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戦闘への導火線

 サヤが暫定的に王に決まって一件落着した後、俺達は牢屋に幽閉されているカリウスのところへ向かった。

「カリウスよ、起きるのだ。今解放してやる」

 カーミンが牢屋の中で横になっているカリウスに声を掛ける。

「おお、カーミンよ、我はそなたを裏切ってしまった。この事は許されるものではないだろう。どうか、厳正な処罰をお願いする」

 カリウスが申し訳なさそうに言う。

「そうだな、確かに許される事では無いが、余がお主のようなやつを亡き者にすると思うか?」

 カリウスがその言葉を聞いて驚きの表情を見せる。

「まさか、我の死罪を無くしてもらえるのですか?しかし、今回のことは本当に重大な事です。国の存続にも関わります。いくら友といえども、情状酌量の余地はありません」

 カリウスが、覚悟を決めたような表情で言う。

「カリウスよ、お主は悪い事をしたが、それは、民を思うための事ではないのか?恐らくは今回の件も魔王陣営から無理難題を押し付けられたのだろう。まったく、余達に一言でも相談すれば良いのに、一人で無理をして……」

 それを聞いたカリウスは悔しそうにする。

「我は、自分自身が劣っているせいで、自力で民を守れなかった。それが原因で魔王に頼るという悪手を取ることしか出来ない自分が醜いのです。もっと力があったら、もっとみんなを惹きつける魅力があったら、そう常々考えてきた。我は元々世襲の身。偉大な父の名を借りているだけの凡人。そもそも王になる資格などないのです」

 カリウスは吐き捨てるように言う。それを見るとカーミンはそっとカリウスの肩に手を置いた。

「それは、どこの王でも同じだ。忘れたのか? 余は元々名もない冒険者。そんな余をここまで押し上げてくれたのは、間違いなく仲間達の存在だ。昔の余はいつも弱音ばかり言っていた。その時いつも慰めてくれたのは仲間達だった。そして、余は自分の弱みを認めることで強くなっていった。

 今思うと、あれは余の力ではなく仲間達のおかげであった。仲間達の信頼を得るには自分の弱いところを見せる必要がある。とても難しいことだが、これが王になるための必要なことだ。

 それを、お主は兼ね備えている。ただ、王の家系と言うだけで弱音を言うのを許されなかった。だから、お主のせいだけではないぞ。それに、弱いところを隠し続ければ、いざそこを突かれると、完全に戻るのは困難になる。だから、お主は可哀想だったのだ」

 カリウスは何かが吹っ切れたような表情になる。

「ありがとうカーミン、でも……」

 カリウスが言いかける。

「もう、自分を責めるのはやめるんだカリウス。それにお主は今、立派な王の素質を持っている。今回の事で、自分のした事を謝り、そして全てを余に打ち明けてくれた。その姿こそ、王のあるべき姿だ」

 カーミンの言葉でカリウスの表情はさっきよりも明るくなった。

「感謝する。カーミンよ、我にとっての大切な仲間はカーミンだ。我は重大な過ちを犯した。この事は決して許される事ではない。しかし、今後、我は新たにこの国の王となるものにとって頼れる存在でありたい。図々しいが、我はやっとそこに希望を見出す事ができた。そして、この国がもう二度と同じ運命を辿る事がないように」

 そう言って、カリウスは牢屋を後にした。

 カリウスの表情は以前と違って別人のようになっていた。

 これが王の本来の姿なのだろう。皮肉にも、それは王を退いた後に分かるのだが。

 そうして俺達はカリウスを新たな王の補佐としてオスムニアの民達の提案するのだった。

 結果としては、結構苦労するかと思われたが、カリウスの以前から民を思う心が広く伝わっていたようで、すんなりと同意を得る事ができた。

「よし上手くいったようですね、カーミン王」

「ああそうだな、ラミル。今回は余も悪いところがあったと思う。少しはやとちりをしてしまっていたようだ。改めて詫びよう。カリウスは根はいいやつなんだ。だからつい偏った見方をしてしまった」

 カーミンが頭を下げる。

「いえいえ、大丈夫です。それにカリウスがいいやつだというのは、今回の事で十分分かりましたし、もし僕が同じ立場だったらそうすると思います」

「お主は優しいな、ただ、本当に怒らなければいけないところでは怒らなければならない。アメとムチを巧みの使うのだ」

「分かりました。ご忠告ありがとうございます」

 そうして俺達はオスムニアのいざこざを解決して少し息を抜こうとした矢先だった。



「カーミン様!カーズ様から伝言です」

「カーズから?緊急の用件か?」

「はい、ナイロ王国に潜む裏組織パープルが王が不在なのを狙って反乱を起こしているとのことです」

「なんだと!?あいつら、ついにか」

 カーミンが歯を食いしばる。

「どうかしたんですか?カーミン王」

「ああ、どうやらこれから戦争になるかもしれないタイロ連邦国とな」

「戦争!?どうしてそんな急に……」

「余の国はタイロと停戦中だったのだが、あいつらは卑劣なやつだ、余の国に密かに裏組織を作っていたんだ」

「そうだったのですね、カーミン王!僕達も協力しましょう」

 ラミルが提案する。

「ダメだ、これは余の国の問題。何も関係ないお主達を巻き込むわけにはいかないのだ」

 カーミンは深刻そうな表情をして断る。

「関係ないわけがありません。もし、今のナイロ王国の王朝が倒れてしまったら、僕達にも影響があります。安心してください。僕の部下達はみな優秀です。必ず役に立つことができるでしょう」

 ラミルが熱心にカーミンの訴えかける。

「分かった。お主がそこまで言うのなら仕方がない。力を貸してもらおう」

「ありがとうございます。では早速、カルベロス!ギャラクシーキャット達を招集してくれ、王と王の部下達をナイロ王国へ送っていってくれ」

「はい、承知しました。ギャラクシーキャット!集合!」

 カルベロスの呼びかけでギャラクシーキャット達が次々と集まる。

「カーミン様御一行を至急ナイロ王国に送って差し上げるのです」

「感謝する。カルベロス、そしてその部下よ」

「カーミン王、僕達は一旦村へ戻って、体制を立て直します」

「分かった。感謝するラミルよ」

 そうして、カーミン達はギャラクシーキャットに乗ってナイロ王国へと向かった。

「なあ、ラミルこのまま戦争が大きくなってしまうのか?」

「まだ、分からない。こちら側が今回の事で強力な戦力を見せつければ、相手も攻撃を躊躇するようになるだろう。それにしてもどうしてこのタイミングで…… どうも怪しくて仕方がない。とりあえず僕達は早く村へ戻ろうキク」

「ああ、そうだな」

 そうして俺達も戦いへの準備のために村へ戻るのだった。

「ラミル様、おかえりなさい」

 村に着くと、ちょうど帰ってきていたコマチ達が出迎えてくれた。

「ちょうどよかった。お前達がいて」

「どうかしたのですか?ラミル様」

「それがな、ナイロ王国が現在交戦中なんだ。そこで僕達も参戦する事になってな。お前達にも同行してもらいたい」

「分かりました。今の三魔獣の任務は我らの部下に任せましょう」

「分かった。そして、この村の防衛は引き続きミムラにお願いする」

「承知しました。ラミル様。この私が全力で守ります」

 ミムラが何故か嬉しいそうな顔をする。

「よし、とりあえずメンバーは僕、キク、ここにはいないがカルベロス、コマチ達の刀進組。みんな、今回の戦いは相手に手を出させないようにするために力を見せつける必要がある。だから、存分に暴れてほしい」

「はいっ、承知しました。久しぶりです。こんなワクワクするの」

 コマチが今までにない表情をする。

「では、行くぞゴブリン精鋭部隊出発!」

 俺達は戦場へと向かうのだった。

今回も話メインになってしまいました。次からは戦闘が結構あると思います

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