第1話:地球の土台を打ち直せ! 決死の「惑星深部アンダーピニング」工事
「……一ノ瀬。貴様のこれまでの工事は、確かに多くの命を救った。だが、エネルギーの抜き方と使い方が強引すぎたのだ。世界という名の『巨大な建物』の基礎が、今や設計限界を超えて歪み始めている」
ギルド総帥の言葉と共に示されたホログラムには、大陸全体が泥船のように沈みゆくシミュレーションが映し出されていた。世界の沈没を止めるには、もはや表面的な補修では間に合わない。地球の核まで潜り、その「土台」そのものを直接修正するしかない。
「……つまり、惑星規模の『沈下修正工事』ってわけか。いいだろう、俺が壊したバランスだ、俺が直してやる。野郎ども、これが一ノ瀬建設史上、最大にして最後の『残業』だ! 地球の芯まで掘り進むぞ!」
通常、地球の深部は高熱と圧力でどんなドリルも溶けてしまう。だが、俺たちにはこれまでの経験がある。
「ベルタ、トンネルの壁面を維持しろ! エレナ、核の熱を魔法で中和して冷却ラインを確保! スポットは鋼材の潤滑と、熱による劣化を食い止める保護膜になれ!」
俺たちは、ドリルワームたちの限界を超えた速度で垂直に掘り進んだ。周囲の岩盤が圧力で押し潰そうとしてくるのを、ベルタが魔力で焼き固めた「超硬セグメント」で無理やりねじ伏せていく。
数時間の強行突破の末、俺たちはついに「世界の核」へと到達した。そこには、無理なエネルギー抽出でヒビ割れ、輝きを失った巨大な魔力の塊があった。
「ここが世界の『基礎』か……。ひどいクラック(ひび割れ)だ。これじゃあ地殻を支えきれなくなるのも当然だ。ガッツ! 注入用のパイプをヒビの奥深くまで差し込め!」
俺が指示したのは、『薬液注入工法』の惑星規模バージョンだ。
「ミーナ、アトランティスから引き出した純粋な魔力と、地熱発電で得た余剰エネルギーを混ぜ合わせろ! それを特殊な凝固剤として、ヒビの隅々まで高圧で流し込むんだ!」
「了解! 世界のヒビ、あたしたちが全部埋めてあげる!」
ミーナの合図で、青白く光るエネルギーが噴流となってコアの亀裂へ吸い込まれていく。それは、バラバラになりかけていた世界を再び一つに繋ぎ止める「最強の接着剤」だった。
「エレナ、大陸の沈降速度を監視しろ。エネルギーが充填された場所から、順次『ジャッキアップ』を開始する!」
コアに注入されたエネルギーが膨張し、沈んでいた大陸を内側から押し上げていく。
「一ノ瀬様、沈没が停止……反転しましたわ! 各大陸、元の標高まで秒速5センチで復旧中です!」
凄まじい振動と共に、世界中の海面が静かに下がっていった。傾いていた大地の軸が、俺たちの「注入工事」によって正しい位置へと矯正されたのだ。
「……ふぅ。これでどうにか、大陸の沈没は免れたな」
俺はドリルの中で、泥と汗にまみれた仲間たちと顔を見合わせた。ギルド総帥も、信じられないものを見たという顔で震えている。
「一ノ瀬……貴様という男は……。これほどの大工事を、たった数日で……」
だが、安堵の時間は長くは続かなかった。コアが安定を取り戻した瞬間、世界の真の「設計者」である『星の意志』が、一ノ瀬建設を「不適切な介入者」として排除するための最終警告を発したのだ。
「所長! 世界は助かったけど……空を見て! 星のシステムが、俺たち一ノ瀬建設を『不具合』として消去するために、巨大な【初期化レーザー】を空に展開し始めたわよ!」
「……なるほどな。世界を直したご褒美が『クビ』ってわけか。いいだろう。なら、最後はその『空』を補強して、神様のレーザーを跳ね返してやる!」
今回の建築・土木用語解説
• 沈下修正工事: 傾いたり沈んだりした建物を、ジャッキなどで持ち上げ、基礎の下に土砂や薬液を詰め込んで元に戻す工事。
• 垂直ボーリング: 地下深くに向けて、垂直に穴を掘ること。
• セグメント: トンネルの内壁を構成する分割された部材。
• 薬液注入工法: 地盤や岩盤の隙間に、セメントや化学薬品を注入して、固めたり防水したりする工法。
• ジャッキアップ: 重いものを機械の力で持ち上げること。
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