未来を託された者
「ここから少し北の砂漠方面に行ったところに魔物がたくさんいるんだ。今日の目的はそこにいるエクリプスという大きな魔獣の狩りだ。大体三体くらいで足りるかな」
マイルがそう言いながら草をかき分けて進む。
「俺はそいつを倒せば良いんだな」
「そうだ、キク殿に任せている間に私は近くで山菜を採取しているから」
そうして俺達は目的地に着く。
「あれだ、あそこに今寝ているのがエクリプスだ」
そこには、この世の生物とは思えない形をした魔獣がいた。足はタコみたいな足で、上半身はカブトムシみたいな体格をしている。
そして、一番不可解な点は、宙に浮いているということだ。
「あいつは、攻撃対象に精神攻撃を仕掛けてくるから気をつけてくれ、まあキク殿ならなんてこと無いと思うが」
そう言って、マイルは少し離れた場所に向かう。
「なんか見るからに危険そうなやつだけど、一回攻撃してみるか、ザ・ラストリゾート!」
俺の放った攻撃でエクリプスは一瞬にして吹き飛ぶ。
「まずいな、技が強すぎて、エクリプスの体自体何も残っていない。もう少し弱い技じゃ無いと駄目だよな。
そういえば今、ザ・ラストリゾートを打っても全然、衝撃波来なかったけど、なんでだ?」
そう思っていると、
「キク様、魔王を倒した際に水スキルの空間系統の技であるデスインパクトを獲得しています。今回この技を使い、ザ・ラストリゾート発動時に出る衝撃波を相殺しました。相殺する以外にも逆に強くする事も可能です」
ウォータープロテクトが説明に入る。
「いつの間にかそんな技を獲得していたのか……、あれ? あっちにも同じ奴がいるぞ。ここら辺に結構いるんだな」
そうして俺はもう一体のエクリプスがいる方向に向かう。
「せっかくの機会だし、一回精神攻撃を喰らってみようかな」
そして俺はエクリプスに近づいて軽く攻撃をする。
「来た来た、さあ、どんな感じなんだ?」
エクリプスは大きな咆哮をあげて襲ってくる。
「あれ? 急に視界が暗くなっていく。これじゃ何も見えないな」
この時、俺の視界は真っ暗闇に包まれていたようになっていた。
「報告します。他のエクリプスが攻撃を開始したようです」
「他の個体も来るのか。意外とまずいな、早くどうにかしないと。そうは言っても何も見えないし」
俺は不意の出来事に少し焦る。
「デスインパクトが有効だと考えられます」
ウォータープロテクトが提案する。
「確かに、これなら複数の相手でも対処できそうだ。発動!デスインパクト!」
そうして技を使うと辺りは一瞬にして静寂に包まれる。
そうして俺の手から放たれた衝撃波はそのまま戻ってきて俺の手の中に収まる。
「だんだんと視界が元に戻って来た。どれどれ、どのくらいの威力なんだ?」
そう思って周りを見回すと、そこには何体ものエクリプスが倒れていた。
「結構強力な技だな。こんな一瞬で倒しちゃうんなんて…… それにしてもエクリプスだけが攻撃を喰らっていて、その他の木々や動物達は何事も無かったかのような様子だ」
よく見てみると、エクリプスだけが倒れているだけで、他の者はなんら影響はなかった。
「デスインパクトは衝撃波で攻撃するのと同時に、対象以外の部分は無効化しています」
ウォータープロテクトが説明する。
「そんな器用な事もできるのか! 環境に優しい技だな。他の技は環境破壊しまくりだからなんか気乗りしなくて」
そして俺はマイルから頼まれた数を大幅に超える量を狩った。
「キク殿。お疲れ様です。どうやら、大量のエクリプスを倒したみたいだな。こっちも大体集め終わったから、そろそろ帰るか」
そうして俺とマイルが村へ帰ろうとした時だった。
「あれ?あのカマキリみたいな魔物があそこに倒れているぞ」
俺のみる先にはカマキリみたいな鎌を持った人型の魔物が倒れていた。
「おい、大丈夫か?」
俺はその魔物に近づいて声をかける。
「ああ、少し驚きすぎて腰を抜かしてしまったようです。ありがとうございます」
その魔物はゆっくりと立ち上がる。
「私はベナエルと申します。この度は助けていただきありがとうございます。さっき大きな地震みたいな衝撃が来たので、何事かと……」
ベナエルは話し出す。
「すいません。その衝撃、俺がやりました」
俺は素直に自白する。
「ああそうでしたか。それでしたら安心です。原因が分かった以上、次から気をつければ良いのですから」
そう言ってベナエルはどこかに行こうとする。
「ちょっと待ってください。あなたはなぜこちらへ?」
俺は相手を引き止めて聞く。
「いやー、実のところ私は今、修行に出ている身でして、この近くで行われている訓練があると聞いて来ました。聞くところによるとあの三魔獣を倒すルートだとか。そんなハードな訓練聞いた事ないですからね。ちょうど私の修行に良いのでは無いかと思って」
ベナエルは淡々と話す。
「コマチ達がやっているやつか。あの、一つ提案なんですけど、俺達の村に来ませんか?」
それを聞いてベナエルは驚きの表情をする。
「良いのですか! いやーありがたいです。ちょうど今、今晩泊まる場所を探していたんです。このままでは野宿になるところでした」
「それなら良かったです。それにもう一つ言うと、その訓練っていうのはうちの村が主催しているんです。だからそういう意味でもちょうど良いかなって……」
そう言うとベナエルはさらに興奮した様子になる。
「本当ですか!? それはラッキーですね、では早速行きましょう」
さっきまでの痛みはどこに消えたのか、ベナエルは軽い足取りで俺達と一緒に村へ行く。
「これが俺達の村であるゴブリン村です。最近は移住者が多くて、住居も少しずつ増えて来ています」
俺はベナエルの説明する。
その時、カリスがこちらに気づいて近寄ってくる。
「マイル様、キク様、お待ちしておりました。会場の準備は着々と進んでいます。おそれで、お願いしていた食材はありますか?」
そうカリスが言うと、マイルは何か呪文みたいなのを唱える。
「こんな感じだ」
マイルがそう言うと、さっきまで無かったエクリプスが何体も置いてあった。
「こんなに! 今日は派手に料理を振る舞えますね」
カリスが嬉しそうに言う。
「ああ、キク殿が手伝ってくれたからな」
「そうなんですね、キク様さすがです」
カリスに褒められて俺はつい照れる。
「さて、そちらのお客様はどちら様ですか?」
カリスが尋ねる。
「私はベナエルと申します。今晩泊まる場所を探していて、この村があるというのを聞いて参りました」
ベナエルは丁寧に挨拶をする。
「そうでしたか。どうぞごゆっくりしていってください。今日はちょうど歓迎会をするところなんです。では、私はこれで」
そう言ってカリスは足早に自分の持ち場に戻る。
「しかし、この街は本当によく発展していますね。私達の町なんか人数は多いですが、ここまで整えられてはいません」
ベナエルは村の夜景を見て言う。
「そういえば、さっき修行をしているって言ってましたけど、どうして修行する事になったのですか?」
「簡単に言うと、私達の国メナスが危険な状態だからです。そしてこの私が調査兼修行として遣わされたと言う事です。
私達の国は、魔王キットマンが治める国ヘルスベニアという国と以前協力関係にありました。食料や軍事、文化までもが互いに支え合っていました。
しかし、最近魔王の様子がおかしいようで、どうやら前の性格とは違く、今は暴走状態になりつつあるらしいのです。ヘルスベニアは海に面していて交易が盛んな国です。もし今、以前の協力関係が崩れてしまえば私達の国は崩壊してしまうでしょう」
ベナエルは深刻そうな顔で言う。
「そんな事情があったなんて…… 俺達もなにか協力できればいいが……」
俺が呟く。
「いえいえ、滅相もない。私達の国メナスはここから遠く離れた地です。行き来するだけで大変な道のりです。そんなこと、なんら関係のない人々を巻き込むわけにはいきません」
ベナエルは強い意志を見せる。
「まあ、その話はとりあえず後でにして、早速この地の主であるスライムのラミルにあってもらいましょう」
そうして俺達三人は村の大通りを歩いて行くのだった。
最初は日常パート多めになるかもしれないです。




