支配者とは
「あそこに出口みたいなのがあるよ」
ウニヤが指す方向に光が差している。
「やっと出た。ここって結構、開けている場所だったんだな」
俺は街の広場みたいな所を見て思う。
「イエローブリッジの長がいるところはあの上だ。あそこには乗り物で行けるらしい」
ラミルが言う。
「あんな高い場所にあるのか。東京スカイツリーよりも高いかもしれないぞ」
俺は首が痛くなるくらいまで上を見上げる。
「東京スカイツリーって、なんだ? とりあえず上へ行く乗り物が来たみたいだから早速行こう」
そうして俺達は一台の箱型のケーブルカーに乗る。
「うわーー ここからの眺めは最高だな。絶景だ」
「確かにね。しかし、魔王カラミティには驚愕だよ。こんな大規模な都市を建設していたなんて」
ラミルが街の景色を眺めながら言う。
「そんなに落ち込むなってラミル。俺達の村だってもしかしたらここより大きくなるかもしれないよ」
俺はラミルを少し元気づけるように言う。
「そうだね。元はゴブリン達の村だったのが、今はだんだんと人も増えて活気付いて来ている。僕達も頑張らないと」
「そうだね。ねえ、ラミル。あそこにあるのは何?」
俺は街の中にある巨大な建物を指差す。
「あれは水族館みたいなやつかな。中にはこの世界の色々な生き物が展示されている。これが終わったら、一回行ってみよう」
「分かった。楽しみだな」
そうして俺とラミルがそんな話をしている間に目的地に着く。
「やっぱり高いな。こんな所にも街があるんなんて、ここは立派な観光名所だよ」
「カルさん、ここすごい高い場所だね」
ウニヤがカルベロスの腕にしがみつく。
「ウニヤって、高い所苦手なのか?」
カルベロスが言う。
「ちょっとね。でもここはだいぶ高い位置にあると思うから、結構怖い」
ウニヤが足を震わせながら言う。
「ウニヤ、もう少し頑張ってくれ」
ラミルが言う。
「ほらっ、わしがおんぶしてやるから」
カルベロスはウニヤを背中に乗せる。
「すっかり親子みたいだな」
俺はその様子を見て言う。
「じゃあ行こうか」
そうラミルが言って俺達は街の中を進む。
そして一つの鉄格子の門に着く。
「ここなのか? 誰もいない感じがするけど……」
俺は異様な雰囲気を感じ取る。
そして門をくぐり暗い通路に入る。
「ここのはず。たぶんこの通路を抜けた先に大広間があるはずだ」
そうして俺達は長い通路を進んでいく。
「ガタンっ」
ラミルが重そうな扉を開ける。
「ここだ。みんな注意して」
俺達は中に入る。
「うわーー」
誰かの声が大広間に響き渡る。
「あれ? あの人って誰だ?」
「あいつがおそらくギャインだ。なんか、めちゃくちゃ驚いているみたいだけど」
ラミルはそう言ってそのまま進む。
「おいっギャイン。話がある」
ラミルが言う。
「あっ、あのーーなんかしましたか?」
ギャインはとぼける。
「お前が、僕達への攻撃を計画したんだろう。それで本題だが、僕達は魔王カラミティの討伐者として話しに来たんだ」
ラミルは言う。
「分かった。攻撃をした事は謝るよ。痛いのはやめてくれ」
ギャインは情けなく言う。
「別に、痛い事をするつもりは無いが、こちらの要求を呑んでもらう。これよりイエローブリッジは僕達の支配下に入ると言う事だ」
「ええ、じゃあ私はどうなるのですか?」
ギャインは聞く。
「君には引き続き、この地の長として働いてもらう」
ラミルは意外な提案をする。
「私はこのままでいいのですか!?」
ギャインは驚いたような表情をする。
「もちろん。だって君は本当は言われてやっているだけなんだろう。そして、実質的に支配しているのはミラン。間違いないな」
ラミルは言う。
「そこまで見通していたとは、どうやら私ではあなたに抵抗は出来ないようです。分かりました。本当の事を話しましょう」
ギャインはさっきの様子とは全く違った感じで話し出す。
「私は、魔王カラミティ様に助けられた一人であります。あの時は、みんな本当の事を知らずに、のびのびと暮らしていました。
そんな時、魔王カラミティ様からミランが来るとの連絡を受けました。私はその時、ちょっとした違和感を感じていたのですが、そのままミランを受け入れる事にしました。
そして、ミランが来てからは大忙しで、その間、ある事に気づいたのです。私の部下は一人も居ないと、みんなミランの方について行ってしまっていたのです」
ギャインは今までの事を話す。
「それでどんどん支配権はミランに移って行ったというのか」
ラミルは言う。
「そうなんです。しかし、そんな中でも私に味方してくれる者も出て来ました。それがタークスです。彼はミランの素性に探りを入れていました」
「まさか、あのタークスが!」
シンエイは驚いて言う。
「ミランはその企みに気づいていたようで、今回あなたの部下の方と戦闘をさせたということです」
「では、今までの出来事はミランの作戦の内ということか」
ラミルは表情を暗くして言う。
「まあ、そう言うことになります。三人の長老も私が出した事になっていますが、実際はミランが提案した事なのです」
ギャインは言う。
「でも、どうしてそんなコソコソとやっていたのだろう?」
ラミルは疑問に思っていた。
「それは簡単な事で、私のように表に出れば動きが取りずらくなります」
ギャインは確信を持った表情で言う。
「なるほど、僕達もまんまとその作戦にハマっていたようだな」
「もう一つ聞きたい事があるのですが、私はこれからどのように振る舞えば良いのでしょう?」
ギャインが純粋にラミルに聞く。
「とりあえず、今までの通り街の運営をして欲しい。こちらからも支援は少しだがしようと思う。後は、シンエイを守りとして少しの間だがここに居させてもらう」
「分かりました。こちらとしてはそうして頂けると幸いです。私一人では、いつミランが襲ってくるか分からない。これからもよろしくお願いします」
ギャインは丁寧に言う。
「うん。大丈夫だよ、じゃあ僕達はそろそろ戻る事にするよ」
そう言って俺達は帰ろうとする。
「ああ、そうだった。折角このイエローブリッジに来たのなら、西の都水族館を是非見に行ってみてください。色々なイベントもあるので旅の土産屋話としても良いかと思います」
ギャインが薦めてくる。
「それってさっき見えた所だよね」
ウニヤが言う。
「そうだウニヤ。その水族館なら今から行こうかと思っていたんだ」
ラミルはギャインに言う。
「そうでしたか。ではごゆっくり楽しんで行ってください」
そうして俺達はギャインと別れ、西方面のケーブルカーに乗り、水族館に行く。
数分後俺達は、水族館の目の前に着く。
「ここも大きいな。イオンモールぐらいの大きさだよ」
俺は外観を見て真っ先に思う。
「本当にここって何でも大きいよね」
ラミルは言う。
「じゃあ早速行こう」
「ちょっと待ってよウニヤ」
ラミルがウニヤを追いかける。
そうして俺達はウニヤの後に続いて水族館に入るのだった。
「なんか迷いそうな場所だ」
俺は各展示を指し示す何個もの看板を見て思う。
「じゃあ、ここでみんな自由行動だ。友達と一緒に行ってもいいし、デートでもいいし」
ラミルは言う。
そしてみんなは多少ザワつきながらもある程度のグループになってそれぞれ行動する。
「それじゃあキク。行こう。こっちがいいかもね」
ラミルが指したのは植物エリアだった。
俺とラミルは二人で手を繋いで道を進んでいく。
「なんかこうしてキクと二人でいると仕事の事なんかすっかり忘れちゃう」
ラミルが言う。
「俺もだ。それにラミルって本当に人格が変わったみたいになるよね。さっきまであんなにかっこよく振舞っていたのに、今はすごい可愛い」
俺はラミルを見つめて言う。
「やだなぁキク。照れるじゃん。ほらっ、あそこに広い空間があるから行ってみようよ」
そうして俺とラミルとの束の間の水族館デートが始まるのだった。
書いてる途中で悲しくなって来ました。




