ラミル•イン•ワンダーランド
「ダメだ。全然出口が見つからない。どうすれば良いんだ」
俺はなかなか出口が見つからずに途方に暮れていた。
「キク様。ホワイトマグナムの結界の解析が完了しました。これよりホワイトマグナムが使用可能となります」
ウォータープロテクトが言う。
「え! 出来ないって話じゃなかった? まあいいや、これで焼き尽くす! ホワイトマグナム!」
俺は技を発動し辺り一面を焼き尽くす。
「よし、こんなもんか。あれ? 何にもない。せっかく見通しが良くなったのに、見えるのは真っ直ぐに続く平原だけだ」
俺は今まで出口が全然見つからなかった理由が分かった。それはそもそも出口など存在しないからだ。
「これは何かしないと出口が出現しないパターンだな。でも、それが何か分からないし、何かを調べる手段も無い」
俺は自分自身の無力さに少し憤りを感じていた。
「本当に、俺って力だけあっても、何もできないよな。はあーー」
俺はため息を吐きながら空を見上げる。
「え、なんか小さいドアノブみたいなのが空中にあるんだけど……」
俺は恐る恐るそのドアノブに手をかけて自分の側に引く。
「開いたぞ、この先には何があるんだ?」
そう思ったのと同時に俺はすごい力で扉の中に引き込まれる。
俺はそのまま重力がおかしくなった世界に落ちていく。
「バタンっ」
俺は地面に衝突する。
「いてて、本当になんなんだ。あれ? ここって最初に来た所だよな」
俺は白兎に出会った石の前にいた。
「さっきとは違って草が揺れる音ですら鮮明に聞こえてくる」
氷の森はさっきとは違って不気味な雰囲気ではなく、ただ単に自然豊かな森へと変わっていた。
「とりあえず脱出ってわけか。俺の真上にあったなんて、まさに灯台もと暗しと言うやつだな」
俺は脱出できた安堵で大きく尻餅をつく。
そうしてラミルはというと。
「なんだここは? こんな大きい木あったか?」
ラミルの前には巨大な大木があった。そしてその木には一つのピンクの扉があった。
「どう見ても怪しい扉だ。入っても良いものか。でもそんなこと考えていても何も進まない。よし、入ろう」
ラミルは意を決してそっと扉を開ける。
そしてそこには大木の中とは思えない近代的な部屋が広がっていた。
部屋には窓が付いていて、その窓からは大海原が見える。
「これが試練か。あそこにあるのはクッキー?」
ラミルは机の上に置かれた一枚のクッキーを手に取る。
「これはいたって普通のクッキーだ。でもなんでこんな所に……」
ラミルはクッキーを机に置こうとする。
「ん? このクッキー、こんな大きかったか? さっきは机のほんの小さい点だったのに、今の大きさは机の大きさの三分の一くらいだ」
ラミルは不思議に思ってクッキーに顔を近づける。その途端に急にクッキーは重たくなる。
「なんだこのクッキー、急に重くなったぞ」
ラミルはあまりの重さにそのクッキーを床に落としてしまった。
「え! このクッキー大きすぎない? 机よりも大きいってどういうことだ?」
ラミルが落としたクッキーは最初の何百倍もの大きさになっていた。
ラミルはこの不可解な出来事にその場で固まる。
「キィーー」
扉が軋む音が聞こえてくる。ラミルは言葉も発する事なくその音がした方向を見る。
「あれは扉? でも小さすぎる。一体誰のための扉なんだ?」
ラミルは少し近づいて扉を見ようとする。
しかし、扉は見れば見るほど最初に見た時よりも大きくなっている。
そして扉の前につく頃にはラミルよりも扉の方が大きくなっていた。
「まさか、これは遠近法か? 僕が遠くで見ると小さく、そして近くで見ると大きくなる。そういう事だったら今までの事も納得がいく。それよりもこの扉の先が気になる」
ラミルはそっと青の扉を開ける。そしてそこには見慣れない森が広がっていた。
足元にはタイルが敷かれた道があり、それがずっと延びている。
そしてその脇には看板があった。
「パーティー会場はこちらです。ラミル様」
「なんだこれは? それにどうして僕の名前を知っているんだ?」
そう疑問に思いつつラミルは道を進んでいく。
そして一つの小屋に着く。
その小屋の前にはさっきと同じ看板があった。
「今から起きる事は、あなたの未来かもしれないし、あなたの過去かもしれません。幸運を祈ります」
看板にはそう書かれていた。
「過去かもしれないし未来かもしれない? どういうことだ。全然分からない。いや、分かろうとしてはいけない感じがする」
ラミルは奇妙な感覚に陥りながらも小屋の扉を開ける。
そこには一人の奇妙な靴を履いた男が立っていた。
「お待ちしておりましたラミル様。こちらへお掛けください」
男は丁寧にラミルを席に案内する。
「私はキットと申します。今日はラミル様に会えて光栄に思います」
男はラミルに向かって挨拶をする。
「初めまして、突然で申し訳ないのですが、ここはどんな所なんです?それに小屋の前の看板に書かれていたのは一体どういう意味ですか?」
ラミルは一気に気になっていたことを男に尋ねる。
「ここはラミル様達がいる世界と全く同じ世界です。正確に言うと、同じ時間ではありません。二千年前、五万年前。いや、もしくは一億年後かもしれません。私も実のところあまりそのことに関しては分かっていないのです。
小屋の看板もそういう意味で書きました。この世界の時間が未来なのか過去なのか、ただそれだけのことです。何も深く考える必要はありません。
それでは、料理をお出しします」
男は足早にキッチンに向かった。
「この空間は一体なんなんだ? 白兎様は僕に何の試練を与えてくださったんだ?」
ラミルがそう思っていると男がキッチンからスープを持ってくる。
「お召し上がれ。あっそうだ。一つ注意点なのですが、このスープを飲むとあなたの何かが見えます。それは誰にも感知することが出来ません。この世界のもの達、そしてこの世界以外の人達でさえ」
男はそう言って再びキッチンへ行く。
「このスープを飲むと僕の何かが分かる……」
ラミルはワクワク感と不安が入り混ざった気持ちでいた。
そしてラミルはスプーンを手に取りスープを一口飲んだ。
ラミルはその場で固まった。そして一粒の涙がラミルの目から流れ落ちる。
そしてラミルはそのスープを全て飲み干す。
「ラミル様。スープはお楽しみいただけましたか? あなたがそれをどう受け止めるかはあなたが決めることです。では、出口はあちらです」
男に言われるがままラミルは出口に向かう。
「では、お気をつけて」
男がそう言ってラミルを送り出す。
そしてラミルは最初の石の前に立っていた。
「あれ? ラミル戻ってきていたのか」
俺はラミルが急に現れたことに少し驚いたが、心配になって声をかける。
「ああ、キクも無事で良かった。それよりミムラは? まだ帰ってきていないのか」
ラミルはすぐにいつもの様子で話し始める。
「それが、まだなんだよね。助けようとしてもどうする事もできないからな」
俺達がそう思っている間にミムラは脱出する寸前だった。
「あそこの扉を貫けば良いのか。とは言っても技はどうやら使えないようだし。だが、私にはこれまでの技術がある。ここだ!」
そうしてミムラは空中にある頑丈そうな扉に一直線に刀を突き立てる。
「カンっ」扉に刀が当たる。
「くそっ、やはり簡単には突破できないか。だけどこんな所で諦めてはいられない。このままさらに力を加える」
ミムラは最大級の力を込める。
「バチっ」扉が開く。
ミムラはその勢いのままラミルと俺がいる石の前に帰ってくる。
「大丈夫か? ミムラ。大したものだ、自分の技術だけで突破するなんて」
ラミルはミムラの姿を見て感心する。
「そう言っていただけで大変嬉しく思います。ラミル様、キク様も無事で何よりです」
そうして俺達は白兎からの奇妙な試練を何とかクリアするのだった。
今回は、少しいつもと違う感じの雰囲気にしてみました。




