昔の信念
「なんという事だ!この攻撃を一瞬で避け切るとは……」
ソーダはミムラの速さに驚く。
「お前は確かに強いが、まだまだ戦闘の経験が足りないな。何かこう決め手の技とかがあればいいな」
ミムラが急にアドバイスをし始める。
「ご指摘ありがとうございます。ですが経験が浅いというのは少々心外です。私はこう見えても今まで沢山の戦闘を経験してきていますから」
ソーダは少し笑いながら言う。
「じゃあ、単純にお前の才能が無かっただけなんだな」
ミムラがソーダを煽る。
「そうですね、私はカラミティ様などと比べるとあまり才能がない方だと思いますが、少なくともあなたよりはあるでしょう」
ソーダも反論する。
「まあ、話しはここまでだ。次で決めさせてもらう」
ミムラが深呼吸をする。
「さっきまであなたの攻撃はほとんど当たらなかったのにそんな事ができるのでしょうか? まあ良いです。私もミムラさんの本気を見てみたかったので丁度良いです」
そう言ってソーダはミムラに合わせて構える。
「行くぞ」
「シュンっ」
ミムラがソーダを攻撃する。
しかし、次の瞬間ミムラは元の位置へ戻りソーダは吹き飛ばされて壁を二枚打ち破って、その場でピクリともしない。
「バーンっ」
時間差でとんでもない音が鳴り響く。
ミムラとソーダの戦いの結果は見るまでもなくミムラの圧勝だった。
ミムラの圧倒的な力を前に俺とラミルはあぜんとしていた。
「ええ! 今何が起きたんだ全然見えなかったけど…… 攻撃する瞬間すら見えなかった」
ラミルが困惑した顔をする。
そして淡々とミムラはこっちへ向かって来る。
「ラミル様、終わりました。心配をかけてすいません」
「ああそのようだな、しかし、今のは一体どう言う事なんだ? ソーダが勝手に吹き飛んだように見えたけど……」
ラミルは聞く。
「そうですね、少々力みました。しかし、最初は本当に危なかったです。途中でただの私の思い違いだと言う事に気づきました。私はてっきりストーリーズで予測出来なかったので、相手はとても強い者だと思い込んでいました。しかし途中で実際に戦ってみて気づいたのです、そこまでの強者では無いと」
ミムラは清々しそうに言う。
「つまり、ミムラが強いと勝手に思い込んでしまったと言うことか? ごめんますます分からなくなってきた」
俺は終始ミムラが言っていることがわからなかった。
「すいませんキク様、もうちょっとまとめて言うと、私は少し攻撃をためらってしまっていたのです。もしちゃんと最初から攻撃していれば一秒もかからずに倒せていたと言うことです。
それにストーリーズの予測範囲は一秒〜一分の間です。一秒もかからずに終わってしまうということは予測に上がってこないということなんです。それを私はてっきり相手が強いからだと思い込んでしまった。全く私もまだまだですね」
ミムラは再度何かを思い出したように笑い出す。
「なんだそういうことだったのか。さすがミムラだ。頼りになるな」
ラミルは感心してミムラを褒める。
「いえいえ、私は笑ってはいますけど内心とても反省しているのです。今回、私は自分のスキルの頼りすぎてしまった。戦闘中に余計な感情が入ってしまった。そして私自身の力を信じる事が出来なかった。これらの事が私の今後の課題です」
ミムラの表情は真剣になる。
「随分と真面目なやつだな。まあ一件落着という事で、早速僕達は魔王の元へ行くとしよう」
そうして俺達は魔王の場所を知るためにソーダが倒れている場所に向かった。
「おい!起きろソーダ!」
ミムラが呼びかける。
そしてミムラが目を覚ます。
「あれ?ここは…… 私はもしかして負けたのですか…… どうやらその様ですね」
ソーダは少し落ち込む。
「さあ、魔王の居場所について話してもらおうか。そして魔王の目的も聞かせてもらおう」
ラミルが問い詰める。
「仕方ないですね……」
そう言ってソーダが話し始める。
「信じられないと思いますが、魔王カラミティ様は魔物にとって平和な世界を望んでいます」
それを聞いて俺達は全員驚く。
「まあ、そんな表情をするのは当然ですよね。詳しく言うとカラミティ様は人間達に恨みがあるのです。その背景にはカラミティ様がかつて人間から酷い仕打ちを受けていました。そして今になってもその事をずっと根に持っているみたいなんです」
「そうは言っても、こんなやり方は無いだろう」
ラミルが言う。
「その通りです。ですがカラミティ様は今暮らしている魔物達をいち早く人間の手から守るために自ら魔王となって、少し強引な手を使っていますが、直接支配する事でそれを成し遂げようとしていたのです。つい最近だと、人間の国ではスライムが狩りの対象となっていると言う事で、村にいたスライム達を連れてきてこちらで保護しています。
衣食住もしっかりと提供されているので、快適な暮らしが保証されています」
それを聞いた俺達は少し複雑な気持ちになった。
「どうしてそれを早く言ってくれなかったんだ。僕達も協力できたのに……」
ラミルが言う。
「そうですね。できればそうしたいと私は考えていたのですが、カラミティ様はバフーマ大戦の件であまりあなた達をよく思っていないのです。私からも何度も言いましたが、カラミティ様は依然として自分の信念を貫いておられます」
「そうか…… 最後まで己の考えを貫き通すつもりか」
ラミルが窓から僅かに刺す光を見つめる。
「魔王を倒す事が僕達にとっても魔王にとっても重要だ。引導を渡してやろう」
「さあ、カラミティ様のところへとお連れしましょう」
そうソーダは言って指を鳴らすと、別の空間にワープしていた。
「ラミル様!この先からとてつもないオーラを感じます」
ミムラが警戒する。
「ああ、僕もだ。きっとこの先に魔王はいるのだろう。キク、ミムラ、気を引き締めて行くぞ!」
そうして俺達はついに魔王へ向かうのだった。
一方でカルベロス達はと言うと、俺達が消えた事で大騒ぎしていた。
「カルベロス殿!ラミル様がいません」
コマチが報告する。
「すぐにみんなを集めてくれ」
カルベロスが言う。
霧の影響で見通しが悪い中、全員が警戒体制に入る。
「何か、嫌な予感がする。まだ全員が集まっていないと言うのに…… ここで攻撃を受けたら大変だ」
そうカルベロスが思った時だった。
大勢の黒い影が突如として現れる。
「あれは!イレウス族か、そしてこんなにも大勢で、まずいな、コマチ達は今ちょうど仲間を呼びに行ってしまったばかりだし、応援は見込めないな。とりあえずここはなんとかして凌ごう」
そうしてカルベロスは数体のギャラクシーキャットの部隊を連れて敵を攻撃する。
「何か騒がしいぞ、イワタそっちを見てきてくれ」
コマチが異変を察知してイワタを偵察に向かわせる。
「一体何が起こっているんだ? 待てよ。あれは……」
コマチが見る先には大勢の敵の姿があった。
「なるほど、相手を混乱させて一人ずつ分散させる作戦だったか」
コマチは刀を抜く。
「だが、この我の力は以前とは比べものにならないくらい強くなっている。それもラミル様のおかげだ。こんなところでくたばるわけにはいかない」
そう言ってコマチは敵へたった一人で向かっていく。
一方先に戦闘を開始したカルベロスはと言うと
「くそっ、戦いづらい。敵の一人一人が確実にわしの攻撃の隙を突いて来る。防御するだけでも一苦労だ。仕方ないこれを使うかコメット……」
カルベロスが技を使おうとした時だった。
「バコーンっ」
急に現れた謎の女がカルベロスを地面の叩きつける。
そのままカルベロスはピクリとも動かなくなってしまった。
だいぶ遅くなってすいません。色々な事が落ち着いてきたのでまた再開します。




