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猫系男子と名探偵  作者: ひだまり
お洒落なバーにて
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 零は家族の話を終え、グラスをテーブルに置いた。


「静さんのご家族は?どんな感じですか?」


「そうですね……」


 静はすぐには答えなかった。

 視線を落とし、少しだけ間を置く。


「父とは、もう十年くらい会ってないです」


「十年!?」

 思わず零が驚く。


「ええ。海外に行ったきり、今どこで何をしているのか、分かりません」


 静の声は淡々としていた。


「母は、僕が小学一年生のときに病に倒れて亡くなりました」


「……そうだったんですね」


「はい」


 静はグラスに視線を落とす。

 零は少し迷ったあと、尋ねた。


「ご兄弟は?一人っ子ですか?」


「兄と姉がいます」


 静はそこで一度言葉を止めた。


「二人との関係については……最悪としか言いようがありません」


 その声音から、普段の穏やかさがわずかに消える。


「零さんのご家族とは真逆です、会ってもほとんど話しません」


「……」


 零は何も言わず、静の話を聞いた。


「家族の中で善人(ぜんにん)なのは母だけ…」


 静は小さく息を吐く。


「今でもその思いは変わっていません」


「……」


 零は胸が痛くなった。

 自分にとって家族は、離れていても心の支えになっている。

 けれど静にとっては、家族という言葉そのものが、苦い記憶と結びついているのかもしれない。


「……頼れる人はいないんですか?」


 零が尋ねる。

 静は少し考えた。


「頼れる人……」


 そして、ふと思い出したように口にする。


「執事の羽鳥(はとり)さん……、ですかね」


「執事?」


「ええ」


 静の表情が、ほんの少しだけ和らいだ。


「羽鳥さんは父の代から仕えている方です」


「どんな人なんですか?」


「誰にでも優しくて、聡明(そうめい)で……」


 静は少し微笑む。


「父より尊敬できる、そんな人です」


 零は静の横顔を見る。

 家族の話をしているときとは違う。

 羽鳥という人物の話をする静の声には、確かな信頼が感じられた。


「……とても素敵な方なんですね」


「ええ」


 静は頷いた。

 静かなジャズが、二人の間を流れていった。



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