新たな風
俺達は魔王を討伐して、村に帰った後、マイル達に今までの事を報告し、これからの展望を話し合うのだった。
「みんな、ただいま。僕達はついにやり遂げたぞ」
ラミルが声を大きくして村で待っていたみんなに言う。
「ラミル様、ご無事で何よりです。魔王討伐おめでとうございます」
マイルが言う。
「ああそうだな。しかし、今回の魔王討伐は僕だけでは到底無理だった。みんなが一つになって協力してくれたおかげだ。本当にみんなよくやった」
ラミルは村のみんなをいたわる。
「ラミル様、こちらも今戻るところです」
カルベロスのギャラクシーキャット部隊の中の一人であるネオが言う。
「そうか、カルベロス達も無事に帰って来たんだな良かった」
ラミルの表情は少し安心の色に変わる。
「ラミル様ーー お待たせしましたーー」
カルベロス達の姿がだんだんと見えてくる。
「きたきた、あれ? なんか見慣れないやつがいるけど…… それにとんでもないオーラが滲み出ている。あいつは隠しているつもりのようだが、こっちからは丸分かりだ」
そうしてカルベロス達も村に到着する。
「いやー お待たせしました。まさかあんな形で攻撃を受けるとは……」
「ああ、実際のところ相当危なかったけどな。もし僕がブライテストを使えなかったらずっとあの空間に閉じ込められていたかもな」
ラミルが言う。
「そうですね、わしらももっと強くなる必要があるようです。この世界にはまだまだ色々な強者達がいます。ラミル様もこの地の主として、様々な問題に対処していく事になるでしょう」
カルベロスが言う。
「え! この地の主!? この僕が? そんなの無理だよカルベロス。この地には賢者の一人である白兎様がいるんだ。あのカラミティでさえ近づけなかったんだぞ。なのにこの僕が……」
ラミルがそう言いかけるとカルベロスは強引に割り込む。
「なにを今更言っているのですか? ラミル様はこの地を支配するのに相応しい存在です。新たな魔王として力をつければ、賢者といっても怖くありません。それに白兎様はその者の心の内を見ます。今のラミル様は大勢の魔物から信頼されています。きっと白兎様もお認めになるはずです」
カルベロスがどこか遠くを見て言う。
「そんな上手く行くかな……」
ラミルが心配そうな顔をする。
「ラミルが魔王か〜 なんか変だな、スライムが魔王なんて」
俺は少しラミルを冷やかすように言った。
「確かにそうだよな。僕って元はスライムなのに」
ラミルは俺の冷やかしを真剣に受け止める。
「ラミル様は黄色のスライム。その光がみんなの太陽な存在となってくれています。これはスライムであるからできる事。他の種族ではできません」
カルベロスがそれっぽい事を言ってラミルを説得する。
「そんなにカルベロスが言うなら仕方ないか。でも、スライムだからって舐められないかな」
「大丈夫。その時はこの俺が力づくで思い知らせてやるから」
俺の言葉を聞いてラミルは少し微笑む。
「キクまでもそんな感じなら、僕に選択肢は無さそうだな。よしっやるか」
ラミルは意気込む。
「それにしてもカルベロス、その隣にいるのは誰なんだ? 強力な力を持っているようだけど……」
ラミルが聞く。
「え! この私の力の度合いを見極めるとは、驚いた。私はウニヤって言うの、私はカルさんのお誘いで、この部隊に入ったの」
ウニヤは軽々しくラミルに説明する。
「おいウニヤ、ラミル様は一応この地の主となる方なんだぞ。もっと礼儀正しくしたらどうなんだ。それに、ウニヤが入りたいって言ったから入れたんだからな」
カルベロスは少し怒りながら言う。
「もう、そんな細かい事はいいじゃん」
「何だその細かい事って……」
ウニヤとカルベロスは少し言い争いになる。
「二人とも落ち着いてよ。帰って来て早々喧嘩は良くないよ。まあ、仲間が増えるのはこっちとしても大歓迎だ。それに君には重要な任務を任せる事ができそうだな」
それを聞いてウニヤは大喜びする。
「やったー 嬉しい。私、前の組織では低待遇だったから、こんなみんなに優しい組織初めてだよ」
「ああ、喜んでもらって良かったよ」
ラミルが苦笑いして言う。
「それにラミルさんも相当強いみたいだね。私の力を見抜かれたのは初めてだよ。ますます、やる気が出て来た」
ウニヤは昂揚する。
「え、結構普通にむ見抜けたけど…… あっ、そういえばブライテスト発動したままだった。だからか。ちょっと待てよ、じゃあ僕が魔王と戦っているとき、あまり力が出なかったのはずっと付けっぱだったって事! じゃあ意外と魔王と張り合っていたんだな」
ラミルが一人で考え込む。
「さあ、ラミル様、みんなが帰って来たところですし、村の全員を集めて集会としましょう。これからの村の運営も大事になって来ますからね」
マイルが言う。
そして俺達は今後の村の運営に関して話し合う。
「とりあえず魔王を倒した事で、この地は比較的安全になった。前、僕が言っていた食料の生産を請け負う計画も実行に移せるだろう。ただ、今はナイロ王国の王カーミンはタイロ連邦国との間で終戦協議をしているところだからもう少し時間はかかるだろう。まあ、今は準備の期間ということだ。
その上で一番の問題は水だ。この村の近くには川がないから、山の上から水を引っ張って来たいのだが……」
ラミルが考え込む。
「ラミル様! 水の件ですが、ラミル様達が魔王討伐に行っている最中、イエティ族の方々がこの村に来ました。どうやら、ラミル様達へのお礼として、農業の面で何かお手伝いしたいとの事でした」
マイルが言う。
「おお、それはちょうど良かった。そういえばイエティ族を前に助けたな。それで、具体的にはどういう事を手伝ってくれるんだ?」
ラミルが聞く。
「それはまさに水の事で、イエティ族の水製造機を何台か使わせていただけるみたいです」
「水製造機かあ、それがあれば、水の問題は対処できそうだ。よし、農業の方はとりあえずそんな感じで大丈夫だな。
それで軍事面だが、まず前にコマチ達に行ってもらっていた魔力玉集めの事で、以前にカーミンからナイロ王国の兵士達を加えて一緒に訓練してほしいと要望があった。それで今度から、村運営の訓練ルートにしようと思う。
それに公共で使ってもらうつもりだ。そうすればナイロ王国以外の各国も自分の兵士達を連れてくるだろう。
そしてそこで講義料としていくらか貰えば、村の収入も安定するだろう。
他の国は年々、軍事費を増やしつつあるみたいだしな」
ラミルが言う。
「よしっとりあえず話はこんな感じだ。みんなゆっくり休んでくれ。では解散」
そうラミルが言って臨時集会は終わる。
その晩俺は一人で色々な事を考えていた。
「ソーダが最後に言っていたあの言葉。クレミスも同じような事言ってたな。そういえばクレミスはどこに何をしに行ったんだろう。俺はもっと強くならなきゃな、勇者っていうのも気になるし、なんか魔王を倒した後もしばらく忙しそうだ」
次の日の朝のこと。
「はあ〜 もう外はすっかり明るいな」
そう思って俺はなんとなく目を覚ますために外へ出る。
「あれ? みんな何やっているんだ?」
そこには村のゴブリン達があくせくしながら何かの準備をしている姿があった。
「ねえ、マイル。みんな何をしているんだ?」
俺はちょうど前にいたマイルに聞く。
「おおキク殿、私達は祭りの準備をしているところです。今まで魔王討伐でしっかりとこういう催しができなかったので、ひと段落したところで、ギャラクシーキャット達や刀進組の歓迎会を改めてやろうと思いまして。あっ、そうだ。キク殿!今日の食事の材料を集めるのを少し手伝ってくれませんか?少し人手が足りなくて」
マイルが俺に頼み込む。
「いいよ、任せて」
そして俺はマイルと一緒に食事の材料調達に行くのだった。
第ニ章始まりました。少しずつ上達できるように頑張ります。




