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平和への鍵

「来ると思っていましたよ。カーミン殿、そしてスライムのラミル殿」

「何?これはどういうことだ?」

 そこには、手錠をかけられたカリウスの姿があった。

「ラミルよ、どうやら相手の方が一枚上手だったようだな」

「そのようですね、僕達の索を完全に読まれるとは、どうしますか?」

「これは、ひとまず話を聞くとしよう、何か付け込む隙があるかも知れない」

「皆様、申し訳ありません。先日の失礼はこの私がカリウスに代わってお詫び申し上げます」

 一人の貴族みたいな格好をした男が言う。

「皆さんはとっくに周知のことだとは思いますが、このカリウスはあなた方を貶めようとしたのです。それに魔王との繋がりまで、本当に腐った王ですね」

「クレイシャス、お前も共犯だぞ」

「何を言っているのだ、カリウスよ。皆のもの聞いてくれ、このカリウスは自分の責任を人になすり付けようとする極悪人だ。これより、国家反逆罪で死罪とする。カリウスをひとまず牢屋に入れろ」

 そうしてカリウスは地下の牢屋へと連れてかれる。

「カーミン殿、本当に申し訳ない、カリウスはあのような卑劣な奴だったんだ、そしてこれからはこの私がこの国をまとめ上げる。だからどうか、今まで通りの友好関係を保ったままでいてくれませんか?」

 カーミンは少し考えて答える。

「いいとも、これまでの通りの関係を築こう。しかし、この国の安全はどう保証するのだ?」

「どういうことですか?この国は安全です。魔物は私達に恐れをなして近づけないのです。何も心配することはありません」

「それは、本当の事なのか?実際、この前に魔物による騒ぎがあったらしいではないか。まあ、その時は外部の人間である、このキクという冒険者が討伐したようだが。それに、確かにカリウスは魔王との関係はあって、その見返りとして魔物を近づけないようにしていたのではないか?」

 カーミンが痛いところを突くと、見ていた民衆達はざわつき始めた。

「何をおっしゃるのですか?カーミン殿、それでは私達の国がまるで魔王に守ってもらっているという風に聞こえますけど」

「その通りだ。よくわかっているじゃないか」

「まさか、カーミン殿はそういう事を言うお方だったのですね。魔王に支配されていたとは残念です……」

 クレイシャスが煽るがカーミンは全く動じない。

 そしてその後もカーミンとクレイシャスは話を続けていく。

「キク様、何か不穏な気配を感じました。恐らくはいざというときに、この会話を聞いていた者を消す準備でしょう」

「まじかよ、確かに俺達以外に証拠を見聞きした者がいなければ、やつはなんとでも言って逃げることが出来る」

「よしっ、ウォータープロテクト。近くで見ているみんなに防御をかけてくれ」

「分かりました。発動しますレジストエリア」

 そうすると、目に見えない防御の壁でそこにいる人達は覆われる。

「クレイシャスよ、どう感じるかはその人の勝手だが、この国の方針を決めるのは民衆だからな。そこで余からも一つ提案させてもらおう。この国の防衛をこのスライムの部下達に任せるというのは、どうだ?」

「まさか、魔物に任せるとは、断固受け入れることはできませんね」

 クレイシャスがキッパリと断るが、カーミンも引こうとはしない。

「よく考えてみろ、今まで、この国が魔王によって守られていたとしたら、今回のことでその守りが無くなってしまう。もし、そうじゃ無かったとしても、この事が曖昧な限り完全に安心することは出来ない。どうだ、そう考えるとこの提案は随分と妥当なものではないのか?それに、この魔物達は人間に対して友好的だ、それはこのカーミンが保証しよう」

「そんな魔王に支配された者の言葉など信用に値しませんね」

「まあ、お主の一個人の意見はそうかもしれないが、民意はどうやら違うようだな」

 そうカーミンが言うと、その場にいた人達は一斉にうなずく。

「どうしてだ!この者は魔王に支配されているのですよ」

 そうクレイシャスが民衆に語りかけると、その中から一人の男が話始めた。

「確かに、魔王に守ってもらっているというのは定かではありませんが、それと同時にカーミン様が魔王に支配されているという事も定かではありません。それに今まで魔王のおかげで安心な暮らしが出来ていたのなら、私達は魔王にその事は感謝する必要があると思います」

「なんだと!この者の話を信じろというのか?」

 クレイシャスの表情がどんどん怒りに変わっていく。

「それに、私達はこの魔物の地に住まわせてもらっているのです。なのに、魔物に守ってもらうのはダメだというのは、あまりにも都合が良すぎる話では無いでしょうか?

 それにこの魔物達は信用に値すると思います。なにせ、あのナイロ王国の王がそう言っているのですから」

 一人の男がそう言った途端、瞬く間に拍手が巻き起こった。

「そうだ」という共感の声も聞こえてくる。

 カーミンは勝ったような顔をして言った。

「民意はどうやら、お主の考えに反対のようだな。国を作るのは王では無く民である事を忘れるな」

カーミンが決まったように言う。そうするとクレイシャスは不穏な動きを見せる。

「くそっ、こんな簡単な事を失敗するなんて…… まあいいそういう時のためにも索を練っていた。今!ここにいる全員を消してやろう。そうすれば、今回の出来事はチャラになる」

「何だと、やはりお主は魔王の手下か」

「そうだよ、計画では穏便に話し合いで済ませる予定だったが、こうなっては仕方がない。さあ、カーミン、お前はここの者達を守る事ができるのかな?もし、ザ•ラストリゾートなんか使ったら、民衆ごと巻き込まれてしまうな。お前は何も出来やしない。これで、焼き尽くせファイヤーストーム!」

 クレイシャスが放った技は一瞬で辺りを火の海にした。しかし、ここにいる全員はウォータープロテクトのおかげで全くの無傷だ。

「さあ、これで作戦終了だ。今回の事を聞いた者は誰もいない。私の計画は完璧だ」

 そして辺りに漂う煙が晴れていく。

「なに!全員無事だと、それに誰も何も起こっていないような顔をしている」

「カーミンよ、遠慮なくやってくれ、この俺の防御があれば皆んなを衝撃から守る事ができる」

「分かった。キクよ感謝する。残念だお主は話し合いが出来る男だと思ったが、どうやら違うらしい、ならこれで消えろ!ザ•ラストリゾート!」

「やっやめてください、カーミン様、私はまっまだ死ねないのです」

 そんなクレイシャスの命乞いを無視して、甲高い音と共にザ•ラストリゾートは心臓を貫いていた。

クレイシャスは命乞いも虚しく地面に倒れる。

「助かったぞキク、改めて感謝しよう。正直どうなるかと思ったが、この事をいち早く予想していたみたいだな」

「ああ、俺も直前で気づいたから危なかったよ。まあ、ウォータープロテクトの提案なんだけど」

 そうして一時はどうなるかと思った場面をカーミンの巧みな戦略で切り抜けたのだった。



「ふう、助かりました。ありがとうございますカーミン様、そして魔物さん達」

 みんなが俺達に頭を下げる。

「そうだ、新しい王の計画はどうするんだ?カーミン」

「それは、オスムニアの民達の話で、こっちがとやかく言う問題ではない。少なくともこういう状況ではな」

 そうして、皆んなに推されて一人の男が出てきた。

「あれ?あの人ってまさか、サヤじゃないのか!?ラミル」

「え!本当だサヤだ」

 俺とラミルは二人で驚いていた。

「さっきのあんたの演説には心を打たれたよ、俺達の認識を改めてくれた。そういう人が王になればこの国はもっとよくなると思う」

 そう声が上がると拍手が巻き起こる。

「ええ、俺はただのラーメン屋の店主なんだけど……」

「それが良いのだよ、今までみたいな国民の話を聞かない貴族達よりはよっぽど信頼できる」

「でも、俺政治とか分かんないし……」

「大丈夫、カーミン様もついていらっしゃる。なあ、皆んな」

 そして、政権の話は急展開を迎えオスムニアの新たな王はなんと元ラーメン屋店主サヤになった。

「サヤと言ったか?お主のおかげで上手く話を進める事ができた。感謝する。これより我が国ナイロ王国と協約を結ぼう、正式な取り決めはこの後だ」

「ええ!協約!こんな重要な事を……」

「お主は信頼できるからな」

「ありがとうございます」サヤは荷が重そうに言う。

「本当に、サヤが王なんて信じられないよ」

「ラミルやっぱりお前もそう思うよな、どうしよう、ちゃんと俺出来るかな」

「大丈夫だって、なんかあったら僕も手伝うから」

 そうして、俺達は国家間でも強固な絆で結ばれたのだった。

 ちなみにサヤはその後の正式な投票で王に選ばれたとさ。

なんか書いているうちに討論みたいになってしまいました。

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