歓迎祭
「さあ初めは獣人族の伝統である刀によるパフォーマンスです」
コマチとイワタはいつもと違う服装をしてステージに現れる。
「イワタ、頼むな」
コマチが鋭い表情でイワタを見つめる。
「今だ!」
コマチはそう言って刀を勢いよく抜く。
その動きにイワタは一寸の迷いも狂いもなく合わせる。
「カキンーー」
甲高い音が響いた後に立て続けにその音が連続して鳴る。
「待てよ。これって刀がぶつかる音でリズムを取ってる? 歌とかなんかあるのかな?」
そう思っていると一人の獣人族が裏から現れて歌い出す。
「あまり聞いた事ない感じの音楽だな。民族っぽいて言われればそんなもんか」
そうして獣人族のパフォーマンスはそのまま終了する。
コマチ達はみんなからの歓声を浴びながらステージを降りる。
「いやーー さすがです。この独特な演奏が持つ魅力はなんとも言えません。さて次は、ギャラクシーキャット達の登場です」
そうしてぞろぞろとカルベロスとその他のギャラクシーキャット達合わせて5人が登場する。
「今日は本当に暑い日だね。今日はこの新しいお家に引っ越してきたから掃除しなくちゃねーー」
カルベロスがそう言うと、ステージには家のセットが組まれる。
「ねえ母ちゃん。この柱なんか変だよ」
子どもが言う。
「本当だ。誰かトンカチを持って来て」
「分かった」
そうしてトンカチを持ってこようとする。
「あんたこれ、トンカチじゃ無くてとんかつじゃないの!」
その場面で会場は爆笑の嵐に包まれる。
「なんかこれってコントみたいだな。それにこの構成どこかで見た事ある気がする。それにしてもカルベロスやるな。普通に面白いぞ」
俺がそう思って見ていると、カルベロス達のコントは終盤に進む。
「もおーー 本当にこの子達っていったら何も出来ないんだから」
「パキパキ」
ステージ上のセットが異様な音を出し始める。
「バコーンっ」
そしてついにセットが倒れる。
それと同時にひょうきんな音楽が流れて、ステージ上は大慌てになる。
そしてコントはそのまま終わってしまった。
「あーー なんか予想外の終わり方だな。でもちゃんとオチも付いて良かったな。それに意外と面白かったし、俺はすごい満足だった」
「さて次は、ついにラストです。今日、緊急参加のベナエルさんです」
そうしてベナエルはステージに登場する。その手には折り紙を持っていた。
「あのね、これは私の友人が体験した話なんですがね、仮にA子さんとしましょう」
ベナエルは折り紙を折りながら独特な喋り出しで話をする。
「彼女は少し変わっていましてね、なにかあるとすぐに人形を作るって言う習慣があるらしいんですよ。
それでね、ある日、彼女がある店の前を通った時なんですがね。一つの人形がふと目に入ったんです。
彼女はなんとなく妙な親近感みたいなのが湧いて、家に帰ってできる限り再現したみたいなんですよ。
そしたら、その人形の出来が今までで一番良かったらしいんですよ。
彼女はそれからずっとその人形を気に入っていたんです。そしてついにその人形に名前までつけるようになったんです。
そしてある晩、ふと妙な雰囲気を感じて窓の外見ると、そこには人形の顔のパーツが全て剥がされた頭だけが置いてあったのです」
会場の空気は一瞬にして凍りつく。
「はいっ、ということで、私がこの話をしている間に二十個のドラゴンを作りました」
ベナエルは一つずつドラゴンを器用に折っていた。
「怪談に折り紙って、不思議な組み合わせだな」
「さあ、みなさん。暑い日にちょうどいい話でしたね。改めて、急な参加でもしっかりと披露していただきありがとうございました。では、みなさん。この祭りのフィナーレである花火を準備いたします。それではお楽しみに」
そして驚きばかりの歓迎祭は終盤を迎える。
その少し後、花火がある合図が来る。
「さあ、俺が頑張って仕込んだのはどうかな」
花火が何発かあがる。
花火は上空で爆発し、何個もの光の粒が流れ星のように落ちていく。
そしてその光の粒がまるでブルーインパルスみたいな編隊飛行を始める。そして上空に文字を書き始める。
「今回の花火もすごいな。なんだあれ? (魔王討伐おめでとう!) ってなんだよ」
ラミルがそれを見て少し嬉しそうにする。
「よしっ、ラミルも喜んでくれているみたいだし良かった。最後の花火も上手くいったな」
俺は花火が大成功してほっとしていた。
「キク殿。花火の件、感謝する」
マイルが近づいて来る。
「まあな、それにしても本当に楽しい時間を過ごさせてもらったよ。俺からも感謝する」
俺とマイルがそんな話をしているとベナエルが近づいて来る。
「私からも感謝します。このような楽しい会に招待していただきありがとうございます」
ベナエルが言う。
「いえいえ、ベナエルさんのパフォーマンスも凄かったです。ではラミル様がちょうどいらっしゃるので会ってもらいましょう」
そしてマイルはベナエルを連れてラミルの所へ向かう。
「どうも初めまして私はベナエルと申します」
ベナエルが先に挨拶をする。
「初めまして、あなたが飛び入り参加した方ですよね。さっきはすごく怖かったです」
ラミルが言う。
「そう言って頂けて光栄です」
ベナエルが嬉しそうに言う。
「それでどういった事でこの村に来たのですか?」
ラミルが聞く。
「それが、私は修行の身でありまして、この付近に三魔獣を倒す訓練があると聞いて、やってみようと思い来ました」
ベナエルがこれまでの経緯を説明する。
「ああ、その事でしたか。その件で少し変更点があって、三魔獣の前に一度この村で訓練を受けてもらう事にしたんですよ。だから、すぐには三魔獣に行くことできません。これも安全のためです」
ラミルは丁寧に事情を説明する。
「分かりました。そういう事情があったのですね。私はむしろそちらの方が好都合です。あまり魔獣というのを見たことが無いので不安だったんです」
ベナエルは正直に告白する。
「そうなんですね。それでは早速明日からベナエルさんを特別枠として入ってもらいます」
「お気遣いありがとうございます」
ベナエルは深々と頭を下げる。
「宿はこちらで出しておきますから。これは出演代です」
ラミルが言う。
「本当にありがとうございます。もう頭が上がりません。では私はこれにて失礼します」
「では、私が案内しましょう」
マイルが案内役を買って出る。
「はい、お願いします」
そして俺はラミルと二人になった。
「ねえラミル。賢者って一体なんなんだ?」
俺は隙を見て聞く。
「賢者というのはこの世界の均衡を保つ手助けをしている存在だ。全世界に四人いるらしいが、僕が知るのはこの森の白兎様だけだ」
「へえーー なんか神聖な感じなのか」
「賢者は不定期だが、この世界を管理するために代理人を選ぶんだ。カルベロスが僕になって欲しいと言っていたのはその事さ。まあ、もちろん承認をもらわなくてはいけないけど」
ラミルが言う。
「そうか、ラミルも大変だな。俺はウォータープロテクトから勇者の資格を得たって言われたけど、全然どうすればいいか分からない」
「魔王を倒した影響だな。勇者になるには試練を受けて、多くの人から信頼を得なければならない。まあ、詳しいことはカーミンに聞けば分かるだろう。とりあえず休暇だ。一週間くらいだな」
ラミルは疲れた様子で言う。
「やっと長い休みだよ。何しようかなーー」
俺は休みの間のことを考えていた。
「しっかり休むように、休暇が終わったらまた忙しくなるからな。休みの間、オスムニアの図書館に行ってみたら?いい暇つぶしなると思うよ」
「確かに。ラミルはどうするの?」
「僕は情報収集かな。まだまだ色々な問題もあるし、なにより、魔王に捕まっていた魔物達のことも考えなきゃいけないからな。僕は休み無しだね」
「ラミルも無理しすぎないように。おやすみ」
そうして俺はラミルと別れこの世界に来て初めての長い休暇を満喫するのだった。
次からだんだん、冒険の話になっていきます。




