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猫系男子と名探偵  作者: ひだまり
夜泣き
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16/39

16

 月はドライヤーをテーブルへ置くと、静の隣に座り、

 ソファの背もたれに身体を預けた。


「斎藤、私はね…。別の惑星から来た宇宙人なの」


「……」


 静は黙って月を見る。

 月は真顔だった。


「目的は、人間とXXXをして、子供をつくること」


「…………」


 長い沈黙が流れた。

 静は月の顔をじっと見つめていたが、やがて小さく息を吐いた。


「あなたは、黙っていれば異性にモテる外見をしているのに、どうしてそんな性格なんですか?」


「そのセリフ、そのまま全部あなたに返すわ」


「……」


 静は何も言えなかった。

 月は少しだけ口元を緩める。


「あなた外見はいいけど、中身は意地っ張りでめんどくさくて、演技臭くてナルシスト。

 クールな男を装ってるけど、時々すごくバカなところが前面に出てくるの、そういうところも可愛い~って思ってくれるバカな女がお似合いだから、マッチングアプリに登録して恋人でも作れば?」


「……」


 長い沈黙の後、静が話し始める。


「…中身にギャップがある分、お互い生きづらい人生ですね」


「あなたと一緒にしないで、私は生きづらいなんて思わないわ」

 と月は即座に言い返した。


「私は自分が大好きだから」


 静が少し目を見開く。

 月は自分の銀色の髪を指先で弄びながら、当然のことのように続けた。


「私の性格のなにがいけないのか、理解できないわ」


「……」


 静は月を見つめる。

 敬語で話し、他人に受け入れられるように振る舞う静とは正反対だった。


 月は、自分自身を疑っていない。

 自分というものをちゃんと持っている、それが清水月だった。


「あなたも、自分を好きになればいいじゃない」


「……難しいですね」


「どうして?」


 静は答えなかった。

 幼い頃から父と兄に教え込まれた言葉遣い、立ち振る舞い、人との距離の取り方。

 それらを身につけた結果、今の自分がある。

 だからこそ、本当の自分は見せられない、そう静は感じていた。

 月はそんな静の横顔を見つめる。


「……あなた、心の中の声は敬語じゃないでしょ?私に対して、ものすごい暴言をはいてるんじゃないの?

 このうるさいクソ女が、いつか痛い目にあわせて刑務所送りにしてやる、なんたって俺は警察官だからな!って、そう思ってるんでしょ?」


「そんなこと、思ってませんよ」


 静はめずらしく、ほんの少しだけ笑った。

 しばらくの静寂。

 月は静をじっと見つめる。


「斎藤……。私は、本当のあなたを知りたい…」


 その声には、先ほどまでの冗談めいた調子がなかった。


「本能のまま、私に接してほしいの」


 静は月の言葉を聞き、少しだけ眉を動かした。


「そういう割には、一線は越えないと断言していましたよね」


「ええ」


 月は迷いなく答える。


「あなたは私の恋人じゃない」


 静が黙って月を見る。


「友達以上、恋人未満。その関係を私は維持したいの」


 月はそう言うと、静との距離を縮めた。

 そして、静の膝の上に腰を下ろす。


「……」


 静は驚いた様子もなく、月を見つめていた。

 月は静の頬へ手を添える。

 指先で、その輪郭を確かめるようにゆっくりと撫でていく。


 二人の視線が重なる。

 近い距離にいる。

 普通なら、胸が高鳴ってもおかしくない。

 けれど__。

 静の心臓は、驚くほど穏やかだった。



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