幸運という名の不運
「カーミン王、一体どうしたっていうんです? こんな人目のつかない地下なんかに入って」
ラミルは不思議に思ってカーミンに尋ねる。
「実はな、少し厄介な事になりそうなんだ。それを今から話すが聞かれてはまずいものでな」
カーミンとラミルは一つの小さな部屋に入る。
「そして話だが、まずは魔王討伐を祝福しよう。それに魔王となった事もだ。まあ勇者としてではなくてな。それで本題に入るが、以前のタイロ連邦国の件だ。単刀直入に言うと、あれはカラミティを裏で操っている奴が居た。正確に言うと奴らだが」
カーミンは真剣な表情で言う。
「それはどういう事です?」
ラミルはすぐに聞く。
「それは天軸の奴らだ。あいつらは昔からこの地を支配下にしようと企んでいた。それを防ごうと賢者達が魔王と勇者の二つの守護者を作った。魔王は魔物を勇者は人間を。そして賢者は勇者と魔王を戦わせることによって守護者を内側から強くするようにした。これも全て天軸人からこの地を守るためだ」
カーミンは説明する。
「それが一体どう関係してくるのです?」
「つまりは、その守護者は天軸の奴らのとっては邪魔な存在だ。でも、直接倒しに行くと賢者に感知される。そこで奴らは自分達で守護者となるものを出そうと考えた。その一人がカラミティだ」
「まさか…… じゃあ今までは全部天軸人が操作していたって事か」
ラミルは驚いたような表情をする。
「そうだ。そしてタイロ連邦国との戦いも余を勇者から引きずり下ろして、天軸共の手下を代わりに勇者にしようと企んだものだ。タイロ連邦国の王デスタは天軸人の駒だ」
「なるほど、それでしたら、もう既に侵略は進んでいるという事ですね」
ラミルは言う。
「ああそうだ。そして今度はお主が魔王となった。奴らはお主を誘い込むか、消そうとしてくるだろう。それも卑劣な方法でな」
カーミンが結論づける。
「そういえばさっきキラスという女と出会いました。その女は魔王となった僕よりも強いと言ってどこかへ行きましたが」
ラミルはさっきの出来事をカーミンに話す。
「そいつが天軸人かは分からないが、魔王よりも強いとなるとその可能性は大きいだろう。この世界の最強と言われる賢者と勝負出来るくらいだからな」
カーミンは言う。
「もしそうだとしたらかなり危険ですね」
「ああ、そうだ。そこで余が考えたのだが、人間の国であるナイロ、アスア、タイロ、タンクランド、オスムニアの国同士で連携を取ろうと思う。そこで一つ頼みがあるのだがアスアとタンクランドにこの事を伝えて欲しい。だが、この情報は極秘だ。必ず国王だけに伝えてくれ」
カーミンかたラミルに頼む。
「分かりました。今ちょうどキクがアスアに行っているから頼んでみます」
「うむ。頼んだぞラミルこの地の平和のためだ。天軸人共に絶対に渡してはならない」
カーミンはそう言ってラミルを外まで送る。
「あっ、そうだ食料生産の話で来たのだった。カーミン王その話はどうしますか?」
ラミルが思い出したように聞く。
「それはお主に任せる。好きなようにやって良い」
「分かりました、それでは」
そうしてラミルの交渉は意外な形で終わるのだった。
その一方で俺達はもう少しでアスアに着くという所だった。
「なるほど確かに海上都市だ」
そこには海上に緻密に作られた都市があった。
「ここは大陸とを繋ぐ港だ。ここからしか大陸には行けない」
マイルが説明する。
「そういえば今回の目的はなんなんだ?」
俺はふと気になった。
「今回は視察みたいな感じだな。いずれ私達の村とも関わってくるという予想なのだろう。どんな体制でどんな奴が国を運営しているのか。そういったものを調べる。というのは建前だけどな」
マイルはそう言って街の門をくぐる。
「これがこの前言ってた魔法で動く乗り物か」
街の中にはハンドルの付いた車みたいなものが走っていた。
「これなんだけど高いんだよな」
マイルは言う。
「やっぱりそうなんだ。だって乗っている人が貴族みたいな人達ばっかりだから」
俺は乗り物に乗っている人達の顔を見る。
「おいお前達、どこから来た」
「え!なんだ?」
俺は声のした方向を向く。
そこには街の警備みたいな兵士がこっちへ向かって来ていた。
「お前達、見慣れない顔だな。どこからだ?」
「旅行で来ました」
マイルは言う。
「旅行? 知っているかは分からないが現在アスアは閉鎖中だ。いかなる者でも国王の許可証を持っていなければ入る事が出来ない」
「普通に入れたけど……」
俺は呟く。
「お前達の行為は侵略行為に当たる。さあ、来てもらおうか」
兵士達は強引に俺達をどこかへ連れて行く。
「なあ、マイルどうする?」
俺は聞く。
「とりあえず大人しく付いて行こう。そして今思い出したけど、ここの国王は少し頭が狂っているんだ。何をされるか分からない」
「ええ! 今思い出しても……」
俺は呆れた顔で息を吐く。
「まあそんなに心配するな。私達だったらどうにか出来るだろう」
「そうだな」
そして俺達は牢屋に連れていかれる。
「バタン」
牢屋の扉が閉まる音が響き渡る。
「お前達には後で裁きを受けてもらう。それまで大人しく待っておけ」
兵士達はどこかへ行く。
「はあ、とんだ災難だよ」
「なあ、キク殿。他のやつら何か様子がおかしくないか?」
マイルのそう言われて俺は正面の牢屋を見る。
「ただ寝ているだけのように見えるけど……。え? あれは寝ているのか?」
俺は不思議に思う。
「そうだ。あいつは寝ているんじゃない。体がボロボロで起き上がれないんだ」
「じゃあなんかの刑罰を受けた後じゃないのか?」
俺はマイルに言う。
「その可能性もあるが隣を見てみろ」
「え、あれ? なんかあそこの魔物は元気そうだ」
「あいつはなにも傷なんか付いていない。絶対におかしい。何かある」
マイルはそう考えてた。
「なんか考えすぎな感じがするけど、もしそうだったら囚人同士で戦わせるとか?」
「たぶんそれだろう。そして裁きをというのもたぶんその事だ」
マイルは確信を持った顔で言う。
「本当に趣味が悪いな」
俺は刑の執行の仕方の対して思う。
「これは大変な事になったと思ったが、もしかしたら上手くいくかもしれない」
そうマイルが言った時、兵士達がちょうど降りて来た。
「時間だ来い」
そして俺達はどこかへ連れていかれる。
扉が開く。
「え、なんだここ。武器がたくさんある」
俺は予想していた光景とは全く違い、驚いていた。
「やはりな。これは闘技大会だ。それも囚人同士の」
「なるほど、だから武器が置いてあるのか」
俺は周りを見渡す。
「名前が呼ばれるまでここで武器を選んでおけ」
そう言って兵士達は部屋の外へ行く。
「あそこから外の景色が見えるぞ」
マイルが小さい窓を指差す。
「本当だ。行ってみるか」
そうして俺達は外の景色を見る。
「完全に闘技場だ。それに観客があんな大勢いる。あそこにいるのは国王か?」
俺は一際目立つ服装をしている人物を見つける。
「たぶんあいつだ」
マイルがそう言う。
そして闘技場には見るからに強そうな4本腕の魔物が居た。
「あいつがどうやら今のところ最強のようだな。しかしあんな強い奴の相手はあんなしょぼい人間か。これは見る前から結果が分かる」
マイルがそう言う。
「おお、あいつが攻撃したぞ」
「うそ、見てみたい」
俺とマイルは釘付けになって見る。
「ごめん。もう終わってた。あいつ強すぎるよ」
会場には無様にも人間がボロボロになった状態で搬送されていた。
「俺達勝てるかな」
「もちろんだ」
マイルがそう言って俺達は順番を待つのだった。
第二章も終盤だと思います。(大体一章を30話くらいにします)
第二章の終わりまで見ていただけたら幸いです。
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