戦闘の狼煙
「シンエイとこうやって話した事ないからなんか新鮮な感じがする」
俺はシンエイと一緒に朝日を眺めながら散歩していた。
「キク様とこのような機会があるとは、私は本当に幸せものです」
シンエイが少し感動した様子で言う。
「そんなに言われるとなんか恥ずかしいな。でも、そうだよな。突然会社の幹部の人から一緒に話そうなんて言われたら俺でも緊張するし」
俺はなんとなく自分に置き換えて考えてみる。
「キク様はどうしてラミル様と一緒にいる事になったのですか?」
シンエイが素朴な疑問を問いかけてくる。
「そんな大した事じゃないよ。俺は偶然ラミルと会っただけ。その時は全然何も分からない状態だったんだ。でも、ラミルがしっかりと教えてくれた。その後、レピタルロードに出会って、ラミルと一緒に協力してなんとか倒した。そこからだよ、俺達が深い絆で結ばれたのは」
俺はすっかり自分の話に夢中になって話す。太陽はさっきよりも高い位置にある。
「なるほど、そのような経緯でお二人は出会ったのですね」
シンエイは大きく頷く。
「シンエイは今まで、どういう状況だったんだ? 結構気になる」
俺は聞く。
「私は、コマチ様達の村で幼少期から暮らしていました。その頃はまだ、今のようにこんなにも混乱している世界ではありませんでした。家族は大勢いて、衣食住も困らない。でも、いつの間にかその平穏な日常は崩れ去りました。
それが、バフーマ大戦です。人間達の戦いに私達は容赦無く巻き込まれました。家族は離れ離れにされ、そして大戦後は元の人数の三分の一くらいしか村にいませんでした。もちろんその他の者達がどうだったかは容易に想像がつくと思います
そしてさらに追い討ちをかけるように魔王カラミティの誕生。
私達の生活は一瞬にして変わってしまったのです……」
シンエイは長々と語る。
「そんな辛い過去があったなんて」
俺は爽やかな風を感じつつも、悲しい感情が込み上げて来る。
「私達はそこで強くならなければいけないと痛感したのです。
そして刀進組を結成し、今に至ります」
シンエイは真っ直ぐ前を向いていた。
昇り始めた太陽はそのシンエイの顔を際立たせる。
「しかし、今こうしてまた希望が見出せる環境があります。私達はその事に感謝してもしきれません」
シンエイの表情が和らぐ。
「ありがとうシンエイ、話を聞かせてくれて。おかげで俺もなんか頑張ろうという気持ちになったよ。それじゃあもうそろそろ帰ろう」
俺達は建物に戻る。
「みんなおはよう」
ラミルがそう言いながら、準備を進めていた。
「ラミル様。おはようございます」
シンエイが一目散にラミルに挨拶をする。
「おお、シンエイ。それで偵察はどうだった」
「概ね、問題無いと考えられます。道中、相手の使者と一戦交えたのですが、実力は言うまでも無いです。その者には伝言を頼んであるので、話も有利に進めることができると思います」
シンエイが報告する。
「分かった。ありがとうシンエイ。それじゃあみんな!そろそろ出発だ」
そうして俺達は再びイエローブリッジに向かう。
その一方で、イエローブリッジ内は騒然としていた。
「ギャイン様。お話があります」
ミランがギャインのいる部屋の前で言う。
「おおミランか。入れ」
そうしてミランは部屋の中へ入る。
「それで、話とはなんだ?」
ギャインは聞く。
「はい! 先ほどタークスから、ラミルという魔物がこちらへ向かってきているという報告がありました。しかし、タークスは相手の使いに攻撃を受けた模様。これは、宣戦布告と捉えても不自然ではありません」
「ラミルか…… 遂に来たか。我らの因縁の相手。相手から出向いて来るとは、なんというタイミングなんだ」
ギャインは復讐心を一気に高める。
「ミランよ、存分に相手をしてやりなさい。このイエローブリッジの戦力を総動員してラミルを倒すのだ!」
ギャインはミランに命令をする。
「分かりました。私も最初からそのつもりです。今、もうすでに体がウズウズします。では、私はこれで」
ミランは足早に準備に向かう。
「ヨウシ、ソウシ、トウシ、お前達も頼んだぞ。存分に暴れて来い」
ギャインがそういうと、突然どこからともなく三人の長老みたいなのが現れる。
「分かりました。ギャイン様、わしら三人の力にかかればどんな敵も怖くはありません」
「ササっ」
三人の長老はそう言って姿を消す。
「そろそろか待ってろラミルよ。イエローブリッジのために!」
そうして戦いの火蓋は切られているのであった。
そして俺達はもう少しでイエローブリッジに着くという所まで来ていた。
「え! でが過ぎだろ。なんだこの大きさは」
俺はイエローブリッジの光景を見て目を見開く。
そこには、まさにイエローブリッジの名の如く。
山と山の間の巨大な橋みたいなのがあった。
「それに一つ一つが家だぞ、中には教会もあるし、一体どうなっているんだ?」
イエローブリッジを構成しているのは家や教会などのごく普通の建物だった。
そしてイエローブリッジの下にまで住宅街が広がっている。
「魔王カラミティはここまで整備していたのか。正直この僕も驚きだ」
ラミルも同様に驚く。
「どうやらあそこが入り口のようです」
コマチが指す方向には何段もの続く階段の先に門があった。
「この階段を降りるのは大変そうだな」
俺はそう思いつつも階段を降りていく。
そうして次第に街の風景がはっきりと見えて来る。
その都度、改めてイエローブリッジの大きさに圧倒されていた。
その後俺達はやっとで門に着き、街の中へ入る。
「ミラン様、どうやら奴らは今、街の中に入ったようです」
「遂にか、分かった。とりあえず第一闘技場に誘導しろ」
「分かりました」
ミランは着実に作戦を遂行していく。
「おやみなさん。見慣れない顔ですね。どちらから来られたのですか?」
一人の案内役みたいな男が近寄って来る。
「ちょっと観光に来たんです」
ラミルは誤魔化すように言う。
「そうでしたか。では私が案内差し上げましょう。観光にお勧めなのはこちらですよ」
俺達はその男に促されるままついて行く。
「シンエイ、話は通していたんじゃないのか?」
ラミルはこっそりと言う。
「そのはずなのですがね、まあ、いざ戦闘となっても、相手の戦力は懸念するほどではないでしょうから」
シンエイは言う。
「それは最悪の場合だけどな。みんな!気を引き締めていくぞ」
俺達はそのまま進んでいく。
「では、こちらで少々お待ちください」
男はそう言ってどこかへ行く。
「なんなんだ?ここ。随分と広い空間だな。それに少し薄暗いし……」
俺がそう思っていると、急に正面に一つの光が出現する。
「まさか! 罠だ! みんな戦闘体制に入れ!」
ラミルの呼びかけで全員が戦闘体制に入る。
「よくぞお越しいただきました。ラミル様」
ミランが近づいて来る。
「お話はうちの部下から聞いております。ですが、その時にそちらの使者の方から攻撃を受けたみたいで、その事はこちらとしても到底、見逃す事の出来ないものと考えております」
ミランは言う。
「嘘を言ってもらうと困りますね。最初に攻撃してきたのはそちらでしょう」
シンエイが言う。
「そんな証拠どこにも無いでしょう」
ミランは嘲笑うかの如く言う。
「都合のいいやつだ。ずっと監視してたくせに。ラミル様、あいつの言葉は信用してはいけません」
「分かったシンエイ。君を信じるよ。それでミランさんよ、どうやらそちらの言い分も根拠に欠けるようですが」
ラミルは反論する。
「そうですね。まあこんなのは茶番です。では発動! ブライトダウン!」
急に辺りが明るくなる。
「これはあなた達、魔物を弱体化させる装置。あなた達はもう何も出来ない。袋の鼠です」
ミランは見下すような笑みを浮かべるのだった。
久しぶりのしっかりとした戦闘シーンです。




