」
「ああ」
そうしてラミルはタンクランドの王ミスティアとの交渉を無事に済ませ、次の仕事に向かうのだった。
一方で天軸の陣営も密かに動いていた。
「ミランよ。会って来たぞラミルとやらに」
キラスはミランに言う。
「どうもキラス。それでどうだった?」
「やつは確かに魔王となっていた。しかし例の人間は一緒では無かった。だがやつは現在アスアにいるかもしれない情報を掴んだ」
「それはお疲れ様」
ミランはキラスを労る。
「私はミランにそんな事を言われるほどやわではないぞ」
キラスは少し機嫌を損ねる
「ごめん、ごめん。そうだ! アスアといったらの作戦を思いついた」
ミランは何かをたくらむ。
「まあ大体見当はつくが、あいつを投入するのか?」
キラスは分かったように聞く。
「大正解。あいつは本当に硬いからね。でもやつを投入すれば例の人間は必ず戦うことになるだろう。そしてそこで調査をする。完璧な作戦だ」
ミランはやってやったかのような顔をする。
「まあ確かにミランにしてはよく考えられている作戦だ」
キラスもその作戦に賛同する様子を見せる。
「よし、じゃあ決まりだな。彼の事はよく調査しないとね」
そしてミラン達はある作戦を実行に移すのだった。
そして俺達はというと、
「いやーー 今日も充実した時間だったな」
交流会を終え、自分達の部屋に戻っていた。
「なんか囚人っていうけれども、みんな根は優しい奴ばっかりだし」
「そうだな私も結構驚いたよ。まさかあんな感じだったなんて」
俺達は交流会の感想を話し合う。
「次はどんな敵なんだろう?」
「分からないが最初よりは確実に強力な奴だろう」
俺達は自然と次の戦闘の話題に入る。
「そうだな。いくら俺達が強いとしても気を抜いてはいけない。俺達はライジングを倒すまで全力でいくぞ」
そして俺は次の目標への覚悟を決めるのだった。
翌朝、
「ドンドン」
兵士達が扉を叩く音がする。
「今日は試合だ。準備をしておけ」
「分かりました」
俺達は返事をする。
「もう次の試合か」
「いくぞキク殿。私達はなるべく早くラミル様に報告しないといけないからこのぐらいでちょうど良い」
そうして時間が経ち俺達はまた最初の待合室に入る。
「またここか。ここの来るとなんか息苦しいな」
俺は待合室の空気に圧迫感を覚える。
「まずお前だ」
マイルが呼ばれる。
「また一人ずつか」
マイルは再び闘技場の会場に出る。
「さあ、前回、会場を大いに盛り上げた期待の新人のマイルが登場だ」
アナウンスがマイルの登場を告げる。
「さあ、今回の相手はフルストライクだ!」
マイルの前には大剣を持った魔物が現れる。
「うわ、あいつも超強そうじゃん」
俺はいつも通りそんな事を思う。
「やっと骨のありそうなやつが来たな」
マイルは余裕そうな表情を見せる。
「おっと、今回もマイル選手は強気です」
「さあ始めるか」
マイルはそう言ってジャブ程度の攻撃を仕掛ける。
しかし、相手には全く効いていない様子だった。
「やはりか。並の攻撃では通じないようだ。仕方ないあの技を使うか」
マイルは弓を地面に突き刺す。
「そして矢をこんな風に」
マイルは矢を思いっきり引く。
「貫く! フィフス!」
マイルの放った矢は目にも追えないくらいのスピードで相手を貫く。
「バタンっ」
マイルはまたも一発で相手を仕留める。
「マイルはあんなにアグレッシブな攻撃もするのか」
俺はマイルの姿を見てそう思う。
「さあ、今回も一瞬で倒してしまいました。次の相手を早速紹介いたします。Dランクの頂点に達する剣術の鬼サックの登場だ!」
そうしてマイルの前には一人の人間が現れるのだった。
遅くなって申し訳ありません。少し体調を崩してしまいました。




