ある晩の事
「キクも早く休みなよ。たぶん今回は結構疲れている事だろう」
ラミルが優しく言う。
「そうだな……」
俺は窓の外の光を見つめる。
「どうした? キク、なんか面白い星でもあった?」
ラミルが少し重くなった雰囲気を晴らそうとする。
「なんかさ、こうしてラミルと話せているのがすごい嬉しいんだ。それに…… なんか思い出すと恥ずかしい」
俺は少しうつむきながら言う。
「なんで恥ずかしいの? キクは最大限の事をしてくれた。そのことは感謝してもしきれないよ。僕のこの体があるのはキクのおかげだよ」
ラミルが言う。
「あの時は本当にやばいと思ったよ。でもそのせいでラミルが目を覚ました時、つい抱きしめたくなって、それでその事を思い出したらなんか恥ずかしくて…… それに今みたいな状況だとなおさら」
俺は自分の今の気持ちを言う。
「ああ、あの時か。確かに、すごい力だったよキク。でもね、あの時僕も正直嬉しかった。キクが僕の事をこんなにも思ってくれると分かったからね」
ラミルは正面を向いて言う。
「そうだったんだ。なんかそれだと俺達、恋人みたいな感じするね」
俺は、あまり普段言わないような事を雰囲気に乗って言った。
「恋人? どういう種族なんだ?」
ラミルは突然突拍子も無い事を言う。
「そっか知らないのか。まあ、簡単に言うと友達よりも親しい関係みたいなものかな」
俺は少しホッとしたような気持ちで言う。
「へぇーー なんか不思議な関係だね。もしかして、それって好きって言うことかな?」
ラミルは少しからかうように言う。
「まあ、そういう風に捉える人もいるかな」
俺は咄嗟に絶対にそんな訳ない事を言う。
「キクって、本当におもしろいね。騙してごめん。恋人の意味は僕でも知ってるよ」
「え! じゃあ……」
俺はすぐに赤面する。
「そうだな、恋人になっちゃう?」
ラミルは俺に近づいて言う。
「でも、ラミルは性別が無いんだろ。だから、なんか変な感じにならないのか?」
俺は少し冷静を取り戻して言う。
「性別が無いって言うのは半分本当っていう感じかな。正確には性別はあるけど、その概念は限り無く薄いんだ」
「そうなの! じゃあラミルは女の子なの?」
俺はドキドキと好奇心が混ざった気持ちで聞く。
「僕はもちろん…… 女の子だよ」
「やっぱり、そんな事だろうと思ったよ」
俺は表では冷静を取り繕いつつも胸の鼓動が早くなっていく。
「でも、さっき言ったみたいに僕が女の子だからっていう影響はあんまり無いかな。それで、どうする? 恋人になってみる?」
ラミルは再び距離を詰めてくる。
「そんな急に言われても……」
俺の胸の鼓動はますます早くなっていく。
「ドサっ」
ラミルは急に俺に抱きついて来る。
「ほら、キクの心臓の音は恋人になりたいって言ってるよ」
ラミルは俺の胸に耳を当てて言う。
「これは…… まずい、俺の何かが外れそうだ」
ラミルの体の輪郭が服越しでもしっかりと伝わってくる。俺はラミルを少しずつ抱きしめる。
そしてさらに俺とラミルの接触する部分は広くなっていく。
「ああー、幸せだ。俺はなんて幸せなんだ」
俺は頭の中でそんな事をずっとリピートしていた。
「キクの体、どんどん熱くなってるね。まるで暖房みたい」
ラミルが言う。
「ラミルもすごく柔らかい。まるでクッションみたいだよ」
俺もラミルに負けじと言う。
「何それ、馬鹿にしてるの?」
ラミルは少し笑う。
「ねえ、キク、恋人って、あれするんでしょ?」
ラミルは突然言い出す。
「あれって、なに?」
俺は様々な事が頭の中に思い浮かぶ。
そして体はラミルをもっと俺に近づけようとして、自然に腕に力が入る。
「僕に言わせるの? 仕方ないな、あれだよ。唇と唇を合わせるやつ」
ラミルは少し恥じらいながら言う。
「え、それって……」
俺が言おうとした瞬間、俺の唇に柔らかい感触が走る。
俺はそのまま頭が真っ白になる。その後どのくらいそのままだったのだろう。
俺はそんな事を考えている余裕も無いくらいラミルとのキスに夢中だった。
「ごめんキク、こんな突然に……」
ラミルは言う。
「ありがとうラミル」
俺はただそれだけを言ってラミルの頭を撫でる。
ラミルはただ単に俺の愛情を受け止める。
「じゃあキク、僕はそろそろ帰るよ、おやすみ」
そうしてラミルは俺の腕から離れ部屋を後にする。
「はあー 本当にやばかった。俺、あのままどっかに行っちゃうと思ったよ」
俺は独り言を言う。
俺の胸の鼓動はまだ速いままだった。
そして翌朝、俺は外の村のみんなの声で目を覚ました。
眠い目を擦りながら俺は外に出る。
「キク! 遅いよ。今ちょうど迎えに来たところなんだ」
ラミルが俺の前に出て来る。
その瞬間、俺は昨日の事を思い出して、急に胸の鼓動が速くなる。
「あっ、ありがとう。俺もすぐに準備して行くよ」
俺は何となくぎこちない返事をする。
「やだなぁ、そんな寝ぼけて」
ラミルが言う。
「そういえば、次は何をする予定なんだ?」
俺は気持ちを切り替えるために別の話題を話す。
「前に言った旧魔王領の魔物達に会いに行くというのだよ」
ラミルは親切に説明してくれた。
「ごめん、昨日聞いたばかりなのに……」
「全然大丈夫。昨日、あんな事したんだもん。そりゃあ、忘れるよ。じゃあもうすぐ行くから準備よろしくね」
そう言ってラミルはどこかへ行く。
「全然ドキドキが止まらないよ。ラミルの顔を見る度に思い出して…… いや、ダメだ。やるべき事はしっかりやる」
俺は自分に気合いを入れ直す。
そんな事を思っているうちにラミルはというと。
「昨日、あんなことして僕の事を嫌いにならないかな? あの時、キクが抱きしめてくれた感触は忘れられない。こんな気持ち初めてだ……」
ラミルは大通りを歩きながら空を見上げる。
「さあ、次の仕事もしっかりやらないとね」
ラミルは気持ちを入れ直す。
そしてラミルと俺はほぼ同時に集合場所に着く。
「今回はまあまあの人数で行くんだな」
俺は久しぶりの光景を目にする。
「今回行く場所は旧魔王領のイエローブリッジという場所で、そこには様々な種類の魔物達が暮らしているみたいなんだ。だから、こっちも大勢で行った方が対応しやすいと思ってね。カルベロス、ウニヤ、コマチ、イワタ、マイル、そして各種族五名ほどの部下達も連れて来てもらっている」
ラミルはメンバー紹介をする
「ミムラは珍しく来ないのか」
「村の防衛もしてもらわなきゃいけないからね。いくら魔王が居なくなったと言ってもまだどんな危険が潜んでいるかわからない。今、僕達の中でその重役を任せられるのはミムラしか居ないと思ったんだ」
「そうだね、ミムラはすごく強いから安心できる」
俺はラミルと目を合わせて一緒に笑う。
「そして、今日は刀進組のシンエイに先に偵察に行ってもらっている。シンエイとは道中で合流予定だ」
ラミルは淡々と説明する。
「こんな大人数で行くなんてなんか楽しみだね。カルさんも一緒だし」
ウニヤが子どもみたいにはしゃぐ。
「そうだなウニヤ、でも今回は単なるピクニックじゃ無いんだ。使節団みたいなもので、相手との交渉もある」
「我らもできるだけ武力衝突は避けたい。でも、いざという時はその覚悟はあります」
コマチが言う。
「コマチの言う通り、最悪の場合は武力衝突もあり得る。みんなも気を引き締めて行こう。それでは、ラミル使節団出発!」
そうして俺達は魔王戦以来の大人数で村を出る。
「今思ったけど、魔法とかで動く乗り物とかあったらいいのにね」
俺は何となく思った事を言う。
「乗り物か、確かに考えた事が無かった。今度、試してみるか」
ラミルが言う。
「試してみるって、もうあるの!」
「前に人間の国にあるって聞いてね、それがどこかはわからないけど……」
「その話なら聞いたことがありますね。アスアという超巨大国家が所有しているみたいです」
マイルが言う。
「じゃあ、これが終わったら、次はみんなでアスアに旅行か」
そうして俺達はイエローブリッジの道中を会話で楽しむのだった。
書いてる途中に止まらなくなってしまいました。結構際どいかもしれません。




