新たな思惑
「へえー この宮殿遠くから見るとそんなに大きく見えなかったけど近くで見るとすごい大きさだな」
俺は王カリウスがいる宮殿の前に着いた。宮殿を形作る素材はどれも一級品で、それは足元の石畳みからも容易に分かる。
「なんかこういうところ初めてだから緊張する。ラミルがいればなぁ」
「大丈夫です。私がサポートします」
「え!ウォータープロテクト!? 発動してないのに勝手に喋っている!」
「私は元から発動が無くても喋ることができます。これまで喋ってこなかったのはその必要がないと判断したためです」
「なんだよ、それじゃあ、まるで俺が普段意味の無い話をしているって聞こえるけど」
「そんなことはありません」
「なんか信じがたいな」
「キク殿。誰と喋っていたのですか?」
「いやーなんでも無いですただの一人言ですよ」
「もう少しで扉が開きます。そこからはあまり私語をしないようにお願いします」
「はい、分かりました。すいません」
そして宮殿の重たそうな扉が開く
「さあ、行きましょう。王はあの扉の先です」
そうして俺は兵士達が立っている間を抜けて王の前へ行った。
「国王様、このキクという者が巨大な魔物を退治してくれました」
「いやーありがとうキクよ、我は本当に怖かったんだ。今でもあの姿を思い浮かべると寒気がする」
「あれ?なんか国王ってこんな感じなんだ思ってたのと違う」
「ライムよそんなに堅苦しくしなくていいから、早速、接待部屋へ案内してくれ」
「承知しました」
そして俺は王と共に接待部屋へと行くのだった。
「今回も貴殿の活躍素晴らしいものであった。冒険者と聞いたが、ぜひうちの国家の兵隊の指揮官になってほしい」
「ありがとうございます国王。しかし、私にはやらなくてはいけないことがあるのです。魔王討伐をなし遂げるという」
「なんと、では勇者を目指すということなのか。分かった。ではその後だったら隊に入ってもらうことができるか?」
「この人、全然引かないな。国王ってどれもこんな感じなのか? 本来ならばありがたい話なのですが、すいませんお断りさせていただきます」
「どうしてだ?」
「魔王討伐というのは私とスライムのラミルとの約束、ラミルは私の相棒なのです。ですから、そこから離れるわけにはいかないのです」
「なんと、魔物が相棒なのか? 驚きだ。しかし、まあ仕方ない貴殿がそう言うのなら、それに魔王討伐は我らも是非とも協力したい。ここ最近魔王陣営が活発化していて、さっきの巨大な魔物や三魔獣の襲来やら、我らの国は危険な状態に陥っている。これでは、民を安心させることはできない。我らも協力できることは何でもしよう」
国王カリウスが自信を持った顔で言う。
「ありがとうございます。では一つ早速お願いしたいことがあるのですが」
「どういう用件だ?」
「ナイロ王国の国王に魔物の村と不自由なく取引できるように説得してほしいのですよ」
「そんな簡単なことでいいのか?」
「はい、お願いします」
「分かった。至急ライムに手紙を送らせよう」
「ありがとうございます」
「ただ一つ気をつけないければならない事がある。あの国王を怒らせるのではないぞ、どうなるか分からないからな」
「ご忠告感謝します」
そうして、俺は思いがけずにラミルからの初めてのおつかいを大成功で終わらせることができたのだ。
「キク遅いな。何してるんだ?」
ラミルがふと外の方を見る。
「何だあれ?え、まさかオスムニアの国王じゃないか?何でこんなところに」
ラミルは大慌てで国王を迎える準備をした。そうしてラミルと国王カリオスが対面する。
「ようこそ、オスムニアの国王カリオス様」
「貴殿がスライムのラミルであるか」
「はい、そうです。あのー それで今回はどういう用件でしょうか」
「今回はお礼をしたいと思って参った。このキク殿が魔物を退けてくれたのだ」
「ああ、そういう事でしたか。さあ、どうぞ中へお入りください」
そうしてラミルは国王を会議室へ案内する。
「この度、キク殿からお願いがあると言われてな」
「すいません。そのお願いというのは何でしょうか?」
「ナイロ王国の国王に貴殿を推薦して欲しいとのことだ」
「ええ!そんな、キク、なんで勝手なことを……」
「ごめん、ラミル結構いい提案だと思ったんだけど」
ラミルが呆れた様子を見せる。
「まあまあ、良いではないか、我が推薦すると言ったらカーミンのやつも悪いようにはしないだろう」
「ありがとうございます。国王カリウス様」
「良いぞラミル殿。後々貴殿とも魔王の件で協力したいと思っている。さあ、話はこんなところで、我らは帰ります」
「え!早くないですか?」
「我らの国は先の襲撃で少なからず損害を受けた。それにいくら魔物が居なくなったとはいえ、民はまだ怖がっているから、あまり国を空けるわけにはいかないのだ」
「分かりました。お気をつけて」
「ああ、今後もよろしく頼む」
そうして俺達はしっかりと王を最後まで見送った後、まるで気が抜けたように、さっきまでの緊張が解けるのだった。
「もう、キク、なんてことしてくれるんだよ。国王にナイロ王国との取引を仲介をお願いするなんて」
ラミルが少し怒ったような表情になる。
「ごめんラミルでも少し役に立っただろう」
「まあな、ただ少しナイロ王国のカーミンと会うのは心配だ」
「なんでなんだ?」
「実はなナイロ王国は今、他の国と停戦状態なんだ。ただでさえ気が張っているというのに、そこに魔物との取引となると彼の怒りはさらに高まるだろう」
「でもカリウスは悪くはしないって言ってたけど」
「あれはあの人の口癖だよ」
「なんだよそれ、全くあの国王も適当だな」
「実際どうなるか分からない。最悪の場合は戦闘になる可能性も少ないがあるだろう」
「本当かよ、そうなったら大変だ」
俺とラミルは最悪の事態を想定して顔は強張る。
「まあ、でもそれはやってみないと分からない。できるだけの事をやろう」
「分かった」
「まあ、この話は重要だが、とりあえずキクに頼んでいた薬の件だな」
「ああ、この薬ね、無料でもらったよ」
「え!無料で!? こんないい薬を……ありがとうキク、この薬を使えばカルベロスは完治しそうだ」
そうして俺たちはカルベロスが寝ている部屋へと行った。
「カルベロス待たせたな、薬を持ってきたよ」
「ありがとうございます。ラミル様」
そう言ってカルベロスは渡された薬を飲んだ。それと同時に体の傷がすごい早さで治っていく。
「さすが最高級の薬だ治る速度が半端ない」
「良かったなカルベロス」
「ありがとうキク殿、わしもまだまだ村のための頑張らなくては」
カルベロスがベッドから起き上がる。
「毎朝、訓練所からの声を聞くと、なんか若い頃を思い出してなあ」
カルベロスが外を眺める。
「カルベロスも前のバフーマ大戦を忘れられないみたいだな。まあ僕もだけど」
「なんかあったのかそのバフーマ大戦で?」
「僕とカルベロスはバフーマ大戦の時同じ部隊だったんだ。そも時カルベロスは本当に強くて、十傑というエリート集団の一員でな。そこでカルベロスは兵士に戦闘の仕方を教える役割を任せられていたのさ。その時の景色と今の景色が重なったのだろう。まあ、この話はこれくらいにして、カルベロス、治った直後で悪いのだが、ナイロ王国に一緒に付いて来てほしい」
「ナイロ王国というとあの勇者カーミンか。あの十傑の元メンバーと会えるとは、これもなんかの運命だな。分かりました。ラミル様。お供しましょう」
「ありがとうカルベロス。村はミムラが見てくれるから大丈夫だろう」
「はいっ、お任せくださいラミル様」
「うわっいつの間にいたのか」
「頼もしい限りだミムラ頼むぞ」
そうして俺達はナイロ王国へと向かうのだった。
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