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嵐の前の静けさ

「さあ、デスタよ今回の事はどう弁解するつもりだ?」

 カーミンが鬼のような表情でデスタを詰める。

「す、すいませんでした。私達は騙されていたんです。こんな事言っても信じてもらえませんでしょうが、ナイロ王国の幹部の方が私達の国の交渉人に危害を加えたと聞きまして、最初はうっかり信じ込んでいました。

 しかし、後からそんな話はない事が分かり、戦いを止めようと思いましたが、今さら王の勘違いで戦いを起こしたとなれば大問題に発展してしまう。そう思って遂に最後まで言い出す事ができませんでした」

 デスタがカーミンに向かって土下座をする。

「まったく…… 一国の王ならば自分の過ちをきちんと謝るのが当然だろう。だが、お主はそれをしないで自分の保身に走った。お主は絶対に間違えてはならない二択を間違った。王というのはそういう選択の連続だ。余もいくつか潜り抜けて来た」

 カーミンはデスタをキツく叱りながらも、王としてのあり方を教えるのだった。

「さすがです。カーミン王、あなたは正真正銘の王なのですね」

 デスタはカーミンを見上げる。

「お主の失態で疲弊した兵士達をすぐに休ませてあげろ、終戦協議はその後だ。王は最後まで立つ鳥跡を濁さずの姿勢で去るべきものだ」

 そう言われたデスタはすぐさま兵士達の元へ向かった。

「みなよ、今回は迷惑をかけた。本当にすまなかった」

 王が兵士達に頭を下げる。

「デスタ王、良い顔立ちになられましたな」

 一人の兵士が言う。

「俺はデスタ様が起こした事は許されないと思う。けどこうやって素直に謝っておられる。そういう姿を最後に見る事ができて良かったです」

 もう一人の兵士が言う。

 そして一人、一人と拍手が上がる。

 そして全員がデスタに向けて拍手を送る。

「長い間お世話になりました!」

 デスタがもう一度深々と頭を下げる。

 その姿は儚くも夕日に照らされてまさに本物の王である事を際立たせるのだった。

「あんなやつでも一国の王。民は王にいろんな物を託している。そして王はその見返りとして民が安心して暮らせるような環境を提供する。王と民は切っても切れない関係がある。

 王がいくらポンコツでも、いくら傲慢でも民からの信頼があれば王として存続する事ができる。デスタは嫌なやつだが、その信頼を獲得するなにかが少ないがあったのだろう。だが、それが今あの姿を見て分かった。デスタの本心こそが信頼の鍵だと言う事を」

 俺とカーミンは二人でデスタの姿を見つめる。

「なるほど。王というのは、たくさんの事を抱え込む必要があるんだな」

 俺が何となく呟く。

「お主も魔王を倒したら王になるのだろ、今のうちに見ておくと良いぞ」

「何で俺が王になる前提なんだよ……」

 その一方、ラミル達は



「カルベロス!僕達は至急村に戻る。そこでお願いがあるのだが、キクを連れて来て欲しい」

「承知しました」

 カルベロス率いるギャラクシーキャット達がラミルの元をさる。

「よし、僕達は村へ戻ろう。遂に魔王討伐への歩みを始めるときかもな」

 そうしてラミル達は足早にナイロ王国を後にするのだった。



「キク殿!こちらでしたか」

 カルベロスが急いで俺の元へ駆けつける。

「どうしたんだ?カルベロス」

「それがラミル様から、至急村に戻るように伝えてくれと」

「カルベロスよ、お主達の村で何かあったのか?」

 カーミンが聞く。

「いや、特にはないですが、今回の戦いが何かがおかしいという事で、ラミル様が五人衆の一人に尋問したところ、どうやらタイロ連邦国以外の第三の組織が介入しているという結論に至りました」

 カーミンが驚いた表情をする。

「何という事だ…… この戦いを裏で動かしていた奴がいるのか。そういえばさっきデスタが騙されたと言っていたが、何か関係があるかもしれないな」

「はい、ラミル様はその第三の組織は魔王陣営ではないかと考えています」

「なるほど、確かに魔王のよる仕業と考えるといろいろ辻褄が合うな。分かった。余は引き続きデスタから話を聞くとしよう。お主達も助けが必要だったらいつでも言ってくれ、必ず力になって見せる」

 カーミンが力強く言う。

「感謝します。カーミン王。ではキク殿行きましょう」

「ああ、そうだな」

 そうして俺達は村へ戻るのだった。



「よし、やっと着いたか」

 ラミル達が村に到着する。

「おおキク、良かった無事で」

 ラミルが近づいて来て俺に抱きつく。

「おいおい、急になんだよ」

「いや、実は結構心配してたんだ。キクがやられてしまうのではないかって」

 ラミルが少し照れながら言う。

「そうだな、実際俺は死ぬ寸前のところまで行った。クレミスという五人衆の中でも最強格の女と戦ったんだが手も足も出ずにやられてしまった」

 ラミルが驚きの表情をする。

「そんな強いやつがいたのか…… そしてどうやってキクは生き残ったんだ?」

 ラミルが今すぐにでも知りたいような表情をして聞いてくる。

「それがなんか不思議でさ、クレミスは俺を消す前に攻撃を止めたんだ。そして、俺の言葉に感銘を受けたみたいで、最終的には二人で空の星を一緒に見る仲にまでなったんだ。不思議だよな、さっきまで命の奪い合いをしていた者同士がそうやって打ち解けるなんて……

 そして最後に彼女は俺の方を向いて優しく俺の頬に……」

 そう俺が言いかけた時だった。

「もういい!その話は」

 ラミルが不機嫌そうに言う。

「なんだよ急に」

「なんでもない、ただ、とりあえずキクが無事で良かったよ、本当に」

 そう二人で話しているとマイルとミムラがこっちへ来る。

「おかえりなさいラミル様、キク様」

 ミムラが丁寧に出迎える。

「ありがとうミムラそっちは何も無かったか?」

「はい、特にこれといった襲撃などはありませんでした。しかし……」

 ミムラが言葉の詰まる。

「どうしたんだ?ミムラ」

 ミムラが話始める。

「ラミル様達がいない間、私の旧友と会いまして、そいつは今情報屋をやっていてその者のよれば、今回のラミル様達が参戦されたナイロ王国とタイロ連邦国の戦いはどうやら魔王が仕組んでいた事のようです。ここからは私の推測ですが、魔王はある計画を気付かれないように、戦いを引き起こして気を散らせたというように考えました」

「やはりか、僕達も魔王が関わっていると見ていたんだ。そしてその計画の準備をしていたというならば、まずいかもな、僕達はまんまと魔王の術中にハマった事になる。そうとなれば、残された時間は少ないだろう」

「私も全く同感です。この機を逃せば魔王討伐は遠のくでしょう」

「ああ、そうだな早速魔王討伐への準備をしよう。決行は明日だ。今日は明日のためにみんなゆっくり休んでくれ」

 そうして翌朝、

 俺とラミル、カルベロス、コマチとイワタ率いる刀進組で行く事になっていたのだが

「ラミル様、お願いがあるのですが……」

 ミムラが珍しく頼みごとを言う。

「どうしたんだ?ミムラ」

「私も一緒に連れて行ってはもらえませんでしょうか?」

 ラミルは困った表情をする。

「君には村を守るという大事な役目があるじゃないか」

 ミムラが言い返す。

「もちろんその通りです。しかし、今回の相手は魔王です。厳しい戦いになる事が予想されます。それに勝手ながらカーミン王に力をお借りする手紙を送りました。彼らがいれば村も安全でしょう」

 ラミルがそれを聞いて驚く。

「何してんの!? そんな事頼むなんて……」

「お許しくださいラミル様、カルベロス様の提案でして」

「カルベロスかよ!」

「すいませんラミル様、良かれと思ってやりました。しかし、カーミン王は困った時はいつでも頼って良いとおっしゃっていましたよ」

「そうは言っても……」

 ラミルが不安そうな顔をする。

「ラミル、心配しなくて良いよ、それになんのために協力関係を結んだんだよ」

 ラミルがハッとする。

「そういえばそうだった。忘れてた。よし、分かったミムラも一緒に来てくれ」

「感謝しますラミル様!」

 そうして俺達は遂に因縁の相手に向かうのだった。

次回から魔王戦です。

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