世界の全貌
「バンっ、バンっ」
カラフルなライトがショーの始まりと共に付いていく。
「ついに始まったよカルさん」
ウニヤは楽しそうにその光景を見ている。
「こんなショーを見るのは何年ぶりだろう。最近までは忙しかったからなぁ」
カルベロスはこれまでの事を振り返りながらもショーの様子を見ている。
「さあ、みなさん。お待たせしました。いよいよフィナーレとなる当館の目玉であるキールのショーの始まりです!」
司会の服装をした人が開始の合図を告げる。
「キールってなんだ? イルカみたいなやつか?」
俺は聞き慣れない言葉を聞いて少し考える。
「バシャーン」
とてつもない量の水しぶきが上がる。
「ずぶ濡れだよ。現実の世界のショーとは比べものにならないくらいの迫力だ。俺達は三階席にいるっていうのにここまで飛んでくるとは」
俺はあまりの迫力に少し恐怖さえ感じていた。
「ラミル。大丈夫か?」
俺は隣にいたラミルを心配する。
「大丈夫だよキク。僕はしっかりとガードしていたからね」
ラミルは全く濡れていなかった。
「そこは普通濡れるのが臨場感あって楽しめるのに」
「そうなの。じゃあ次はかぶってみようかな」
「その方がいいよ。ウォータープロテクトよろしく」
俺は一瞬で体を乾かす。
「やっぱり便利だなウォータープロテクトは」
俺はそんな事を思いつつもショーを観覧する。
「最初のプログラムはキールによる水面アートです」
そうアナウンスが流れるのと同時に巨大なプールの中から大きなアザラシみたいなのが姿を現す。
「え!あんな大きいの! それに水面アートってなんだ?」
俺は興味が湧いて来る。
「バシャーン」
キールは丁寧に波を起こしていく。
「キールってあのアザラシみたいな奴のことか。それにしてもあんな巨体でこんな細かい事も出来るんだな」
キールはある程度波を立て終わった後に波をその場で止める。
「さあ、みなさん完成しました。イエローブリッジです」
水面には細かくイエローブリッジの全体像が浮かび上がる。
「ええ! すごすぎる。細かいところまでハッキリわかるし。光の反射も上手く利用している」
俺はあまりの完成度に感動する。
「やばっ、何これ」
ラミルも視線が釘付けになっていた。
「さて、次のアートは」
そして再びアナウンスが流れ、キールは動き出す。
「次は何の絵なんだ?」
俺がそう思っていると再びキールは飛び上がり水しぶきをあげる。
「来たよこれ、こんな水を使って大丈夫なのか?」
俺はそう思いつつラミルの方を見るとラミルがずぶ濡れになっていた。
「キク、確かに気持ちいいね」
ラミルは楽しそうに言う。
「そうでしょ、絶対こっちの方が臨場感あるって」
俺とラミルが話している間にアートは完成に近づいていく。
そしてキールは波を止める。
「パチパチ」
会場に大きな拍手が起こる。
「これってこの世界の地図!?それにしてもすごい地形だ」
俺はここで初めてこの世界の地図を知る。
「僕達がいるのはあそこら辺だよ」
ラミルは地図の小島を指差す。
「え!あそこなの! てっきり大陸だと思ってたよ」
俺は自分のいる土地の意外さに驚く。
「さあ次は、ラストのプログラムです。みなさんの体験型ショーです」
「体験型? どういうことだ?」
俺が疑問に思っていると
「ガチャン」
急に座席のシートベルトが閉まる。
「まさか…… 体験型ってジェットコースターみたいなやつか」
「さあみなさんキールの背中に乗って大海原に出発です」
そうアナウンスが流れると俺達は座席ごと吸盤みたいなのでキールの大きい背中に貼り付く。
「では、いってらっしゃい」
「ガタガタ」
大きな扉が開き、ウォータースライダーみたいなのに入っていく。
「バシャーン」
ウォータースライダーを下った先の海に到着する。
「みなさん。ここからは大迫力の体験が待っていますよ。今から見えるのは海の蛇であるトリメンダススネイクです」
そうアナウンスが流れると海の中から巨大な大蛇が現れる。
そして俺達の頭上を通っていく。
キールは動き出す。
「うわっどんどん速くなってきた」
キールはだんだんとスピードアップをしていく。
そして急降下して海の中に入る。
「嘘だろ!全然息吸ってないよ」
俺はそう思って慌てて息を吸う。
「あれ? なんか全然苦しく無いけど」
俺は不思議に思って上を見上げると透明な膜みたいなのが張っていた。
「なんだ安心したよ。まさかね、それに結構深くないか?」
キールはどんどん深く潜っていく。
「まもなく水深二千メートルです。クラーケン出現地域です」
「クラーケン!? もしかして……あのクラーケンを見る事ができるのか!」
俺は興奮して真っ暗な外を見る。
「さあみなさん。真下をご覧ください」
そうアナウンスに促されるまま俺は上を見上げる。
「うわー これがクラーケンか」
そこには列を成して進むクラーケンの大群があった。
「みなさんお楽しみいただけましたでしょうか? 次は最後のアトラクションです。その名もスカイジャンプ。このまま大空へと飛び立ちます」
「ええ! ここから大空に!」
俺はさっきよりもワクワクする。
「ポーン」
甲高い音がしたのと同時にキールのヒレが光始める。
そしてキールが真上に向かって動き出す。
視界は外の光が入ってだんだん明るくなっていく。
「ザバーン」
遂に水面から飛び出す。
そしてそのまま今度は大空に向かって上昇していく。
「こんな高いところまでいくのか。下はもう見えないよ」
キールはどんどん上がっていく。
「あそこに見えるのは人工衛星です」
「やばっ高所恐怖症だったら気絶するレベルだよ。ねえラミル」
俺はラミルに話しかける。
「ラミル。何してるの…… 気絶してない?」
ラミルは完全に気絶していた。
「ここからは降下です」
キールは勢いよく真下に下降していく。
「これも相当やばいな」
俺はあまりの迫力にラミルと同様に気絶しそうになっていた。
「やっと地上が見えてきたよ。あれが大陸か?やっぱり大きいな」
俺は景色を見ていた。
そしてキールは海に着水する。
「みなさんいかがだったでしょうか。自然の偉大さをお伝え出来ていたのなら光栄です。改めましてお越しいただきありがとうございました」
そうアナウンスが終了の合図を告げ、俺達はプールに戻る。
「ラミル起きてよ。ラミル」
俺は気絶しているラミルを起こす。
「あれ…… もう終わった? 全然覚えてない」
ラミルはキョトンとした顔で俺の顔を見る。
「本当に勿体無いな。すごい景色だったよ」
俺は説明する。
「そうなんだ。僕には少し刺激が強すぎたみたいだ。さあ、みんなと合流しよう」
そうして俺達は水族館の出入り口付近に行く。
「ウニヤ大丈夫か?」
カルベロスがウニヤに言う。
「たぶんね。さっきのはやばかった」
ウニヤは疲れた様子で歩く。
「ウニヤが怖がるなんて意外だよ」
カルベロスは少し笑う。
「仕方ないじゃん。あんなに上昇するとは思わないし。それに…… なんか思い出そうとすると足が震えてきた」
ウニヤは足をすくめて歩く。
「ウニヤも大変そうだな」
俺はその様子を見て微笑ましく思う。
「よしっみんな集まったようだな」
ラミルが言う。
「さて観光はもう終わり。早速次の仕事だ。そのためには一旦村に戻る。話はそこでしよう」
ラミルはそう言って先に水族館を出る。
「さらばイエローブリッジ。良い思い出になったよ」
俺はそう思いながらイエローブリッジを後にする。
「ここからならいけます」
カルベロスが言う。
「うん。じゃあ今回もよろしくカルベロス」
「はいっ、分かりましたラミル様。ギャラクシーキャット集合」
そうして俺達はいつも通りカルベロス達に乗って村に帰るのだった。
思ったより観光が長くなりました。
もし面白いと思ったり、続きが読みたいと思ったら評価などお願いします。




