街の進捗
「ねえ、魔王になるのはどんなことが必要なんだ?」
俺はラミルに聞く。
「ゴブリン村の南側の地域に召喚の台座がどこかにあるんだ。それを起動して、その時召喚されるオメガドラゴンを倒す必要があるんだが、そいつは正直言ってめちゃくちゃ強いんだ。
あのカラミティは実際は倒していないらしいという噂までもある」
ラミルが淡々と説明する。
「え! あのカラミティでも倒していないの! じゃあどうやって魔王になったんだ?」
「その方法はただ一つ、実際に支配することなんだ。そうすればオメガドラゴンを倒さずとも魔王にはなれる。話を聞いて分かると思うがかなり強引な方法だ」
ラミルの話を聞いて俺はやっぱりなと思った。
「今のラミルはそんな強引な事できるわけないもんな。それにしてもなんかワクワクしてきた。
俺達は白兎のおかげで前よりも強くなった。だからどのくらい強くなったかを調べてくてさ。ラミルもそう思わない?」
俺はラミルにそう言うが、ラミルの表情はそのままであった。
「そう簡単にいかないのだよキク。オメガドラゴンはただ単にパワーが桁違いなんだ。技術やテクニックではない、力と力のぶつかり合いだ」
ラミルの言葉で俺はさっきの勢いを無くす。
「でもな、そんな事言っても、僕達はオメガドラゴンを倒しにいかなきゃならないし、キクみたいな自信も多少は必要だと思うよ」
ラミルは俺の反応で察したのか、少し俺の意見を持ち上げようとする。
「そうだ、行く前に訓練所を見ていかないか?」
ラミルがそう言って俺とラミルは最近再開した訓練所に行く。
「ここが訓練所だ。ゴブリン村も少しずつ大きくなってきたから、ここを第三区画、オータムストリートという名前にしたんだ。どう? 結構良いネーミングでしょ」
ラミルが誇らしげに俺の顔を見つめる。
「確かに、それにしてもこんな大きくなってたんだな。それも魔物や人とか、色んな種族も見るようになってきた」
「僕はあまりわからないが、うちの訓練所は結構有名みたいなんだ。だから、各地からその噂を聞いて様々な人達が来ているらしい」
ラミルは訓練所の様子を見ながらいう。
「そうだと思ったよ。見慣れない人達ばっかりだからね。あれ? あの魔物ってベナエル? なんか見た感じ苦戦してそうだな」
俺はちょうどベナエルが実戦練習をしてる姿を見て思う。
「じゃあ見に行ってみる? ちょうど挨拶したいところだったし」
そして俺はラミルに促されるまま、ベナエルがいるところに行く。
「おお、結構本格的な練習だな。近くで見ると迫力がある。やあ、お元気ですか?ベナエルさん?」
俺はぎこちない挨拶をする。
「呼び方はベナエルで良いですよ。私もすっかりこの街の一員です。最初は三魔獣を倒すって意気込んでいましたが、その前段階である訓練でこの有様です。私の自惚れいい加減さには本当にがっかりです。自分のことですが……」
ベナエルは少し苦笑いをして言う。
「最初はそんなもん。訓練を積めば誰でも三魔獣くらい倒せるようになりますよ」
ラミルが俺とベナエルの会話に割って入る。
「ありがとうございますラミルさん。いやラミル様。私には敬語でなくても大丈夫ですよ」
ベナエルは自然な表情でラミルを見る。
「そうですね。分かった。じゃあベナエル。君を今から特待生に指名するよ。これは、別に親しいからとかではなくて、君の訓練への姿勢を評価してのことだ。コマチ達から君の訓練への真剣に向かう姿はいつも聞いてるからね」
ラミルの言葉をベナエルは真剣に聞いている。
「本当にありがとうございますラミル様。私はさらに強くなれるように頑張ります。私はまだまだこの中では中くらいです。まずは、この訓練所内でトップを目指したいと思います」
ベナエルは目を輝かせて言う。
「それは楽しみだ。そうだ、君は早く国に帰らなきゃ行けないとか、何か制限はあるのか?」
ラミルは聞く。
「そうですね、あまり制限はないですね。私は修行兼偵察という感じなんです。そんな早く帰ってしまったら、むしろ怒られてしまいます」
ベナエルはラミルの心配を吹き飛ばすかのように言う。
「じゃあ僕達はそろそろ次の準備をするから帰るよ。これからも期待してるから」
「俺もラミルと同じく応援してるから」
俺とラミルはベナエルに熱い言葉をかける。
「ここまで言ってもらえるとは……。私もその期待を裏切らないように全力でいきます。そして、いつかラミル様を超えるところまで」
ベナエルはそう言った瞬間、口を塞ぐような仕草をする。
「どうかしたのか?」
ラミルは疑問に思って聞く。
「ラミル様に失礼を言ってすいません。ついラミル様を超えたいなどと口走ってしまいました」
ベナエルは慌てた様子で言う。
「え!そんな事気にしなくていいって、むしろ超えてもらった方が助かるよ、俺もいつ何時どうなるか分からない……」
ラミルの表情が突然暗くなる。
「ごめん取り乱しちゃった。じゃあ本当にそろそろ帰らないと」
そして俺とラミルは準備をしに戻る。
「出発は明日の朝だ。今回は白兎様の時のメンバーに加えてカルベロスを連れて行こうと思う」
「分かった。でもカルベロスはウニヤの世話とかあるんじゃ……」
俺はふと気になったことを聞く。
「ウニヤにはなんとか説得するよ」
「それならいいけど……」
俺は少し不安があったが、ラミルの自信満々な表情で気にしない事にした。
そして翌朝の事、俺は集合場所であったゴブリン村の南の方にある鍛冶屋の前に来た。
「ミムラとラミルはいるけど、カルベロスはまだか」
そう思っていると
「すいません。遅くなりました」
カルベロスが慌てた様子で来る。
「あのカルベロスが遅れるなんて珍しいな。あれ? もう一人いるけどまさか……」
カルベロスの後ろにはもちろんウニヤが居た。
「ラミル、本当に説得したのか? ウニヤもちゃっかり来たけど」
俺はラミルの方を見て言う。
「ごめんキク、やっぱりキクの言う通りだ。何回も説得を試みたんだけどダメだった」
ラミルは誤魔化すように言う。
「私はカルさんと一緒じゃなきゃ心配なの。それにオメガドラゴンなんて私にはへっちゃらだよ」
ウニヤは俺達の気持ちなんか気にも留めないような口振りで言う。
「それは頼もしい限りだ。それじゃあ、そろそろ出発だ」
そして俺達はたぶんこの付近の地域で一番力を持っているであろうメンバーでオメガドラゴンを倒しにむかう。
そして俺達は長い道のりを歩いていく。
「ねえカルさん。そろそろ台座、近くになって来たよ」
ウニヤが突然話し出す。
「え、ウニヤ、君は台座のある場所がわかるのか?」
ラミルは驚いたような表情で言う。
「もちろんラミル様。台座の匂いがプンプンするよ」
ウニヤが楽しそうに言う。
「じゃあ道案内お願いできる?」
「いいよ、任せて。カルさんもお疲れみたいだし」
「たぶん疲れてるのはウニヤのせいだと思うけど……」
俺はそんなことを思ったが、口に出そうとは思わなかった。
そして俺達はウニヤの道案内で台座へ一直線に行く。
「さあ、ここだよ」
ウニヤが止まった場所には大きな水溜りがあった。その中心には小さな島が浮いていた。
そして俺達は台座に近づき、そこに書かれている文字を読む。
「挑戦の条件は賢者より認定を受けた者に限る。開始はここに体の一部をつけること」
台座にはそう書いてあった。
それを見てラミルは手をかざす。
そうすると、突然地面が揺れ始め、俺達は台座ごと地下に下がって行く。
そして異様な雰囲気の地下空洞に着く。
「ここがオメガドラゴンがいる場所か」
ラミルが目の前にある大きな扉を見て言う。
「へえーー 私も初めて来たな。なんか楽しそう。カルさんもそう思うでしょ」
ウニヤの問いかけにカルベロスはただ相槌を打つ。
「この先なんだな。いくぞみんな」
そして俺達は全員で大きな扉をゆっくりと開けるのだった。
次回も楽しみにしていただけると幸いです。




