真の目的
「なんとかこの危機を脱したが、次また攻撃されるとやばい。何か反撃する方法は無いのか……」
俺は反撃の隙を見計らっていたが、そもそも攻撃の手段が無いことに気づいて途方にくれていた。
「なかなか、やるじゃないかキクよ、褒めてやろう」
最初とは違って明らかに怒っているクレミスが言う。
「どうも、わざわざ褒めてくれるなんて優しいな」
「感謝するがいい、お前は私の寛大な心によって助かったのだ、普通だったら既にここにはいないだろう」
クレミスは怒りでまるで別人みたいに話す。
「そして、その寛大な心も続かない。次で燃やし尽くしてやる!センターコレクション!」
そうクレミスが唱えると周りの空気がだんだん熱くなってくる。
「なんだ、この熱さは! まるでかまどの前にいるみたいな熱気を全身に感じる」
俺がそう思ったのも束の間、周りの温度はどんどん上昇していく。
「この私のスキルは周りの熱を一つの箇所に集めることができる。ここは戦場だ各地で火の手が上がっている」
「そういうことか、まずいなこのままじゃ干からびてしまう。やってみるか…… 水面波切り!」
そうして俺は適当に技を打ってみたが、水系の技はすぐに蒸発してしまう。
「どうやら俺の攻撃手段はないらしい、今度こそ…… いや、待てよ、俺はまだ反射水面波を試していない。もしかしたらこれでこの窮地を突破できるかもしれない!発動!反射水面波!」
そうして俺が発動した反射水面波は瞬く間に俺の分身を何十体も作り、一斉にクレミスを囲んだ。
「なんなんだこの技、分身が増えても何の役にも立たない」
クレミスが見下す。
「それは、どうかな、俺の水面波切りはすぐに全部蒸発してしまうが、今はまだ蒸発までの猶予がある。ということは俺の分身同士で水面波切りを反射しまくれば攻撃することが出来る」
「そんなもの知ったことか、それにもうじきこのあたりの温度は150度くらいに達する。その中では人間であるお前にとっては地獄のような熱さだろう。さて、そこまでこの攻撃を止めることが出来るかな」
クレミスが挑発する。
「望むところだ、水面波切り!」
そうして俺の水面波切りは俺の分身を介してまるで壁に反射するスーパーボールみたいにあちらこちらに飛び回る。
しかし、まだ威力も速さもクレミスに致命傷を与えるほどではない。
「よし、こっからどんどん円を狭めていくぞ!」
俺はクレミスを囲む俺の分身が作る円をどんどん小さくしていった。
そしてそれに伴って水面波切りの威力と速さはどんどん上昇していく。
そして最終的には俺の分身を介して水面波切りは反射しまくり最初とは比べ物にならない速さに達していた。
「あの人間なかなかやつな、こんな攻撃私には全く効かないだろうと侮っていたが、技の性質を使って攻撃するとは……」
クレミスが珍しく感心する。
「キク様! 相手の攻撃が弱まりました。準アルティメット級の技を使えます」
「本当か!? ウォータープロテクト。いい機会だ、ムカついていたから一発殴ろうと思っていた。くらえ!音速連衝!」
俺は相手が水面波切りを防ぐのに少し気を取られて隙ができたタイミングで殴りかかった。
「バーン!」俺の攻撃はクレミスに直撃する。
そしてクレミスは遠くに吹っ飛ばされる。
「私の気を散らして技を打つとはなかなかやるな。それに、その攻撃で私に攻撃させないように遠くに吹っ飛ばした。しかし、あいつはまだ私の真の力を知らない」
その一方で俺は技の多用と過度な緊張で、立つことすらできなくなっていたほど疲弊していた。
俺は仰向けになって空を見上げる。
「何だろう、今回の事で俺がどれだけ恵まれていたのかが分かった。俺はもうダメだ本気を出しても相手にはかすり傷程度にしかならない。あの女は圧倒的に俺よりも強かった」
そして俺は今までの事を振り返った。
「今まで両親、友人、この世界の仲間達いろんな人が支えてくれた。この世界に来る前は毎日が退屈だって思っていたけど、それは支えてくれる人がいたからだ。今となってはそれが幸せだって分かった。ありがとう皆んな今まで支えてくれて……」
俺の見ていた空はただただ美しいかった。
そして自分自身が空の星の一つになるために必死に手を伸ばした。
誰かの足音が近づいて来る。
「キク殿、あなたは良くやりました。私にここまでさせるとは……」
クレミスは俺の様子を見て何かを察し、さっきまでの怒りの表情は消えていた。
「これはあなたへの最大の敬意です。苦しまずにお眠りください。青の炎!この技はあなたをこの火の玉に閉じ込めてこの広大な空へ送り出します」
そうしてクレミスは一つの小さな玉を俺に近づける。
「ああ、感謝するクレミス。俺のためにここまでしてくれるなんて……」
俺はなぜか敵であるクレミスに感謝をしていた。
「これまで、俺は現実の世界でずっと同じ生活をしていた。俺はその時から何かを探していた。だけどずっと見つからなかった。それが今分かったんだ、それは俺の中にあって、俺が全力を出し切った時現れる。それがこの達成感だったんだ…… だから本当にありがとうクレミス、最後に俺に気づかしてくれて」
クレミスは俺の言葉を聞いて遠くを見つめる。
「もうやめた。なんかどうでもよくなちゃった」
クレミスが火の玉を消す。
「今の言葉を聞いていて私もあなたと同じだと思ったんです。私は何のために王に仕えて戦っているのか。それが分かった。あなたと同じで全力でやりっきた時の達成感を味わうため。そしてもう一つ気がついた。それを叶えてくれるのはキク殿、あなたしかいないとね」
クレミスは俺の隣にきて俺と同じように仰向けになって空を見つめる。
「私は小さい頃力もなくて、何もできなくて、みんなからいじめられていたんです。その悔しさを紛らわすために毎日、空を見上げてこうして星の光を見つめていた。そしていつしか、その星になりたいと思うようになった。
その日から一生懸命に努力して世界で一番になろうとした。そうすれば星になれると思ったから…… でも、自分の中で葛藤していたんだ本当にこれで良いのかって。
でも、あなたの言葉で分かった。どんなに弱くても全力で挑んだ時、私は星みたいになることが出来る」
そう言ってクレミスは俺の方を向く。
「だから、あなたにはさらに強くなって私の夢を叶えて欲しい。本能でそう思いました」
そしてクレミスは俺の頬に顔を近づけ何かをした。
その感触は温かくて、柔らかかった。
「じゃあ、またどこかで会いましょう。私はもう手を引きます」
そう言うとクレミスはどこかに行ってしまった。俺が突然の事で呆然としていると、遠くからカーミンの声が聞こえる。
「おい、キクよ大丈夫か?そんなに疲弊して…… それより五人衆のクレミスはどうだったんだ?」
「手を引くと言ってどこかに行ってしまいました。あの人は強かった。俺には手も足も出なかった」
カーミンが慰めるように言う。
「まあ、あのクレミスの前で生き残っただけでも英雄級の活躍だ。キクよ頑張ったな」
そうカーミンと話しているとタイロ連邦国の王がこちらへ来る。
「お久しぶりですカーミン王。この度はご苦労様です」
デスタがそう言うとカーミンは激怒する。
「舐めた口をききやがって、覚悟するのだぞ」
「おっと手荒な真似は避けておいた方がいいですよ。あなた自身どうなるかわかりません」
デスタが煽る。
「それはどうかな、これで終わらせてやるザ・ラストリゾート!」
カーミンがそう技を打った時だった。
「やはり打ってきてか、私達はその技を待っていたんです」
そう言って、デスタ王は大きな装置を持って来る。
「そんなポンコツ諸共、破壊してやる」
そうしてザ・ラストリゾートが放たれるが、大きな装置によって食い止められる。
「おお、さすがクレミスが発案した対ザ・ラストリゾート戦車。あのカーミンの技を止めてしまうなんて」
「何だと!? 余の技を止めるだと!」
そして、今回の戦いの最終決戦が始まるのでだった。
感動シーン?自分ではそう思っていますが…… 表現するのが難しいです。頑張って研究します。




