17
しばらくして、二人は寝室へ向かった。
静は部屋の明かりを少しだけ落とした。完全な暗闇にはせず、ベッドの周囲だけが淡く見える程度にする。
月が先にベッドへ入り、静もその隣で横になる。
しばらくすると、月は静の胸元へ顔を埋めた。
静は何も言わず、月の背中へ腕を回す。
そして、銀色の髪をゆっくりと撫でた。
「……はぁ、はぁ…」
月の呼吸が少しずつ乱れていく。
静はその変化に気づいた。
「大丈夫です」
一定の速度で、月の頭を撫で続ける。
「ゆっくり息をしてください」
月は返事をしない。
ただ静の寝間着を指先でつまみ、胸元に顔を押しつけている。
やがて、その呼吸がさらに震えた。
「……うっ……」
月の目から涙がこぼれる。
静は驚かなかった。
「大丈夫です」
そう言葉を繰り返しながら、頭を撫でる。
「ここにいますから」
静の言葉に月は声を押し殺すように泣いた。
こんな時、ただ、落ち着くまでそばにいる。
静はそれが一番いいと知っていた。
しばらくすると、月の呼吸が少しずつ穏やかになっていく。
頬に涙の跡を残したまま、月は静の胸元で眠りについた。
しんと静まり返った寝室で静は
「……今夜は、夜泣きがひどいかもしれない…」
と、小さく呟く。
その予想は当たった。
それから約二時間後。
「……うっ……」
月が目を覚まし、また泣き始めた。
静は目を覚ますと、何も言わず月の背中へ腕を回す。
そして、月の頭を優しく撫でる。
しばらくすると、月の泣き声が小さくなった。
また眠る。
そして、さらに二時間ほど経つと、再び月が泣き始める。
そのたびに静は目を覚まし、月を落ち着かせた。
水を飲ませることもある。
ただ黙って抱きしめていることもある。
こんな日は決まって睡眠不足になる、それでも、静は一度も嫌な顔をしなかった。
月が静の家を訪れる日は、あらかじめ決められた日ではなかった。
精神的に不安定になった時。
一人でいることがつらくなった時。
眠れなくなった時。
月は静の家に来る。
静は、それを拒まなかった。
夜が明けるまで、静は何度も目を覚ました。
そのたびに月の頭を撫でる。
そして月が再び眠ったことを確認してから、静も目を閉じ眠るのだった。




