7 ソロツーリング
最近、雨が多いです。4月は、こんな感じだったかな?もっと晴れていたような。でもここの所、雨が降っていなかった様な気もする。
私は雨が好きです。お肌が潤います。香川県は雨が少ない地域です。地中海性気候と習った事があります。その時はヨーロッパの地中海を思い浮かべて、少しいい気分になりました。今はただの田舎だと知っています。
今は雨、日曜日なのに雨、私は自分の部屋でゴロゴロしています。ケロロはガレージで待機中です。父はガレージで耕運機をバラバラにしています。母は茶菓子を食べながらテレビを見ています。時折笑い声が聞こえてきます。
ああ、それとネコがいます。私の足元で寝ています。
彼は妹が8年前に拾ってきた元野良ネコです。妹は結婚して出て行きました。そうです。彼は捨てられたのです。飼い主は男を作って逃げたのです。
ネコの名前はタママです。勿論クロネコです。
以上が田中家のメンバーです。
それぞれが好きな事をして、雨の日曜日を過ごしています。
「おーい、明美」
父の声が聞こえます。窓を開けて、下を覗くと父がガレージの前で、手を振っています。
「何?」
「冷蔵庫から、コカ・コーラを取って来てくれ。手がオイルで汚れて、自分で取れない」
「いやだよ。面倒くさい。手を洗えばいいじゃない」
「そんな事を言って良いのか。バイクがどうなっても良いのか」
糞オヤジは、下卑た笑い顔をこちらに向け、オイルで真っ黒になった手で私のケロロを指さしている。
「卑怯者!」
「ひひひ」
父は幼稚なところがある。あれで良く銀行を定年まで勤められたものだ。
ケロロを人質に取られた私は、しかたなく台所の冷蔵庫からコーラを取り出し、外に出る。
「あれ、雨が上がっている」
昨夜から降り出した雨は、いつの間にか止んでいた。陽光が雲の間から射し込んでいる。
「はいこれ」
私は、コーラをオヤジに投げて渡す。服を着替えるため、直ぐに部屋に引き返す。ケロロで走るためだ。
「サンキュー」
後ろからオヤジの声がするので、振り向かずん手を振って応える。
バイクに乗るのは、休日だけだ。平日は仕事が終わると体も心もヘトヘトだ。当然バイクで走る元気は残っていない。
バイクについては、先週の日曜日に千葉オートへ行ったきりだ。少し要求不満ぎみだ。
「雨が上がったので、出かけて来る」
軽トラにもたれ掛かりコーラを飲んでいる父に、一声掛ける。
「ああ、気を付けてな」
キュルキュル、ブィーン。よし。
11号線を東に向けて走る。特に行先を決めて、家を出たわけではないので、なんとなく、風を受けて走る。
少し湿った空気が、気持ちいい。アニメに出て来るケロロ軍曹も、湿った空気が大好きだった。私も同じだ。
高松市から東に20kmほど走ると、羽生峠がある。この季節、そこは、よく霧が掛かっている。
ヘルメットのシールドが濡れる。
でも、そこからは、瀬戸内海が見えて来る。キラキラと光る海面、何度見ても綺麗だ。
峠を越えると不思議と、空気が乾いて来る。これも気持ちが良い。
11号線は何度も海岸の近くを通る。そのたびに光る海に出会う。
その光の空気の中を緑のNinja ZXが切り裂いて行く。
凄く気持ちが良い。
気が付くと私は、県境を軽く超え、徳島県吉野川大橋まで来ていた。
四国三郎、大きいな。香川の川とは比べようがない。
などと感じている場合ではない。家から80kmくらいだ。少し不安になってくる。また、お腹も減っていた。
近くの吉野家で、牛丼大盛りを食べた。
直ぐに元気が出て来た。
帰りも、気持ちよくケロロと私は走りつづけ、我が家に到着。
往復で、160km。なんだ、私、このくらいなら走れるじゃん。
「ただいま」
「お帰り、随分と遅かったな」
父は、耕運機の組み立てを終えていた。
「うん。徳島で吉牛食べて来た」
「へー、明美はそんなに行動力あったか?」
「ボーと走ってたら、徳島まで行ってしまった」
「ああ、それなら納得。それと母さんが、ご飯が片付かないと怒っていたぞ」
「げっ、謝ってくる」
私はさっきまでは、凄い冒険から帰ってきた気持ちだったけど、父と話していると普通の日常な気分になった。その後、母に叱られ、完全に日常に戻った。
その後、私は千葉オートへ、ツーリングに参加することを伝えた。
電話先の千葉さんは喜んでいた。
書き終えて、外に出ると、こちらも雨が上がっていた。スーパーカブ90をガレージから出す。私も海まで走ってみます。1分で着いてしまいます。歩いて行けと言われそうですが、私もバイクツーリングを味わいたいと思います。1分ですが。




